韓国の若者が「サムスン潰れろ」と思う理由  留学生に聞いた韓国の過酷すぎる就活事情

留学生に聞く、韓国の就活事情とは?

留学生に聞く、韓国の就活事情とは?

「スペック」とはTOEICの点数や学歴、大学の成績のことを指し、就職活動の際も非常に重視される。近年はスペック競争が激化し、留学歴、資格、受賞経歴、インターン経験、ボランティア活動なども含まれるようになっているという。

イさんは「日本は仕事に直結する英語能力や資格がなくても、大学の勉強や生活が充実していたら就職はできるんだな、と驚きました」と話す。

「韓国だと学生時代に自分の売りになるスペックを身に着けなければいけないんですが、4年では時間が足りません。休学をする人も多く、4年で社会に出る人の方が珍しいですね。特に男性は在学中に徴兵されますし」

韓国の学生も日本同様に大企業や公務員を目指している人が多い。公務員については、

「倍率100倍はもちろん、ネットで見てると1000倍というところもあるみたいです。名門ソウル大学出身なのに市役所の一番下の職務に就く人もいます。中小企業は安定していませんし、給料もよくない。苦しい生活になりますからね」

今年4月時点で、韓国の若年失業率は11.2%。前年同月比より0.3ポイント悪化している。日本の若年失業率の4.5%と比べるとかなり高い。このような時代を生きる若い世代を韓国では「三放世代」と呼ぶという。

「貯蓄がなかったり、就活がうまくいかなかったりして恋愛・結婚・出産の3つを諦める若い世代のことを『三放世代』といいます。10年前は韓国にもバブルのような時期がありましたがそれも弾けて、いまでは経済格差が広がるばかりです」

状況は悪化を辿る一方で、就職そのものやマイホームを諦める「五放世代」なるものが台頭した。さらに人間関係、夢も諦める人が増えて「七放世代」となり、いまの若者はすべてを諦める「n放世代」なのだという。

「サムスンが大きくなれば、自分たちの生活も豊かになる」と思っていた

だがそんな若者たちのことを、親世代は「最近の若者はがんばらない」と感じているという。

イさんの親世代は朝鮮戦争からしばらくして生まれ、貧しい暮らしをしていた人が多かった。しかし1980年代から韓国経済は急激に発展を遂げた。外国で出稼ぎをしていた父と工場で働いていた母を親に持つイさんは「韓国の経済成長を支えていたのは親世代」と話す。

「でも親たちは日本のバブル時代みたいに、簡単に就職できたといいます。それが若い世代との違いですよね」

と話す。また韓国企業の特徴についても言及した。

「韓国は財閥が圧倒的に強いんですが、親は『財閥の成長=韓国の成長』だと信じていました。例えばサムスンが大きくなれば、自分たちの生活も豊かになる、というような。韓国から世界的な企業が出ることは誇りですしね。だから親世代が買うものはすべてサムスン製品です」

しかし財閥が大きくなっても、国民の生活は依然として苦しい。そんな親の元で育ったため、「頑張って応援したのに、財閥は世の中に還元しないんだなって。若い世代はそういうことに気付き始めた人も多いと思います」とこぼした。

とは言うもののサムスンの平均給与は1億700万ウォン(約1020万円/2016年)。2010年に比べ2割増加している。やはりサムスングループに入社したいという人は多く、特にサムスン電子の倍率は700倍といわれている。

そんなサムスングループのトップらは今年2月、国政介入事件で逮捕され、8月には実刑判決が下った。これについてイさんは、

「サムスンでも悪いことをしたら捕まるんだ、と思いました。今までは『大企業の成長=国の成長』、つまりサムスンが潰れたら全部ダメになってしまうと思っていた人は多かったと思います」

と話した。サムスンを始めとした韓国の財閥企業は一族が経営を独占する同族企業であることが多い。そうした点も韓国人からすれば納得がいかないようだ。

「私は韓国の企業が人権を尊重し、機会を平等に与えてくれることを願っています。努力に対して正当な評価がもらえる企業になってほしい。だから韓国社会の象徴ともいえるサムスンは潰れてほしいんです」

「ブラック企業があるのは日本も韓国も同じこと」

その上で、イさん自身は韓国で就職することは考えていないと語る。

「先輩からは、企業によりますが『儒教の教えの悪用では?』と思うほど上下関係が厳しく、セクハラやパワハラが横行しているところもあると聞きます。でもそれって日本も同じですよね。けど、韓国の就職率は悪く、今からスペックを積むにも時間と余裕が足りません。なので日本での就職を考えています」

日本では2000年代以降、「韓流ブーム」を経て韓国のポップカルチャーが当たり前のように定着しているが、こうした点もイさんの気持ちを後押ししているようだ。

「今まで『韓国が嫌い』っていう日本人には会ったことがないです。韓国のドラマや料理が好きとか言ってくれる人が多くて、恵まれています。日本と韓国は全く違うと言われますけど、私は仲間なんじゃないかな、と思っています」

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