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「介護離職ゼロ」に取り組むアスクル 社長の苦い経験を糧に「企業文化の変革」に着手

アスクルの企業サイトより

アスクルの企業サイトより

岩田社長は会議や朝礼など社員が集まる場で、この言葉を頻繁に繰り返している。背景には自身の苦い経験がある。一昨年、忙しさのあまり介護を受けていた父親の危篤を知らせる電話に出られず、亡くなる瞬間に立ち会えなかったのだ。

以来、社員にこんな思いをさせてはならないと、介護の大切さを強く訴えている。岩田社長は、トップの責任をこう力説する。

「制度はできたけれども、使ったら白い目で見られるのではと(社員は)当然心配する。その中で、一歩超える勇気を与えるのが経営の仕事の1つだと思います」

介護は社員からは言い出しにくいため、制度を作っただけでは足りない。経営者が率先して助けを求めやすい雰囲気作りをしているのだ。社員からも「トップが自ら言ってくれると、下で働く者は行動を起こしやすい」と好評だ。

このほか、仕事と介護を両立させるための準備ガイドとして「介護支援制度のハンドブック」の冊子も作成。複雑な介護制度を分かりやすく伝えるもので、せっかくの制度を知らずに離職するのを防ぐ。年内に配布予定だ。

西久保教授「組織の風土を変えるインパクトが必要」

山梨大学の西久保浩二教授の調査によると、介護に直面したとき「会社に知らせない」と答えた人は50歳代では51.2%、60歳代では63.1%にものぼる。西久保教授は「言ったところで会社に応援されないだろう」と期待が薄いことを理由に挙げ、こう指摘する。

「会社の介護に対する考え方や、組織の風土を変えるインパクトが必要だと思います」

番組ではこのほか、大和ハウスの例を紹介。介護休業は無給だが、期間の定めがなく定年まで使える。介護は育児休暇とは異なり、いつ始まり、いつ終わるかの見当がつかないからだ。

しかしこのような理解のある会社ばかりではない。10数年前に母親の介護で離職したHさん(54歳)は、介護を理由に早退や欠勤を繰り返した在職当時をこう振り返る。

「会社側は、最初は仕方ないと言っていたが、そのうち嫌な顔をされた」

仕事を干されたり別の仕事にまわされたりして、ついに介護離職。収入は激減し「こんなに1円がきついと感じたのは初めて」と語る。Hさんは寂しそうに胸中を明かした。

「会社がもっと理解してくれたらよかった。仕事を分担してくれる人がいたらと今は 感じていますけど、それが正しい答えかは分かりません」

「介護で休みがちな人は辞めて」という風潮

まだまだ「介護で休みがちな人は辞めて欲しい」という風潮が強いのが現実かもしれないが、少子高齢化に向かう中、人材を簡単に切り捨ててなんとかなる時代でもない。

時節柄、制度を整える企業は多くなっていくに違いないが、岩田社長のようにトップが社内風土から変えようとする取り組みが広がっていくことを期待したい。(ライター:okei)

あわせてよみたい:介護福祉士会からクレーム受けた「いつ恋」に励ましの声

 

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