ここは、トヨタのモノづくりの分岐点──「人の笑顔」を最終目標に新規領域に挑む | キャリコネニュース
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ここは、トヨタのモノづくりの分岐点──「人の笑顔」を最終目標に新規領域に挑む

“電気自動車搭載用バッテリーの生産準備”業界の今後を担う新規領域で、中根 康雄は生産準備チームのサブリーダーを務めています。入社以来クルマづくりに携わってきた中根。そんな彼がたどりついたのは「人を中心としたモノづくり」の大切さ。「最終目標は人の笑顔を作ること」と語る中根のキャリアを貫く、熱い想いとは。【talentbookで読む】

モノづくりの背景には “人”がいる──人の笑顔を作ることを目標に

私は現在、トヨタ自動車の生産本部にある電池の生産準備をする部署に所属しています。

電気自動車に登載するバッテリーを作るための生産準備を行うことが、主な業務です。バッテリーを作るために、これから国内外にいくつか生産ラインを設置していく予定で、2023年1月現在は、そのラインの企画、工程検討、製造準備のとりまとめをしています。

0から1を作るというよりは、1を2、3、4……と、どんどん業務を拡げていく類のプロジェクト。すでに生産をしているラインがあるので、それを参考にどこを改善するのかを考え、新しいラインの計画を練っています。モデルラインの課題や伸びしろを見つけるために、現場に行くこともしばしば。品質・コスト・スピードの3つの観点で、さらに生産性をアップするべく日々現場に足を運びながら業務に取り組んでいます。

プロジェクトを全体的にとりまとめるのが私の仕事ですが、生産設備を据え付ける予定の工場との調整も、私の担当領域。最前線で指揮をとりながら、電気自動車用バッテリーという新しい領域に踏み込んでいく毎日です。

トヨタは、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、さまざまな取り組みをしています。その一つの方策として、近い将来、電気自動車の生産が急激に増えていく予定です。 だからこそ、電気自動車を製造するためのバッテリーがたくさん必要になります。それもあって、現在の仕事は、規模感もスピード感も、今までの仕事とは桁違い。当然、緊張感もあります。

そんな日々の中で私が意識しているのは、クルマを作る工程でも、使っていただく工程でも、すべてに“人”がいる、ということ。それが工場の人なのか、お客様なのか、相手の立場はさまざまですが、とにかくたくさんの人が関わっているのがモノづくりです。だから、常に目の前の人の気持ちを考え、行動やアウトプットをしなくてはならないと感じています。すごくベタな言い方をするなら、私の仕事の最終目標は、人の笑顔を作ること。いろいろな立場の人に配慮しながら、仕事を進めています。

カナダへ出向。八方塞がりの状況を打破したカギは、人と人との信頼関係

私がトヨタに入社した理由をひと言でいうと「リーディングカンパニーだったから。そしてそれが偶然近くにあったから」です。私は生まれも育ちも愛知県。また、小さいころからクルマが大好きだったので、そのころからトヨタは憧れの会社でもありました。大学では材料工学を専攻。縁あって、内定をいただきました。

入社後、まず配属されたのは、明知工場という愛知県内の工場でした。トヨタといえば、モノづくり。トヨタ生産方式(TPS)を実際に現場で見なくてはという想いで、自分から工場勤務を希望したかたちです。当時の私の担当業務は、鋳造工程にて技術員として、製造ラインの不具合や無駄を見つけ改善することでした。

とはいえ、現場の人たちはみんな、年上で知識と経験が豊富なベテラン。そういった人たちに自分のやりたいことを伝えて納得してもらうのにはじめは苦労しました。徐々に懐に入って、認めてもらって、ようやく一緒に工程改善に取り組めるようになったんです。こうした経験は工場勤務の醍醐味でした。新人時代にモノづくりとコミュニケーションの基本に触れられたのは、我ながら良い選択だったと思います。

そして2014年、カナダへ出向。当時収益が悪化していたアルミホイールの鋳造工場の経営改善に取り組みました。当時、日本人出向者は上司と私の2人だけでした。

現地では製造部門のアドバイザーという立場で、ローカルのエンジニアと一緒に現場の不具合解決や、新部品の設計のサポートが主な業務でした。またそれと同時に、部署を超えてコスト目標を達成するための改善活動を日々実施していました。当時一番苦労したのは、価値観の壁。人種もバックグラウンドも文化も異なる人たちとのコミュニケーションは、思った以上に大変でした。

苦戦する私に上司が教えてくれたのは、まずは信頼関係が大事だということ。だからとにかく丁寧に、誠実に、謙虚に、社内外の人と関わるようにしました。出向したてのころは、頼むだけでは誰も何もやってくれません。まずは丁寧に説明、そして一緒にやって、結果を出す。次第に信頼関係ができて協力してくれるようになりました。

