仕事で圧倒的な成果を出すには?営業のプロフェッショナルが語る、「営業マネジメント」の3つの視点

2000年代初頭といえば、IT分野において先進的なビジネスを打ち出すスタートアップ企業が多数誕生した時代でした。特に、東京・渋谷のベンチャー企業が集中する地域は“Bit Valley”と呼ばれ、新たな時代の新たなビジネスを世に送り出そうという活気に満ちていました。

稲垣 「当時はベンチャー企業ブームで、大学二年生の時に入ったベンチャー企業経営ゼミの一つ上の先輩に連れられて、ベンチャー企業での長期インターンを斡旋しているNPOに出関わるようになり、西麻布の飲食店運営企業で社長秘書を、表参道のインターネット広告の代理店で外勤営業を経験しました。この経験から営業という仕事の面白さに目覚めて、社会人になってもこの道を歩み続けたいと考えるようになりました」

学生ながらに、カフェ立ち上げのための什器や材料の調達のためにサプライヤーと交渉したり、それまでほとんどインターネットに広告出稿していなかった業界に風穴を開けて新規取引先を増やしたり。ただ純粋にステークホルダーとの交渉を通じて事業をうまく進めることの面白みが、当時の稲垣のモチベーションになっていました。

新卒で入社したのはSIer。稲垣はそこで10年近く金融機関向けの営業を担当します。

稲垣 「インターンで中途半端にできる気になっていた自分に、社会人の基本を叩き込んでもらいました。メガバンクの統合や、当時はインターネット専業という業態が次々と立ち上がっていた時期で、オンラインで取引する仕組みの提案営業に関わらせて頂きました。正直肉体的にも精神的にかなりしんどかった時期もありましたが、ここで鍛えられた事がすごく活きているなと最近になってよく思います」

それほどまでに営業という仕事を楽しみ、魅せられた理由について次のように補足します。

稲垣 「図らずもインターネットに関わるビジネスに大学時代から関わっていて、テクノロジーが社会を変えていく、亜流から主流になっていくという確信のようなものがずっとありました。営業という仕事に対しては、課せられた目標を達成するためにお客様に売るというよりも、自分が心から価値があると思うものを広めたいと思う伝道師のような、共感してもらえる仲間を増やしていくイメージでやっています。どんな仕事をしていてもどんな商材を扱っていても、この感覚でいられると結果的にうまくいっているような気がしています」

インターネットに関するビジネスの拡大に確信が持てたからこそ、稲垣が前進し続ける力になったのかもしれません。

成果にスケールを求め、 マネジメントというステージへ

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「営業は、顧客の事業を理解して、変化を起こしていく仕事だ」と、稲垣は考えています。

稲垣 「その後、これまでやってきた事を一度体系化して学びたいと思い、働きながらビジネススクールに通いました。そこで得た学びや仲間や様々な考え方がきっかけとなり、より事業変革に寄与できる営業の仕事に就きたいと思い、CRMを提供する外資系企業に転職しました。そこでありがたい事に、お客様や仲間に本当に恵まれて、入社間も無く成果を出すことができました」

その会社に在籍していた際に、福田とつながりました。当時のマルケト日本法人立ち上げからわずか3カ月というタイミングで、最初の営業(アカウントエグゼクティブ・AE)として入社することになったのです。そこからの3年間、稲垣は営業活動の最前線に立ち、自ら成果を積み上げていきました。

稲垣 「日本のマーケティングオートメーションの市場を創るという気持ちで、『一人で3倍やろう』と決めて寝食忘れて取り組み、ここでもまたお客様にも社内外の仲間にも恵まれて、良い結果を残す事ができました。ありがたい事に3年連続でグローバルでの成績優秀者として表彰されました」

その一方で、上司達が日本とアジア太平洋地域の事業を運営しているのを間近で見ていて、心惹かれている自分に気がつきました。

稲垣 「営業として成果を出した事で、まだ決して所帯が大きくない日本法人のダイレクト業績に貢献できたり、日本のマーケティングに本当に微力ながらですが貢献できたかもしれない。でも、ここからどんなに頑張ってもこれを5倍10倍にはしようがない。営業という仕事は本当に面白いけど、これ以上はスケールしないし、これからどうしていこうか。一つの方向性がマネジメントなのかなと思ったんですよね。本当に浅はかな考えでした。笑」

自ら動くフェーズを越え、より大きなインパクトを生み出す仕事に携わりたい――。機会を得た稲垣は、実際に営業チームのマネジメントを務めることになりました。ですが、見るとやるとは大違い。「正直、全然うまくいかなくて」と苦笑いを浮かべます。

