職場の「大人の発達障害」にどう向き合うか 同僚との「組み合わせ」に解決の糸口

この定義は我々非専門家からみると曖昧にみえ、なかなか正体をつかみにくいように思えます。「困った特性を持つ人」など世の中にいくらでもいるし、自分自身の中にもあると思えるからです。

多くの事例を見ている専門家にはどれくらいから障害か判定できるのでしょうが、抽象的な定義を読んでもイメージしにくいのが多くの人の感覚ではないでしょうか。

以前は「自閉症」「アスペルガー」と言っていたものが近年では「自閉スペクトラム症」と呼ばれるようになるなど、スペクトラム(連続体)つまり「程度の問題」であることがわかります。

通常の採用面接でも、ある特性(例えば几帳面さ)を評価する際に、「程度」を評価するのは最も難しいことです。明確な線引きができないから、他者と比較して相対的に判断するしかありません。

明らかに生活に困難をきたすような程度であれば、幼少期に発達障害と診断され適切な治療を受けることができます。しかし、軽症な人や周囲のサポートが十分で問題が生じなかった人は、障害の診断がくだされることなく大人になっていきます。

「腫れ物にさわる」扱いではいけない

ところが社会人になって仕事の負荷が増えることで、これまでのようにいかなくなると、「大人の発達障害」として認識されるというわけです。

現在では医学の発展のおかげで様々な治療方法や対処方法が確立されているわけですから、「大人の発達障害」も適切に診断を受けて治療を開始することは重要です。素人だけで対処することは避けなければなりません。

その一方で、発達障害とは「程度の問題」であり「害かどうかは環境の影響も受ける」ものであるとすれば、特定の人を「発達障害」と診断し、周囲に認知してもらうことが必ずしもよいこととは言えないのかもしれません。

近年は社会的認知が広まってきた精神障害(うつや統合失調症など)も、最初は身体障害よりはわかりにくいために偏見にさらされました。発達障害はさらに難しい定義のために、多くの人々には理解されない謎のものであり、周囲にいわれのない不安を持たれてしまうおそれがあることは注意すべきでしょう。

先日、長年「大人の発達障害」の就労支援をしている方と対談をした際にも、どこまで「発達障害を持つ人」として社内で認識してもらうかは大きな問題だとおっしゃっていました。現状の社会的な認識レベルでは単なるレッテル貼りになり、「腫れ物にさわる」扱いになるおそれがあるからです。それは治療の意味でもよいことではありません。

「カバーする特性」と組み合わせれば力を発揮できるかも

そもそも大人の発達障害を持つ人は、それまで診断名がつくことなく、通常の生活をしてきた人です。障害レベルの困り方に至らなかったのはどんな環境にいたからか、考えてみるのもヒントになるかもしれません。

発達障害の有無に限らず、人は誰と組んで働くかによって、うまくいったり、いかなかったりします。発達障害がある種の性格や能力の強めの特性であるなら、それをカバーする特性を持つ人と組み合わせれば、ふつうに力を発揮でき、困ることはないかもしれません。

ヒューマンロジック社が展開しているFFS(Five Factors & Stress)理論のような組み合わせを科学できる方法もあります。これは人間の「思考行動の特性」を分析する理論で、「凝縮性」「受容性」「弁別性」「拡散性」「保全性」という5つの因子に対するストレス状態を数値化することで、その人の思考行動を把握しようとするものです。

この5つの因子は誰もが持っており、その強さによって「その人らしさ」が形成されます。そして、その人が感じるストレスによってその人らしさが「よく出る」場合と「悪く出る」場合があり、自分や同僚の特性を理解することで円滑なコミュニケーションを促すことが可能になります。

職場においては、その人に生じている問題を「個」の問題とだけ捉えすぎず、「組み合わせ」の問題として解決策を練ってみてはどうでしょうか。特に、発達障害という領域においては、この考え方はより重要性を増すのではないかと思います。

sowa_book【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『コミュ障のための面接戦略 』 (星海社新書)、『組織論と行動科学から見た人と組織のマネジメントバイアス』(共著、ソシム)など。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/