「月収低いけど、使う暇なさすぎて大丈夫」 低賃金・長時間労働、でも辞めない。若手アニメーターの本音(2)23歳女性の場合

「広告や映像の制作会社も受けたけど、やっぱりアニメが作りたかった」

「広告や映像の制作会社も受けたけど、やっぱりアニメが作りたかった」

一般的にアニメーターのキャリアは、動きのキーとなる”原画”の間の絵を描く「動画マン」から始まる。作画スキルが上がると原画を描く「原画マン」になり、原画や演出などの現場監督である「作画監督」、絵柄を統一しキャラクターデザインを兼任することも多い「総作画監督」、アニメのすべてを統括する「監督」を目指す人もいる。

アニメーター1年目の若松美月さん(仮名/23歳)は、大学卒業後、アニメ制作会社に入社した。現在、「動画マン」として働いている。

若松さんは芸術系大学でアニメの企画・制作から上映までワンストップで行っていた。そのため動画マンは「原画マンのニュアンスを再現する作業」と少し不満げだ。現在、企画から立ち会う監督を目指し、「まずは原画マンになるためがんばります」と話す。

会社の規定では、月300枚をコンスタントに描けるようになると原画マンになる昇進試験が受けられる。しかし若松さんの作画ペースは月220枚程度で、実力不足を感じているようだ。またネックな点として「給料が低い」ことも挙げた。

「多くの動画マンは業務委託で、出来高制。枚数を描かないと稼げないんです。私は完全固定給なので他の人よりマシなのですが、といっても一般企業よりは少ないです。でも正直、忙しくてお金使う時間がないからこれでもやっていけています」

若松さんは10時半頃出社し、退社は平均0時頃。上司の意向で徹夜はあまりないというが、2時まで残ることも少なくはないという。休みは日曜のみで、「週休2日だったら1日家事して、次の日朝から出かけられるんですけど」とこぼす。

この日、取材は日曜19時頃に行ったが、「終わったら会社に戻ります。明日締切りの仕事があるんです」と激務っぷりが垣間見えた。以前、夜行バスで実家に帰省する日の朝、突然クライアントから追加で新規作画20枚の依頼が来た。急いで仕上げ、バスにはギリギリ乗れたが「二度と経験したくないです」と語っていた。

「やりがい搾取は感じるけど、納得行かないものを世に出したくない」

それでも仕事を続けるのは、アニメ制作が好きだから。作業量としては増えてしまうが「面白い動きの作画が好きだし、やりたい」と話す。

「最近のアニメ、動きの少ないバストショットが多いんです。作画崩壊しないけどつまらない……楽だから稼げる仕事ではあるんですけど(笑)。でも今やってる作画は、髪の毛の下にまつげが透けています。時間がかかるけど、細い線が引けるよう硬めの鉛筆に変えたりしています」

アニメの着彩はデジタルでも、作画は紙と鉛筆のところが多いという。「もちろんデジタル作画の方が効率はいいんですけど、初期費用がかさみますしね。アニメ制作は基本的に元請会社がたくさんの下請会社に発注しているので、一気にデジタル化は中々できません」とも語る。ちなみに自動作画ソフトもあるが、精度はまだ高くないためあまり使わない。

若松さんは「納得できないものを世に出すのはイヤ」と話す。それも全て、アニメーション制作が好きという気持ちが強いためだ。最近は寝る時間を惜しんで自主的にアニメ作品の制作も行っている。しかし自分の働き方に”やりがい搾取”や、迷いを感じているようだ。

「『好きだから、長時間労働で薄給なのは我慢しろ』という風潮は感じます。現に『タダで絵を描いて』といういう人もいます。でもこれってアニメーター以外にも言えますよね。モノには払うけど、技術には払わないのって日本のお国柄なのかな」