オンラインコミュニケーションの課題をリアルで解決し効率的な採用活動を試みる東急不動産 | キャリコネニュース
おかげさまで9周年 メルマガ読者数
65万人以上!

オンラインコミュニケーションの課題をリアルで解決し効率的な採用活動を試みる東急不動産

国内有数の総合不動産デベロッパーとして、東京・渋谷を中心とした都市開発やリゾート事業、再生可能エネルギーに至るまで幅広い領域で事業を展開している東急不動産株式会社。人が暮らし、働く場所の提供に携わってきた同社は、コロナ禍によって競合他社との差別化につながる“大きな変化”を得た。

コロナ禍を起点としたにさまざまな変化を受容しながら、人材採用はどのように変わっていくのか。さらに、同社が事業を推進するために必要な人材像を採用担当の熊谷悠樹さんに伺った。(聞き手:千葉郁美)


東急不動産株式会社人事部 人材開発グループ 課長補佐の熊谷 悠樹さん

インターンシップをオンライン実施  臨場する価値が伝わらないがメリットもあった

――新型コロナウイルスの災禍は我々の行動様式に多くの変化をもたらしました。不動産デベロッパーとして生活環境を支えてきた御社にはどのような影響がありましたか。

オフィスに出社して働くことから、自宅やホテルなどからリモートワークできるという「選択の時代」になってきていることは、当社がこれまでに取り組んできた住宅やオフィスビルの開発を通じて提供してきたことと一致し、それがぐっと当事者化されたと感じています。

また我々自身も働き方や場所の選択を迫られ悪戦苦闘している中で、その経験や知見がより良いビルのソリューション提案に生きていきますし、在宅で働ける環境が必要だとなればそれに相応しいものをあらたに創出していこうというきっかけにもなる。コロナ禍を生き抜こうとする「当事者意識」から、不動産デベロッパーとしてよりいいものを出せるのではないかと考えています。

――採用活動の大きな変化を教えてください。

当社は新卒採用において、かねてからインターンシップに注力していますが、それをオンラインで行わなければならなかったことです。

当社が手がけている渋谷の再開発をテーマに、この地にどのようなコンセプトで、どのようなものを建てていけばいいのかといったことを、現場を見てもらってからグループワークで議論するというものがあります。また、実際に現場配属され業務を実際に体験するスタイルのものもあります。実際に現場を見たり体験することに大きな価値があったわけですが、2020年度は全てオンラインによる実施になってしまいました。

ーーオンラインゆえのデメリットが出てしまったわけですね。

インターンシップの件はそうですが、コロナ禍を起点とした変化の中で、悪い部分だけではなくいい部分もあるかなと感じています。

悪い面としては、オンライン面接の時と直接会った時とで印象が全く違う場合があるということです。オンラインの面接でははっきりとした物言いで力強い印象があった人が、直接会ってみたらそうでなかったり。アセスメントの観点で非常にわかりにくい部分があるな、と感じていますね。やはり本当の意味での意思疎通、コミュニケーションが取れていないという問題は通常業務をオンライン下で行なっている中でも起こりますが、採用の領域でも出てしまうなと実感しています。

一方、いい部分は、やはりオンラインのツールを使うことによって効率がアップしたことです。採用活動のコストという観点でも、各種会議室を確保することや会場のセッティングという一連の業務が不要という点で効率が上がりました。また、採用活動において動画の活用を強化できたことも良かった点の一つです。これまでは各大学に赴いて同じ内容の説明を何度も行っていましたが、動画をつくり配信することで事足りるようになりました。オンラインゆえ、九州や北海道といった地方の学生とも早期に接触がより強まったことも非常に大きな利点です。

「東急不動産のファン」を作りミスマッチを起こさない工夫で人材を獲得

同社が手がける渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業の完成予想図

同社が手がける渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業の完成予想図

――都市開発や不動産、ウェルネスやインフラなど幅広く事業を展開されており、必要とされる人材の資質や技術も多岐にわたりますが、どのような戦略を持って実施しておられるのでしょうか。

当社では新卒採用と中途採用を実施しておりますが、新卒採用ではすべて総合職として入社してもらいます。当社は都市計画や住宅のみならず、再生可能エネルギーや物流など幅広いフィールドがありますので、一つの分野に長けているというよりは様々な分野で活躍できる素養を重視しています。

