デザインで日本をより良くしたい——社会とビジネスの課題に切り込むデザイナーの挑戦 | キャリコネニュース
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デザインで日本をより良くしたい——社会とビジネスの課題に切り込むデザイナーの挑戦

▲入社2年目に、富士通初のデザインアドボケートに就任した横田

全社DXプロジェクトを推進する富士通。その一環として、2022年にデザインセンター直下のデザインアドボケートにポスティングで就任した横田 奈々は、社会課題にデザインアプローチで取り組むエコシステムの社会実装に向け、情報を発信しています。これまでの挑戦の足跡をたどりながら、めざす未来像に迫ります。【talentbookで読む】

みんなで社会課題に取り組むべく、まずは「ファンづくり」を意識した情報発信から

デザインセンターは、富士通のプロダクトやUIデザイン、企画、UXリサーチなどクリエイティブを担うデザイナー集団。2023年4月で入社3年目を迎えるUI/UXデザイナーの横田は、2022年9月から当社初のデザインアドボケートを務めています。

横田 「富士通デザインセンターは、2022年から、デザインアプローチで社会課題に取り組むプロジェクトに力を入れてきました。私が務めるデザインアドボケートのミッションは、その取り組みを社内外に発信すること。SNSや社外イベントを通じた情報発信を通して、デザインや組織への共感を生み、ファンになってもらうことを目標にしています」

社会課題解決に向けて取り組んでいるプロジェクトの一例として、富士通が2022年度委員長を務めたJEITA(電子情報技術産業協会)におけるデザイン委員会での試みが挙げられます。

横田 「企業の枠を超えてインハウスデザイナーたちがつながり、デザインアプローチで社会課題に取り組むエコシステムの構築に向けたトライアルを始めています。

これまでの日本のテクノロジー企業は、各社が自社の技術を起点に商品を開発し発展してきましたが、技術に偏重しすぎるあまり、社会課題解決に寄与できていないと考えたんです。これからはまず、『どんな社会課題に取り組むべきか』という問いを立てるところから始めるべきではないか、という想いがこの取り組みの出発点となっています。

流れとしては、まず、デザイナーが社会課題の解くべき問いをくくり出し、その後、企業や業種の枠を超えて、『この課題なら、うちのこの技術で解決できるかもしれない』といった具合に、各社が得意分野を持ち寄って解決に取り組んでいく。そんなエコシステムを社会実装する構想をめざし、ワークショップなどで熱い議論を交わしたり、イベントに登壇して構想を発信したりしています」

情報発信する際、横田にはデザイナーとして譲れないこだわりがあると言います。

横田 「発信するコンテンツや、イベントなどで使用する説明資料は、すべて自分でデザインするようにしています。とくに心がけているのは、プロトタイプをつくって資料に取り込んだり、見る人がイメージしやすいビジュアルにしたりすること。その点では、デザイナーとしてのスキルを活かせていると感じています」

ファンを増やすことが問題解決を前に進める力に。学生時代のインターン経験での学び

▲大学1年生から、さまざまなインターンに参加していたと話す

学生時代は、工学部のデザイン学科でサービスデザインを専攻していた横田。在学中に複数の長期インターンに参画し、UIデザインを実践的に学んでいました。そこで、デザイナーとして横田のベースをかたちづくる重要な経験が多くあったと言います。

横田 「あるスタートアップ企業で長期インターンをしていたときのこと。同社のサービスのユーザーが、SNSで『ちょっと困っている』といった内容を発信したところ、社員が対応する前に他のユーザーが返事をして問題解決の救世主になってくれたことがあったんです。

『社員ではないのに、ユーザーが味方になってくれるなんて……!』と、とても印象に残っているのですが、同社の広報担当やデザイナーたちが、『こんな想いで開発している』といった情報を日々発信し続けていたからこそだろうと感じて。企業の熱意を外部に伝えることの大切さと、ファンになってもらうことが問題を解決に向けて推進する力になるのだと気づかされたエピソードでした」

その後、横田は海外のデザインワークショップにも参加。やがて、「デザインで日本をより良くしたい」という大志を抱くようになります。

横田 「中国企業のデザインワークショップに参加して驚いたのは、サービスの世界観にデザインが多分に取り入れられていたことでした。優れたUIデザインを提供するのはもちろん、世界観のつくり込みにおいても、デザインの力でユーザーを惹きつけていたんです。

日本企業でも、世界観の構築にデザインの力を活かすことができれば、より良い製品を生活者に届け、より良い社会の実現につなげていけるのではないか。そう思うようになりました」

横田が富士通に出会ったのは、まさにそんなタイミングでした。

横田 「大学の授業で、富士通のHuman Centered Design(利用する人間を設計の中心に据える考え方)を知る機会があり、富士通デザインセンターの取り組みに興味を持ちました。しかも、富士通には幅広い事業分野があります。さまざまな角度から日本を良くすることができる環境だと感じ、入社を決めました」

入社後は、デザインセンターに配属され、ビジネスデザイン部でヘルスケア事業やモビリティ事業を中心としたUI/UXデザインを担当した横田。2年目にいくつかのプロジェクトでUIデザインリーダーを務めていたころ、デザインアドボケートの公募を目にし、応募を決意しました。

