新型コロナ対策のテレワークでわかった「雑談」の力 効率化だけでは組織の生産性は上がらない | キャリコネニュース - Page 2
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新型コロナ対策のテレワークでわかった「雑談」の力 効率化だけでは組織の生産性は上がらない

そんな称賛の声だらけのテレワークですが、ここではあえて、落とし穴がないかどうかを考えてみたいと思います。

まず、オンライン化することで効率化は進むのですが、その裏には「無駄と思われている」ものが捨てられています。しかし、どんなものでもそうですが、何が無駄で何が無駄でないのかを判断するのは容易ではありません。一見役に立たないと思われているものが、実は価値があることはよくあります。

私の周辺でテレワークについて最もよく聞く問題点は、意外にも「過集中」でした。以前テレワークが侃々諤々議論されていた際は、誰も見ていなければ人はさぼるに決まっているということが常に問題視されていました。

しかし、働いている姿が見えないテレワークでは、人は結果でしか評価されなくなるので、むしろ頑張る人が増えたようなのです。

結果が出なければ、何もやってないことと同じ。静かに集中できる環境で結果主義のプレッシャーの下に置かれれば「過集中」となり、ある意味働きすぎてグッタリしてしまうのもさもありなんです。移動時間などは楽になった反面、疲労困憊している人も少なくないのです。

人知れず壊れている人はいないか

それでは、何が今まで過集中から人を守っていたのでしょうか。それは、今までのオフィスワークでは無駄とされていた「雑談」です。

一人ぼっちで仕事をしていると、誰もくだらない雑談をしかけてきません。黙々と仕事をすることになります。寂し過ぎる上に、過集中をして疲労する――。弊社ももう1ヶ月以上テレワーク中ですが、一部から「疲れたのでそろそろ出社したい」「考えすぎて悶々としてしまう」と悲鳴があがっていました。

その後に起こったのは、これまでオフィスで交わされていた「雑談」が会社のビジネス用チャット上にあふれたことでした。オフィスワーク時には、ビジネス用チャットの内容は基本的にはいわゆる「報連相」的な業務連絡や議論などばかりで、それ以外の余計なものはあまりありませんでした。

ところが、テレワークを開始して、必要最小限のコミュニケーションだけしかしなくなったところに、行き場のなくなった「雑談」がチャットにあふれたのです。話題はコロナのことや芸能人の話、つまらないダジャレ、お互いの近況、仕事外の質問などです。

リーダー自ら「雑談」を誘発してみては

雑談が本当に無駄なものであれば、テレワークによって消滅すればそのままになるはずです。ところがそれがオンラインでも復活しているということは、雑談にも何らかの機能があるということになります。

実際、雑談の多いチームほど業績が高いという研究もあります。例えば、雑談をするチームは、仕事の話の量も多くなり、意思決定の結果に対する納得度も高いというものです。雑談によってチームメンバーが親しくなって団結力が高まり生産性を高めるとも、いろいろな人との会話が新たな発想を生んで創造性を高めるとも言われています。

そう考えると、テレワークは諸々の無駄を省くことで短期的に生産性を上げていけたとしても、人を仲良くさせ、納得する意思決定を生み出し、異質な意見や情報を交換できるような効果のある雑談をもなくすことで、中長期的に見れば生産性や業績を下げることにつながる可能性もあります。

テレワークのこの落とし穴を埋めるために、リーダー自ら雑談をしたり、チャットなどで何かテーマを投げかけて雑談を誘発したり、リモートランチやディナーを催したり、離れて仕事をしていても、一見すると取るに足らないような会話=雑談を発生させるような何らかの仕掛けをする必要性があるのではないでしょうか。

sowa_book【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『コミュ障のための面接戦略 』 (星海社新書)、『組織論と行動科学から見た人と組織のマネジメントバイアス』(共著、ソシム)など。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/

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