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鎌倉新書・清水祐孝会長CEOインタビュー(3) 「悔いのない人生を生きるためのお手伝い」というミッションを制定した理由

鎌倉新書・代表取締役会長CEO清水祐孝氏

鎌倉新書・代表取締役会長CEO清水祐孝氏

鎌倉新書では、自社の事業を単にお葬式やお墓に関する相談にとどまらず、広く「終活インフラ」と定義し直しました。それにあわせて、会社のミッションやビジョン、行動指針を体系的に見直しています。

明るい見通しが見えない時代に、終活を支援する自社はどうあるべきか。見直しの背景には「お葬式」が私たち生きる人間にもたらす意味に対する深い考えがあったようです。鎌倉新書・代表取締役会長CEO清水祐孝氏のインタビュー、全3回の最終回です。

消費者や働く人にとっても、会社のミッションは必要

当社はコロナ禍で、ミッションとビジョン、行動指針を見直しました。ミッションは「私たちは明るく前向きな社会を実現するため、人々が悔いのない人生を生きるためのお手伝いをします」というものです。

実はミッションは上場前に定めたものもあったのですが、その後、当社は紙からネットだけでなく、さまざまなビジネスを広げています。例えば、お葬式を終えたお客様から、「相続」に困っているとか、「遺産」の申告をしなければならない、資産を分けるために「不動産」を売らなきゃならない、といったお悩みにも応えています。

そこで「終活」というのはお墓や仏壇だけではないことに気づき、私たちの事業を「終活全般のインフラになろう」と考えを転換させています。そうすると、仏教書や供養の業界誌を出していたころのミッションとは、整合性が取れなくなってきたわけです。

また、モノが不足している時代には、モノに対する渇望が消費者側にあって、ミッションなんてものは不要だ、とにかくモノが売れればいい、というようなことでも良かったのかもしれません。しかし近年では安い高いだけでなく、きちんとしたことを考えている人からモノやサービスを買いたい、というお客様の欲求が出てきました。

働いている人に向けても、職場というのは単なる労働とお金を交換する場所ではなく、労働自体から学びがあったり、成長があったりする場であるべきだと考えています。当社はそういう会社であるということを理解して入社してもらうためにも、ミッションなどの作り直しには意味があったのかなと考えています。

「人生を前向きに明るく生きる人」を増やしたい

2020年にミッションとビジョン、2022年に行動指針をリニューアル

2020年にミッションとビジョン、2022年に行動指針をリニューアル

ミッションの「明るく前向きな社会を実現するため、人々が悔いのない人生を生きるためのお手伝いをします」とは、どういう意味なのか。私たちは高齢社会を活性化していくことが、明るく前向きな社会の実現につながると考えています。

古今東西、文化や宗教の違いはありますが、お葬式のようなことはどこでもやっています。人間であるかぎり、その日は必ずやってきます。亡くなった方が先生で、参列者が生徒。そんな学びの場であるというのが、私が考えるお葬式です。

宗教的な意味は別としても、人の死を見ることは自分の生きている期間をどう最適化するかを考えるいい機会です。残りの人生を明るく前向きに生きようと考えた人は、つまらないことにこだわらずに生きていくことになるだろう。極端にお金に執着しても意味がない。亡くなったあと、お墓にお金を持っていけないのに、お金を使える可能性もほぼゼロに近いのに、預金通帳の金額を数えていても意味がない。

お葬式によって、残りの人生で何が大事で、何に自分は価値を見出すのか、あるいはどういった形で人様に貢献するのか。考えるきっかけとなり、自分の人生を前向きに明るく生きていける人が増えていけば、日本の社会も明るくなるのではないか。ミッションには、そのような思いが込められています。

終活というのは、今生きているところから明るい未来を描くというよりも、仮に自分がこの日に死ぬというところに立っていると仮定して、今を見つめて、20年前、10年前、30年前の今を見つめて、残りの人生で何をやりたいかを考える有用な機会なのではないかと。

お客様に適切な提案をするためにSalesforceを導入

当社は紙の出版社からネットビジネスに転換したこともあって、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の成功例と言われることもあります。しかし、当社としてはデジタルは手段であって目的ではないので、あくまでもユーザーさんに満足いただけることを目的として、満足度を上げるためにデジタルを活用するという考え方になります。

当社は「終活が当たり前になる、その時だれもが鎌倉新書をイメージ(想起)する」をビジョンに掲げていますが、ひとりのお客様とのお付き合いが、今後は葬儀だけで終わるのではなく、相続など周辺に広がって複数のサービスでお取引させていただくことを目指しています。

そうなったときに、さまざまな接点で発生したお客様の情報を一覧できる顧客管理が重要になります。このために、例えばCRMツールとしてSalesforceを導入して、お客様対応の質を上げたり、クロスユースの提案を的確にしたりするよう取り組んでいます。

適切なソリューションを提案するためにも、お客様一人ひとりがどんな方なのかということを知る必要がありますし、そのためにアナログ的な手法や、経験や勘、目分量でやろうとしても絶対に無理ですので、IT化というかDXは重要だと考えています。まだ十分活用できていないところもありますが。

また、ひとりのお客様に対して複数のサービスをご提供するときに、お客様の課題を解決するという観点で、新しいサービスが生まれるかもしれませんし、新しい役割の仕事が増えるかもしれません。そのようなサービスや仕事で、顧客満足と効率化と収益性をちゃんと追うには、デジタル化は欠かせないでしょうね。

マーケットはまだまだ開拓し尽くされていない

2022年1月期決算説明資料より

2022年1月期決算説明資料より

日本は現在、高齢化が進み、経済的に厳しい状況が続いています。そんな中で、人々が少しでも明るく前向きに生きていくことに貢献することが、私たちが提供する価値であり、会社の役割のひとつと考えています。

これから15年ほど、2035年から40年くらいの間に死亡者数はピークを迎え、いずれ減る時代は確かに来るでしょう。しかし、マーケットはまだまだ開拓し尽くされておらず、やることはまだたくさんあると思っています。

特に高齢化が進む日本では、どの産業も厳しい中で、「終活」という肥沃なマーケットに位置しているといっていい、ある意味で非常に幸運なポジションにいると思っています。

そういう中で、私たちはあくまでもユーザーさんと、ソリューションを提供してくれる事業者さんとの間をつないでいきます。葬儀社さんや仏壇・仏具店さん、石材店さん、士業さん、介護事業者さんにとどまらず、今後は医療関係にも関わっていくかもしれません。

そのような役割を果たすためにも、私たちはユーザーさんの課題を明らかにすることが最も大事だと考えています。お客様を適切な目的地、ソリューションプロバイダーのところへ連れていくことに徹しながら、他にはないユニークなこの事業を大きくしていきたいと考えています。

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