“歴史から消された女性古生物学者”映画『アンモナイトの目覚め』 女性から女性への「仕事と私、どっちを取る?」

(C)2020 The British Film Institute, British Broadcasting Corporation&Fossil Films Limited

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メアリーは19世紀にイギリスのライム・レジズ村沿岸で働いた労働者階級の女性。12歳でイクチオサウルスの化石を発見し、独学だが古生物学者として名を知られていた。しかし当時は厳しい階級社会。同時代の人が彼女について書いた本はほぼなく、社会的地位と性別のせいで歴史からかき消されていた時もあった。

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映画では、他者と関係を断ち、田舎で老いた母と2人暮らしをしていたメアリーが、裕福な化石収集家の妻・シャーロット(演:シアーシャ・ローナン)に出会う。最初はシャーロットを疎ましく思うメアリーだが、徐々に心を開いていく様子が静かだがダイナミックに描かれている。

と書くと、人間嫌いの女性が運命の人に出会った話かと思うが、その限りでもない。当時、女性は結婚して、家事をして、子どもを生むべきと考えられていた。それができないと自分を”失敗作”だと思うシャーロットも、メアリーに出会ったことで人生が変わっていく。

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同作を語るにあたって、「顔の映らない放尿シーンも代役はなくケイトが行った」「女性同士の濃密なラブシーン」など、未鑑賞者の興味を引き、記事の見出しにもできそうなシーンは存分にある。しかし、一度観てしまうと、それらはあくまで生活のひとつであり、要素を取り上げるのは違うように思えた。

フランシス・リー監督が「(地位と性別のせいで歴史からかき消された)だからこそ男性との関係を描く気になれなかった。彼女にふさわしい、敬意のある、平等な関係を与えたかった。メアリーが同棲と恋愛関係を持っていたかもしれないと示唆するのは自然な流れのように感じられた」と語っているが、それが手に取る様にわかる映画だからだ。

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同性の恋愛(とくくるのも野暮に思えるが)が描かれる際、いままで「性別を超えた愛」「プラトニックな愛」など神聖視、または背徳として切り取られがちだと感じていたが、同作では人生の一部だった。「レズビアンの映画」とだけいうのも違和感がある。

作中では「仕事と私、どっちを取るの?」といったようなシーンもあったが、必ずしも女性が男性に向けていう言葉でもないし、仮に本当に相手を愛していたとしても必ずしも仕事を捨てる必要もないよな、と心底思った。恋愛とは、仕事とは。一度でも考えたことのある人に観てほしい映画だ。

4月9日(金)からTOHOシネマズシャンテほかにて全国順次ロードショー。