「Life Talk」を通じて、踏み出す一歩──生産職場から生まれた有志活動「LifeTalk」とは? | キャリコネニュース
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「Life Talk」を通じて、踏み出す一歩──生産職場から生まれた有志活動「LifeTalk」とは?

デンソーの噴射機器製造統括部では、社内外の人材から多様な経験談を聞くことで、生き方・働き方を変えるきっかけづくり「LifeTalk」という取り組みがあります。発案者の渡辺 菜摘がボトムアップで取り組みをはじめた背景と、今後の展望を運営メンバーの中山 翔大とともに聞きました。【talentbookで読む】

他者の言葉が、自分の意識と行動を変える“エッセンス”に

渡辺 「変わりたい、活躍の幅を拡げたいと思う人、あるいはそのように自己変革の意識を持つ前の段階の人に向けて、何かしらの気づきを与えられればと思ってはじめた取り組みが『Life Talk』なんです。普段、接する機会がない社内外の人たちの話を聞くことで、ものごとの考え方、ひいては人生観すらも変えるきっかけがつかめると信じています」

こう語るのは「Life Talk」の発案者である渡辺 菜摘です。噴射機器製造統括部 グローバル製造戦略室 製造DX課で、実際に製品を生産する現場(以下、生産現場)へのデジタル導入を推進するかたわら、有志が中心となって運営するコミュニティ活動「Life Talk」を立ち上げ、さまざまなことに挑戦した経験を持つ講師を社内外から招いて、3カ月に1度のペースで講演を開いています。

渡辺 「活動をはじめる以前、私は生産現場で働いていましたが、“もっと自分らしさを発揮したい”という想いをずっと抱えていました。生産現場では、作業効率や安全性を高める観点から、マニュアルや指示に従って動くことが基本とはなりますが、より作業効率や安全性を高めるための改善を提案していくことも求められます。

私自身も、さまざまな改善の提案をしてきましたが、その中で、“改善にとどまらず、新しいアイデアを自ら発案して、実現していくような経験をもっと多く積み、自分を成長させたい”という気持ちを募らせていきました。そんなとき、現在の製造DX課へ異動することになったんです。異動先の職場ならもっと自分発案の仕事ができると期待が膨らみました。しかし、日々の忙しさから、自分発案の仕事になかなか手が付けられず、モヤモヤとした想いが晴れなかったんです」

そんな渡辺の転機となったのが、社内で行われた講演会でした。いくつもの事業を立ち上げてきた社外の実業家の経験談が、渡辺のモヤモヤとした想いを払拭したと言います。

渡辺 「講演の中で私がハッとさせられたのは、『新しいこと始めようとしたときに、想いややる気はもちろん大事だけど、“経験者のエッセンス”を一滴足すことが何より重要だ』という言葉でした。

そのときの私にとって、その言葉こそがまさにエッセンスでした。エッセンスを一滴いただけたおかげで考えを整理することができ、仕事に対しても自らの意思で前向きに取り組めるようになったんです。同時に、こうした経験を他の人にも味わってもらいたいと思いました」

渡辺は、講演会のすぐ1カ月後に「LifeTalk」の立ち上げを上司に相談し、業務の一環として取り組みをスタートさせました。

出会いが出会いを呼ぶ──仲間を得て勢いづく活動

「LifeTalk」の立ち上げ当初、渡辺は、主に生産するための工程や製造技術を開発・設計する社員を対象に、 ひとりでオンライン講演会を実施。その際に「LifeTalk」を運営していくメンバーを募ると、すぐに6名の仲間が集まりました。グローバル製造戦略室 新領域推進課で、精密なモノづくりを活かした新規事業創出に携わっている中山 翔大もそのひとりです。

中山 「LifeTalkでの講演を聞いて、社会人になってから自分が培ってきた考え方が、ある種の固定観念であったことに気づかされましたね。実は、入社以来、長らく作業工程の改善や設備・加工法の開発を担当していましたが、2022年1月より、新領域の事業を考える部署に異動することになったんです。

まさか自分が新しい事業を考える立場になるとは思いもしていませんでした。今までとはまったく違う働き方やマインドを持つ必要があるとわかってはいたのですが、はじめはなかなか自分を変えることができずに途方に暮れていたんです」

最初の一歩を踏み出せずにいた中山の背中を押してくれたのは、「LifeTalk」での、社内の新事業経験者による講演でした。

中山 「講演を聞いて学んだことは、“新しいことを始めるときは、知らないところにも飛び込んでいかないと何も進まない” ということでした。それはまさに自分に足りてなかったところ。講演の後、私は勇気をもって、手当たり次第に社内のあらゆる関係者とコンタクトを取ったり、デンソーという名前すら知らない社外の人にも突然声をかけてビジネス相談のアポを取り付けたり、を何度も繰り返しました。

