35歳で商社係長、子ども2人にマイホーム――「野原ひろし」にはなれなかった今の30代たち
先日、Twitterでこのようなツイートが発信され、多くの関心を集めた。
「どうしたのコナン君?」
「あの男、冴えないという評判なのに35歳で霞ヶ関の商社で係長、郊外のベッドタウンに二階建て庭付きの自宅を新築してマイカーを持ち、妻と二人の子供がいて休日は必ず家にいる……妙だな」
「名探偵コナン」の主人公、江戸川コナンのパロディで、「クレしん」のしんのすけの父こと野原ひろしを取り巻く環境を説明している。野原ひろしと言えば、漫画でもアニメでも、典型的な冴えない中年男性として、容姿も社会人としての実力も、十人並み程度の人間として描かれていたように思える。
しかし、実際には霞ヶ関にある双葉商事という会社で営業2課係長という役職を持ち、埼玉県の春日部に庭付き戸建てを持っている。通勤は電車だが、しっかりと車も所有。連載当時としてはさほど珍しくない生活水準ではあるものの、今にして思えば羨ましい環境に身を置く人物だと、しみじみ感じてしまう。
「野原ひろし程度の男がすごいと思えるほどに日本が貧しくなったということ」?
前項で紹介したツイートに対して様々な反応が寄せられていた。一部を抜粋してご紹介しよう。
「当時の日本では普通だったんです……働いていればローンで家と車が買えたんです……」
「僕は野原ひろしのようになれるのでしょうか?」
「野原ひろしがすごいのでは無い。野原ひろし程度の男がすごいと思える程度に日本が衰退、貧困化しただけのこと」
と、こんな感じで、ひとえに時代の変化によって様変わりしてしまった日本の現状を嘆く声が目立つ。
僕の実家は元々貧乏だったので参考にならないが、90年代初頭というと、たしかに同級生の家に遊びに行くと、戸建てというケースが多かった。そこそこ大きな家で、マイカーのない家は少なかった記憶がある。
しかし現在はどうだろうか。たしかに野原ひろし並みに稼いでいる人がいるかもしれないけど、その絶対数は減っている。戸建てではなくマンション、アパート住まいの30代は多いし、車を持たない人も増えている。
僕のような食い詰め者の物書きは言うにおよばず、同世代のサラリーマンを見ていても、家も車も持っていないという者ばかりだ。大企業に勤めている同級生などは、20代のうちにローンを組んでマイホームを手にしたが、そういう友達はほんの一握りといったところ。
「クレしん」を観て育ってきた世代が野原ひろしと同世代になった今、この国が老人ばかりで、働く人がなかなか報われにくい国になっているというのは、なかなかキツいものがある……。
漫画の世界は所詮空想なんだけど、その空想が当時の生活水準から割り出されたものである以上、現代の働く世代がギャップを感じてしまうのは仕方のないことだ。今、野原ひろしになれなかった30代が日本にひしめいている。
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