中途採用でもキャリアを踏まえた幅広く活躍できる総合職人材も採用しておりますが逆に非常に専門性の高い領域、主に弁護士や建築士など不動産に関連する士業や土地建物の資産管理に関するプロフェッショナルな方を「専任職」としてセグメントごとに採用しています。

――昨今ではコロナ禍による働き方の変化に加え、企業の人材獲得競争に激化の様相を示しています。御社にとりましても同業他社との競争は激しいものかと思いますが、人材獲得のためにはどのような工夫をされていますか。

まず重要なのは「東急不動産のファンを作る」ということ。

「街を作りたい、建物を作りたい」という思いを持つ人が当社を含め不動産デベロッパーを志望してくれることが多いのですが、同業他社と比べても「東急不動産で働きたい」と思ってもらえるようにすることです。

確かにオンライン面接は効率化の面においてはメリットがありましたが、コミュニケーションを取るという部分では本当にまだまだだと感じます。これは大きな問題点であり解消していかなければいけません。そこで、「ハイブリット」という形で今後はオンラインと対面での方法を合わせて実施していこうと考えています。

これまでの候補者一人ひとりと同じ場所で直接顔をあわせて感じる温度感や空気感、そのひとの立ち居振る舞いを理解する重要性を実感しています。就活の早期化が叫ばれる中で、学生との早期の接点作りにはオンラインが有効ですが、しっかりと人を見ていくフェーズにおいては対面で行なっていこうと思います。

――対面とオンラインでの面接では印象に乖離があるとお話しいただきましたが、そうしたミスマッチはどのように解消していかれるのでしょうか。

根本的な問題は、実際に働くときに必要とされるスキルと、面接をうまく突破するスキルとが違いすぎることだと思っています。オンラインの面接では、パソコン画面の横に話すことや注意することのメモを貼り付けて面接を受けている人も多いでしょうし、そのくらいの対策は誰でもすると思うんです。そもそも面接時の質問でよくある自分の強み弱み、学生時代に力を入れたこと、といった自分自身について語ることの上手下手は、実際の仕事とはかけ離れていることのように思います。

そういった観点からも面接やインターンシップなどよりよい選考方法を検討していきたいと考えています。

社会課題解決とチャレンジシップ 全社員が事業プロデュース力を身につける

オープンでカジュアルなオフィス環境

オープンでカジュアルなオフィス環境

――2030年に向けたグループの長期経営方針の中で、新たな価値創造の推進に向けて、多彩な人材の採用を実施していく姿勢を示されました。ポストコロナに向けて具体的にどのような人材を必要としておられるのでしょうか。

まず、我々社員全員で目指す社員像を「事業プロデュース集団」と表現しています。

その定義というのは「高い視座と広い視野を持って自ら挑戦する人」です。この“ありたい姿”を目指すべく、制度や組織風土の改革に積極的に取り組んでいるところです。

採用活動においても、社員のありたい姿をブレークダウンして反映しています。例えば、現状に満足せずに挑戦し続ける「チャレンジシップ」の精神や、部門の領域を超えた可能性を突き詰めること。また、社会課題に対する意識も重要ですね。ひとつビルを建設するという計画のなかでも、解決できる課題はないだろうかと考える。常に意識しながら業務に取り組むという人間にこそ事業プロデュースができる、それが一番に求められているというところです。

前述しました通り、当社は住宅の販売から再生可能エネルギーまで幅広い領域で事業を展開しています。あらゆる事業領域、フェーズに関わらずに挑戦し続けることができる方に期待しています。

熊谷 悠樹(くまがい・ゆうき)

東急不動産株式会社 人事部 人材開発グループ兼 東急不動産ホールディングス株式会社 グループ人事部 人材開発グループ 課長補佐。 2013年入社、商業施設事業本部 関西事業部に配属、あべのキューズモールやあまがさきキューズモールの施設リニューアルを手がける。その後首都圏の商業施設運営部を経て2017年からは東急不動産SCマネジメント(株)に出向、販売促進等の施設活性化業務を担当。2020年から現職。

 

アーカイブ