おかげで新ビジネスの道筋ができ、“行動あるのみ”とはこういうことかと実感しましたね。そして、なかなか動けなかった自分の変化にも驚いています」

さらに、見聞を深めるために、今まで関わったことのない起業家などのイベントに参加した経験について、中山は振り返ります。

中山 「自分と同じようなビジネスパーソンの方でも自分とは異なる働き方、生き方をしている人たちのことを知れば知るほど、今まで知らなかった知見や思考を得ることができます。得たものは、自分の業務に還元できるものでもあり、さらに自分の人生を上向かせてくれるものでもあります。

同じような経験を、デンソーで働くメンバーにもしてもらいたい。自分自身も、そういう場を作っていきたい。そんな想いで、LifeTalkの運営メンバーに参加することにしました 」

運営メンバーが成長することで、より良い活動になる

順調に回数を重ねていった「LifeTalk」は、聴講者に気づきを与える機会を提供する一方で、運営メンバーの成長にもつながっていました。

渡辺 「実は当初、参加してくれたメンバーの動機や、活動に対しての目的がそれぞれ違ったんです。このメンバーでビジネスコンテストに出るつもりで入ってきた人もいれば、一歩を踏み出せない自分をひっぱりあげてもらうことを期待する人もいて、足並みが揃っていませんでした」

しかし、動機などが違っていても、運営メンバーに共通していたのは、“規定された枠を越えて何かをしたい”、“現状を変えてみたい”という想い。

中山 「まず、僕たち運営メンバーの気持ちを揃えるためにも、自分たちの働き方や生き方を変えていく必要があると思ったんですよね。一度変えたら終わりじゃなくて、常に変化する。つまり自分をアップデートしていくことで、さらに『LifeTalk』の活動を良くしていけると思ったんです」

渡辺 「自分たちをアップデートしながら活動を続けていくには、お互いの理解も深めていく必要があると思い、メンバー全員で自己分析系のイベントに参加したり、自分自身のキャリアや悩みを話したりもしました。

そうしていくことで、最初は気を使ってあまり発言できていなかったようなメンバーも、自ら意見を挙げてくれるようになり、活動も活発になってきたと思います。そして、何より私自身が『LifeTalk』の運営を通じて、“自分の強み”を見いだせ、意識が変わった気がしています」

情報提供から行動支援へ。「LifeTalk」は広がり続ける

運営メンバー自身の成長もあり、1年以上にわたって継続してきた「Life Talk」は、さらに取り組みを広げようとしています。

渡辺 「現在、社内に有志活動をしている団体は多くありますが、実は生産現場で働く人たちが気軽に参加できるような活動がありません。今後は、その人たちにも興味を持ってもらえるようなイベントを企画していきたいと思っています」

中山 「噴射機器事業部の中だけでも、4,000名ほどの生産現場に携わる社員がいます。1人でも多くの社員の意識を変え、人生がより豊かになるように活動に取り組んでいきたいです」

渡辺 「変わらずに伝えていきたいのは、一歩踏み出すことの大切さです。参加できるハードルを下げて、最初の一歩を踏み出しやすくすれば、本来関わることのなかった人たちと連鎖的につながっていけると思っています。自分の世界を広げて、働き方や生き方に選択肢を持つことは決して難しいことじゃないんです。新しい働き方も、自分自身の行動によって作り上げていけることを知ってもらいたいんです」

実際、これまでの講演会を聞いた社員からは、運営メンバーのもとに「刺激を受けた」という声が多く届いています。ただし、ここで終わりにしたくないというのが、運営メンバーたちの想い。講演会を開催するだけでなく、新たな試みをはじめようとしています。

中山 「講演会でできるのはロールモデルの紹介くらいまで。一人ひとりが抱えているモヤモヤをそれぞれ解決していくには、情報提供だけでは足りないと感じています。やる気のある人の芽を出させてあげたい。いろんな働き方を知って、それにピッタリあったキャリアを描けるようにしてあげたいんです」

渡辺 「最終的にイメージしているのは、そのような一歩を踏み出すための具体的なサポートができるような組織です。そして私自身も、一人でも多くの社員のために、エッセンスを一滴加えてあげられるような人間になっていきたいです」

「LifeTalk」の取り組みはまだまだ始まったばかり。出会いと気づきの好循環を生み出していくために、これからも挑戦し続けます。

株式会社デンソー

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