半年間でフォロワー1000人増、デザインセンターのインターン志望者が2倍に

▲デザインアドボケートとして、社外イベントに登壇したときの様子

横田がデザインアドボケートに応募した理由は、「社外の人に富士通のことをもっと知ってもらいたいから」だと語ります。

横田 「入社してすぐ、病院の電子カルテサービスのUIデザインに携わりました。電子カルテのユーザーは医師ですが、私たちプロジェクトメンバーが一番重視したのは、医師のもとに来た患者さんの体験。デザイナーである私はもちろん、技術者や営業も『患者さんに寄り添ったサービスをつくりたい』と強い想いを持って開発に当たりました。

このプロジェクトだけではありません。富士通は、一般的にスーパーコンピューターや政府系システムを手がけるイメージが強いと思いますが、実際には生活者に寄り添った身近なサービスもたくさん提供している会社なんです。そのことを社外の人にもっと知ってもらいたいと思っていました」

着任後、横田はTwitterを使って積極的な発信を始めます。

横田 「学生時代から使っている個人アカウント上で、私やデザインセンターの活動内容を発信しています。富士通のデザインアドボケートという肩書きを出してはいますが、会社の色はあまり出していません。

デザインアドボケートの最終ミッションは、富士通のファンを増やすことですが、富士通という主語を持ち出すと、『いや、自分とは関係ないし』と興味を持たれなくなるおそれもあるので、横田というひとりのデザイナーとして、私個人を前面に出すことを心がけています」

こうした発信の手法は、富士通では前例のないこと。社内手続きには苦労する面もあると言いますが、着任から半年で大きな手ごたえを感じていると話します。

横田 「Twitterのフォロワーが1000人ほど増えました。リプライの内容にも変化を感じます。イベント登壇後はリプライがとくに多く、『富士通デザインセンターではそういう活動もしているんですね』『社会課題への取り組みを大企業である富士通に先陣切って取り組んでもらいたい』といったコメントをいただいています。

また、大手のメディアやこれまでデザインセンターと直接関わりがなかった企業からもお問い合わせをいただくようになりました。Twitterを通じて、私という人間や活動内容について事前に伝えていたことで、お問い合わせのハードルを下げられたと感じています。

さらに、デザインセンターの学生インターンシップへの応募人数が、昨年度の2倍に増えました。志望動機に『イベントで活動を拝見して』と記載してくれている方が多くいて、取り組みの手ごたえを実感しています。

ここで満足せず、デザインアドボケート第1号としてどこまでできるのか、これからも挑戦していきたいですね」

今後はコンテンツづくりに注力──YouTubeチャンネルを準備中

▲「難しい社会課題を解きほぐし、本質的な課題を特定する。それは、私たちのデザイナーが最も得意とする領域」と語る

デザインアドボケートとして、横田はこれからも自分らしく活動していくつもりです。

横田 「私は学生時代から趣味でDJをやっていたこともあり、アドリブを利かせて場を盛り上げることを得意としています。先日の社外イベントでも、その強みを活かせたと感じたことがありました。

来場者約700人を前に登壇したのですが、手違いでスクリーンに違う資料が投影されてしまい、その差し替えに5分ほどかかってしまったんです。予期せぬトラブルでしたが、その5分間、アドリブで自己紹介したりして、場を和ませることができました。

この仕事は、人前に出て注目を浴びたり、会場の雰囲気を見ながら臨機応変に動いたりする場面が少なくありません。これからもこの強みを発揮して発信を続けたいと思っています」

残されたデザインアドボケートの任期はあと半年。横田には、挑戦したいことがあります。

横田 「この半年間、イベント登壇や取材、お問い合わせ対応をメインに活動してきました。ここからは、自分でコンテンツをつくって発信していくことに注力したいと考えています。

目下、デザインセンターが取り組む『社会課題×デザインアプローチ』を紹介するYouTubeチャンネルの開設を準備中です。すでに対談動画を取材済みで、配信記事の執筆も始めています。

発信したいことは山ほどありますが、私が伝えたいのは、社会課題を少しでも意識して少しでもいいからみんなで取り組んでいこうという想いです。たとえば私は、各自がマグカップを持参すれば森林資源の消費を削減できるので、紙コップでオフィスのウォーターサーバーの水を飲むのに反対です。

そんな具合に、身近な社会課題に関する想いは誰にでもあるはず。それをカタチにして、事業やビジネスにつなげることができたらと考えています」

入社2年目にして社内外で注目されてきた横田ですが、キャリア展望を語るときは、意外なほどに肩の力が抜けています。

横田 「具体的なキャリアイメージはあまりありません。今の私は『ファンづくりを意識して情報発信すべきでないか』という課題感を持って活動していますが、今後、どういった課題に取り組むかによって、私が歩んでいくキャリアも柔軟に変わっていくと思っています」

新たな課題を見つけては、常に自分らしく向き合ってきた横田。得意のアドリブ力を発揮しながら、これからもクールかつ情熱的に前進していく未来が目に浮かびます。

富士通株式会社

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