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「父はギャンブル依存から犯罪を起こし、捕まりました」――23歳の青年が依存症者の就労支援施設開業を目指す理由

「写真撮られるの苦手なんです」という金井さん

「写真撮られるの苦手なんです」という金井さん

同社のまとめによると、日本には推定約700万人の依存症者がいるといわれている。厚生労働省のデータでは、2014年に麻薬・覚醒剤事犯で検挙された人数は約1万3000人にもなる。

ギャンブル・アルコール・薬物等の依存症は精神疾患のため、本人の意志の強さだけでは治すことができない。しかし医療機関を受診したのは約3000人に留まっている。要因として依存治療を行う機関の不足が挙げられる。

同サービスは専門の治療・回復プログラムや職業訓練教育、カウンセリング等を受けながら、就労支援を受けられるというものだ。

同社代表取締役の金井駿さん(23)は「犯罪率を0%にするのが目標」という。犯罪の6割は再犯のため、まずは出所者の再犯を防ぐことが急務だと話す。

「依存症者が回復後も再犯することなく安定した生活を送るためには、働く場所が必要です。治療から再犯防止、就労支援をサポートするためにこのプロジェクトを立ち上げました」

「犯罪率0%」は、依存症者で犯罪歴のある父の影響も

なぜ23歳の青年が「犯罪率0%」という目標を掲げているのだろう。その背景には複雑な家庭環境があるようだ。父親がギャンブル依存症で借金を抱え、その結果犯罪行為に手を染め逮捕された過去がある。

「言い方は悪いけど『たかがギャンブル依存が原因で家庭はこうなるのか』って思いました。日本は平和ランキング10位ですが、凶悪犯罪は1日15件起きています。ルポを読むと、加害者の家族環境もめちゃくちゃです。またそういう環境の子が犯罪を起こすという負の連鎖が続いています。やるせないですよね。だから誰かがやんなきゃ、と思っています」

誰も幸せにならない「犯罪」自体をなくしたい。そのためまずは本人の力ではやめられない「依存症」という問題に注力すると決めた。しかし元々は社会貢献の領域に全く興味はなかったという。

決して裕福とは言えない家庭で育った金井さんにとって、夢は「お金持ちになること」だった。起業することを目標に横浜国立大学経営学部に入学し、在学中から経営コンサルティング会社やIT企業でインターンとして働いていた。

そんな中、「朝から夜までずっと仕事。自分は何のために働いているのか?」という疑問が頭をよぎった。

「『お金持ちになるためだろ?』って打ち消そうとするんですが、できないんです。そんなとき、犯罪歴のある人の就労支援を行っている会社の代表が”夢を語る”事業プレゼンを見ました。こんな人もいるのか、と思いました」

当時はそれに留まり、そこから3か月ビジネスモデルを考え続けたが、どれも「命をかけるほどではない」とモチベーションが上がらなかった。しかしある日、自分のバックボーンや日本の現状から「犯罪をなくすことが自分の生きる理由なのでは」と思うようになったという。

大学を卒業した2016年から事業プレゼンを行っていた会社で犯罪歴のある人の就労支援を行い、2017年春に独立。「ヒューマンアルバ」を立ち上げた。金井さんに今後の目標を聞くと「最終的には教育に携わりたいです」と話す。

「国語や数学などの学力以外にも、生き方やビジネス感覚も身につけられる学校を作りたいです。そうすれば『犯罪なんて割に合わない』と考えるようになるはず。犯罪は貧困という外的要因もあるけどしない人もいる。ようはマインドの問題。しっかりとした教育が犯罪抑制に繋がると考えています」

そのための一歩が今回クラウドファンディングを募る、依存症者の治療や就労支援を行う民間施設の開業だ。7月7日現在、161万円が支援されている。

ちなみに社名の「アルバ」とはイタリア語で夜明けの意味を持つ。金井さんは公式サイトでこう宣言している。

「刑余者がしたことは、決して許されることではありません。しかし、本人も今までの人生で苦しんできています。今まで苦しかった人生の『夜明け』に向けて私たちは全力でサポートし、本人の社会復帰を応援します」

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