顧客、自社、メンバーの3方位を想う。 難しくも奥深いマネジメントの使命

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営業を率いるマネジメントには、3つの方向を見つめる視点が求められていると稲垣が考えています。

稲垣「お客様の事業成長に貢献すること。同時に自社の業績を伸ばすこと。この2つに加えて、メンバーが働きがいを持てること。この3つをなんとか共存させたいと思って日々試行錯誤しています」

初年度は「1点目と2点目は及第点」と振り返る稲垣。しかしその内実は自身が描いていた理想とは程遠いものだったそうです。

稲垣「なんとか数字をデリバリーする事ができても、メンバーに負担が掛かってしまったり、意見が食い違って衝突した事もありました。お客様に対して担当営業時代と同じように徹底的に向き合えていたかというと、そうではなかった瞬間もあったように思います。今までとは変数の多さが違うんだなと改めて思いました。それこそが面白さなのかもしれませんが、今のところ楽しめる余裕はあまり無いです。笑」

また「皆プロ意識が高い」と稲垣は感じています。

稲垣「当事者意識を持って自分の期待役割を全うする所、自分の役割に関係が無い所にも目を配って積極的に関わっていく所は、手前味噌ですがいいカルチャーだなと思います。

チームのメンバーと関わる中でもこの点は大切にしています。皆前職で高い成果を出した営業のプロフェッショナルですので、より成果を出すために全力でフィードバックはしますが、自分自身の考える最適解を安易に伝えたり、最初から押し付ける事のように気をつけています。一つ一つの関わり方が本当に正しいのか常に自らの問いながら試行錯誤していますが、大きなやりがいも感じています」

メンバーたちがいてくれてこそ、マネジメントの役割は成立します。

「一生懸命助けているようで、結局助けてもらう事ばかりで。本当に感謝しています」と語る稲垣は、マネジメントとして既に一つの山を乗り越えたのかもしれません。

今の状況を楽しみ、糧にするバイタリティこそ成長し続けていく秘訣

▲仕事と家庭を両立する事がもっと“当たり前”なればと稲垣は考える

▲仕事と家庭を両立する事がもっと“当たり前”なればと稲垣は考える

2019年度からは社内における役割が代わり、稲垣は従来よりもセールス以外のインサイドセールスやマーケティングとのやり取りが増えました。

稲垣 「現在は新しい担当領域を担当しており、これまで以上にインサイドセールやマーケティングと密にやり取りするようになりました。関わる部門が増えた分、更に変数が増えて、試行錯誤は続きますが、面白さも増したかなと思っています。関わる分野が広り、変数が増えていく、安易に言ってはいけないかもしれないですが、毎日沢山の事を「学んでいる」感覚です」

また、現在のアドビ、そしてマルケト事業自体が変革期にあると捉えています。大きな変化の波が寄せるなかで活躍するには、変化に対して柔軟な姿勢と、適応していくタフさが欠かせません。

稲垣 「アドビとの統合した今、いかに当事者意識を持てるか、そしてこの変化を楽しめるか。実りある経験を積めるのは間違いないので、ここから得たものを自分の糧にできる人にとっては、大きなチャンスがある会社なのではないかと思います。今まさに重要な局面でですので、引き続きお客様・自社・メンバーそれぞれの成功に徹底的に向き合っていくつもりです」

そう語る稲垣自身も、子どもに恵まれたことで働き方や仕事観を大きく変化させることになりました。以前は「AIが返信しているんですが?(笑)」と言われるほど、24時間365日臨戦態勢で仕事のメールを捌いていたこともあったという稲垣。

しかし今では、そんな働き方も徐々に変わりつつあります。

稲垣 「子どもが生まれた後は育児休暇を約3週間取得し、その後もしばらくは週1回の在宅勤務などかなりフレキシブルな働き方になりました。それはともに働く周りの人たちのサポートのおかげです。仕事と家庭を両立する事がもっと“当たり前”なったらいいなと考えています。そのためにも、成果を出す事にこだわっていきたいと思っています」

お客様を、会社を、そしてメンバーを見つめ続けること。そして、これからもテクノロジーに関わる仕事に関わり続けていきたい、と稲垣は展望を語ります。

稲垣 「自分が価値あると信じるものを伝え広めていく。それが私の考える営業という仕事です。これしかできないですし、天職だと思っています」

営業は天職――。

稲垣がそう語る裏側には、確固たる自信が垣間見えます。そうした強い気持ちを持ちながら稲垣はこれからもお客様に価値を提供し続けていきます。