結局、3年10カ月ほどカナダにいたのですが、改善の手応えが感じられたのは2年目の終わりごろ。それまでは状況が八方塞がりで「もう無理かも」と思うことも正直ありました。それでも、工場が潰れてしまったら困る人が大勢出る。皆さんの笑顔を守りたい一心で取り組んで、ようやく初めて単月で黒字になったときには、嬉しくてチームメンバーと一緒に喜びを分かち合ったことをよく覚えています。

帰国してからは、再び明知工場に戻り、今度は日々の業務に加えて生産ラインの競争力向上に向けた企画業務を担当していました。思えば幸いなことに、入社以来、クルマづくりの工程を、だんだん上流へとさかのぼるかたちで経験することができています。

単なるバッテリー生産プロジェクトではない。人の成長プロジェクトでもある

現在の部署に異動したのは、2022年8月のこと。私にとって、大きなキャリアチェンジになりました。

発端は、これまで将来に向けてやってきた工場内のレイアウト変更業務です。現在の明知工場はエンジンや足回り部品を製造していますが、これらの分野は電動化に伴い今後縮小していく分野でもあります。そこで既存工程を集約し、将来に向けて新分野に挑戦する準備を進めていました。そこに電気自動車用の電池生産プロジェクトの話が舞い込んできたんです。紆余曲折あって明知工場に電池の新ラインを設置することが決定し、気づいたらそのラインを設置する部署に異動することになりました。人生、何が起こるかわかりませんね。

電池についてはこれまで経験がなく知識もないので、新鮮な気持ちと不安な気持ちを抱きながら、工場のメンバーとも一緒になって新分野に取り組んでいるところです。未知の分野ですが、鋳造と似ている工程・技術もありますし、工場の皆さんもバックアップしてくれます。今までのスキルを活かし、やっていきたいと思います。

ただ今回、新たな会社様と関わることになるので、その部分では大きなハードルを感じています。カナダ拠点とのコミュニケーションにも苦労しましたが、とはいえカナダ拠点はあくまでトヨタの一部。しかし今回は、多くの人と関わる中で、トヨタ式のやり方が通用しない部分もあるでしょう。価値観を一方的に押しつけず、お互い理解しながら一つの目標に向かっていきたいです。

このプロジェクトを成功させるためには、ベストパフォーマンスを発揮し続けることが大事だと思っています。そのために“人”を中心としたコミュニケーションを大切にしながら、チームの力を引き出したいです。そういえば、ちょうど数週間前、メンバーと「これってバッテリー生産プロジェクトだけじゃなくて、人も含めた成長プロジェクトだよね」と話していました。ベテランから新人までメンバーが一丸となって、これまでにないくらいの規模感とスピード感で、新分野にチャレンジする。今までトヨタが行ってきた仕事のやり方とはまったく違うやり方で、プロジェクトが動いている気がしているのです。

もしかしたら、これはトヨタのモノづくりを変えるチャンスなのかもしれません。今、ものすごい分岐点に立っているのだなと感じています。

トヨタのモノづくりの強さの背景には、「人を育てる文化」がある

どんな仕事でも結局“人”が大切──というのは、私の軸になっている価値観ですが、トヨタも、人を本当に大切する会社です。

とくに、人を育てる文化が確立されているのを、日々感じますね。たとえばカナダ出向のときに、私の隣で一緒に走ってくれた上司は、10年以上先輩のベテランです。

3年もあれば嫌なこともあったと思うのですが、上司は怒り散らすわけでもなく、いつも私の面倒を見てくれました。いろいろ聞いてみると、他のメンバーも同じような経験をしていました。先輩や上司がトヨタの大事にすべきことを実践し、気づくと自分にもその精神が受け継がれていることに気づきました。こういう「教え、教えられる文化」は、トヨタの大きな魅力だと思います。仮に「何かをやりたい」という意思が決まっていなくても、育てる文化の中で自然と成長できる。だから、良い仕事ができるのです。

入社前の私は、トヨタに対して、とにかく「モノづくりに強い」というイメージを持っていました。もちろんそうなのですが、「なぜ強いの?」という部分を紐解くと、そこには独自の人を育てる文化があって、その文化で育った人たちがモノを作るから、強いんだなということに気づかされます。

私はこれから今まで自分を育ててくれた工場にラインを作り、多くの人と一緒にまたモノづくりをしていくわけですが、トヨタの文化の一端を担い、皆さんがイキイキと活躍できる舞台を作っていきたいですね。

正直、とても大変な業務ではあるのですが、社員、その家族、関係各社様など、本当に大勢の人が関わっている仕事です。その笑顔を守り、増やすことをモチベーションにして、しっかり全うしていく所存です。

トヨタの電動化に貢献する重要なプロジェクト。責任重大ですが、今の感情の大半は、ワクワクが占めています。このワクワクした想いをチームの皆さんと共有しながらチームとしてベストパフォーマンスを発揮していきたい。そして、そこで育った人財が活躍し、トヨタが誇る電池製造ラインになったらいいな──今、そんな未来地図を思い描いています。

トヨタ自動車株式会社

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