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「復職支援」「時短制度」で柔軟な働き方を可能に 夜の勤務が多い学習塾事業で京進がとったワークライフバランス支援策

第1回 ホワイト企業アワードで「ダイバーシティ 部門賞」を受賞

第1回 ホワイト企業アワードで「ダイバーシティ 部門賞」を受賞

学習塾の場合、下校後の子どもが対象になることから、夕方から夜間の勤務が多くなる。社員が子育てをしながら働くのは難しいケースも多いだろう。

関西を中心として学習塾事業などを展開する京進(京都府)では、こうした課題を解決するためのワークライフバランス施策を充実させている。2016年には、取り組みが認められて「ホワイト企業アワード」(JWS/日本次世代企業普及機構 主催)の「ダイバーシティ 部門賞」も受賞。

具体的にどのような取り組みを行っているのだろうか。同社の樽井みどりさん(取締役 兼 人事・情報本部長)、寺下友喜さん(人事部 人事管理課 課長)、重松敏彦さん(人事部 人事管理課)に詳しい話を聞いた。

どうしても「夜型」になってしまう学習塾事業 復職制度や休暇・時短制度で両立を支援

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――ワークライフバランス施策に注力しようと考えた理由をお聞かせください。

そもそも、従業員のワークライフバランス支援の制度を導入した理由としましては、「教育はすべて人」という考えの元です。当社は、昔から従業員にとっていいことは率先して実行をしてきましたが、特に近年、男女を問わず優秀な方を確保し、育成しない限り、私たちの長期構想や中期経営計画の達成は難しいという危機感を持っています。また、当社はそもそも教育事業をしていますので、子育てに関わる施策の充実を図ることが大事だということもあります。

当社の経営理念の冒頭に「全従業員の物心両面の豊かさを追求する」を掲げており、従業員を大事にすることは、経営理念の第一義としていることなのです。教育を事業としている以上、心が豊かな人間であること一番大事だと考えていますので、経営の重要課題として、積極的な労働環境作りに努めています(樽井さん・寺下さん・重松さん、以下同)

――ホワイト企業アワードでは「京進メイト復職支援制度」の充実ぶりが評価されましたが、どのような制度なのでしょうか。

2015年2月に制定した制度が、「京進メイト復職支援制度」です。当社社員の女性比率は3割程度を占めています。学習塾事業は就業時間帯が夜型と遅いこともあり、出産、育児に専念したいということでやむを得ず退職を選択する優秀な社員がいることが、課題でもありました。

今までも、制度化はしておりませんでしたが、結婚のため、正社員から働き方を変えて非常勤講師、事務スタッフとして継続して勤務されている方も多数います。戦力となる社員の人材確保は必須でもあり、やむを得ず退職したとしても、育児が一段落ついた時点で、仕事に戻ってもらいやすくするため、制度化しました。

――育児支援制度についてはいかがでしょうか。

弊社では、子供を持つ社員の占める割合が比較的高く、子供との交流の時間を増やすため、子供の誕生日や学校イベントなどの日は有給休暇を推奨しています(育児サポート休暇)。

育児時短勤務については、勤続年数に応じてではありますが、小学校を卒業するまで取得可能としており、継続勤務につながるように努めています。男性社員においても「育児休業=長期で休む」というイメージがあり、ハードルが高いように思われがちなため、少しでも取得しやすいようにあえて短期取得も可能とした内容で育児休業の運用をし、ワークライフバランスを積極的に支援しております。

先ほど 紹介いたしました育児サポート休暇(有給休暇推奨日)に加えて、誰にとっても公平に取得できる有給推奨日としてWLB(ワーク・ライフ・バランス)サポート休暇を設定いたしました。結婚式参列休暇、親孝行休暇、リフレッシュ休暇などがあり、さらに有給休暇取得を推奨しております。

トップダウンとボトムアップを融合させることが重要 会社が”感動の場”であってほしい

――こうした取り組みを行っているなかで、重要視していることをお聞かせください。

当社は、会社と従業員の理想的な関係について、トップダウンとボトムアップが上手く融合している関係になることが大事だと考えております。このことを重要視し、毎年、社長を含む部長以上の経営幹部全員が全事業所を回り、全社員・事務スタッフと一対一の面談をして、現場の生の声を確認することで、会社と従業員が融合するよう努めています。どちらかが強いと軋轢が起きますからね。

それに加えて、会社を感動の場にすることを考えています。感動は人を動かしますよね。当社の組織価値観の一つに、「私たちは常に感動づくりを心がけます」を掲げ、それを実践しています。 例えば、年に一度、優秀な取り組みや結果を収めた従業員・事業所を表彰しているのですが、結構大掛かりなんですよ。合格率NO.1や保護者信頼NO.1などの表彰に加えて、サプライズ表彰をして、感動を形にすることを意識しています。

「組織は統一性がある方が強い」という考えから、ダイバーシティの促進を組織の成長と結びつかないとする意見もあると思いますが、それは、ダイバーシティのとらえ方によると思います。勿論、組織はベクトル合わせが大事です。ビジョンの共有は大事ですが、それを達成するためには多様な人材が活躍できる仕組みを用意することが大事だと考えています。

社員が”大事な人に紹介できる”会社であるために

――これまでの取り組みのなかで、苦労した部分もあったのでしょうか。

教育は人を育てることで社会に役立てる大きな仕事であり、そこに情熱を持てる方であることが弊社の従業員として必要な条件であります。そういった「人を育てる使命感」を持つ方が制度を利用して休暇を取得することに関して、最初は、「生徒のことが気がかりで休みが取り難い」という声もありました。ですが、今では、ほぼすべての社員が制度を利用しています。みんなで協力しあうことを率先していけば、難しくないですよ。

当社の福利厚生制度のひとつに、勤続10年ごとに旅行券(30万円)と10日間の特別休暇を贈呈するという永年勤続者慰労旅行制度があります。その他、男性の育児休業についても「育児休業意向確認書」というものも運用しています。これは、育児休業の希望を直接の上司ではなく、人事部に提出してもらうことで、休暇の取得を促すことも合わせてやっています。

――今後の課題と感じている部分や、目標を教えてください。

「ホワイト企業」とは、従業員が誇りに思ってくれる企業ではないかと思っています。賃金が高くても、誇りに思えない企業に勤めるのは悲しいですよね。自分の大事な人に紹介できる会社であると従業員が思えることも大事なことだと思います。

当社はそのような企業を目指して様々な制度を整備して参りましたが、今後はさらに、介護退職を防ぐことも含めて、積極的に制度設計とフォロー体制作りを強化していきたいと思います。

※本記事は、受賞当時(2016年4月)のインタビューをもとに作成しています
 ホワイト財団のインタビューページ

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