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電通「正社員の個人事業主化」の狙い 新会社設立し10年契約のバックアップも

対象者は、勤続20年以上で60歳未満の社員、または中途の場合は勤続5年以上で40~60歳未満の社員の計約2800人。約20回の説明会と70回以上の個別相談会を行ったところ、約230人が自ら手を挙げて参加を表明したという。同社広報は

「自主的なものであり、会社が『切り替える』というものではありません」

とあくまでも参加者の意思によるものと強調する。

個人事業主への移行は、同社が提唱する「ライフシフトプラットフォーム」という新たな仕組みの根幹を担う。目的は「人生100年時代」といわれる現代に、社員が個人事業主として年齢にとらわれずに長く働けるようになることだ。また、同社としても

「(個人事業主になった)OBOGとのネットワークが築ければ、将来的には当社が今まで提案する機会が得られなかった地方の企業や自治体、教育機関やスタートアップ企業などの新たなビジネスの機会ができることもあるのではないかと考えています」

とメリットを見込んでいる。年齢を40代以上に限定した理由については「『年齢の幅を広げるべきか』との議論があったのは事実です」と明かした上で、

「20~30代はまだビジネススキルを習得している育成の時期であり、かつ人生100年時代を見据えてのセカンドキャリア、エイジレスな働き方を検討するには実感を伴わない世代であることが社員の声としてもあったためです」

と説明した。

「電通に勤めていた時以上の収入を得られる可能性も十分にあります」

同社では副業が禁止されており、これまで兼業や起業ができなかった。全国的に働き方の多様化が進む中で、個人事業主化を進める前に「なぜ副業を解禁しなかったか」と聞くと、次のように答えた。

「モデル就業規則などが国から定時され始めたとはいえ、法整備がようやく進み始めた段階であると認識しており、社会保険分野や労働災害分野では法の整備が十分でなく、また副業という言葉の定義も含め、未確定状態にあります」(広報)

さらに「法や定義が未整備の中、『副業を解禁』との言葉がもたらす解釈が多岐にわたり、誤認を招く懸念が包含されていると考えています」と電通ならではの影響力も加味した上で、現状は慎重な姿勢を取っているようだ。今後については、社員の労務管理や心身のケアなどを踏まえつつ、検討を重ねていく予定としている。

収入の増減についても気になるところだ。同社広報は「(個人事業主になった元社員には)正社員として電通で働いていた際の5~6割(契約期間10年間の平均値)の固定報酬が支払われます」と回答する。固定報酬は、個人事業主が業務委託契約を結んだNH社の業務を行うことで得られる仕組みで、案件は電通からの受注案件に限らないという。

また、この固定報酬は10年間で段階的に下がっていき、代わりに事業を通じて出した利益に応じて支払われるインセンティブ報酬の割合が高くなっていく。

「固定報酬とインセンティブ報酬を合わせて電通に勤めていた時の給与以上の収入を得られる可能性も十分にあります」

個人事業主に移行した後はこうした報酬を得つつ、自分でやりたい事業や業務、学び直しを行うことを想定しているという。

NH社は、電通の社員が個人事業主として独立し、その事業が軌道に乗るまでの10年間を支援する役割を担う。このため、契約期間は10年だが、事業が軌道に乗って自立の目処が立った場合などは、個人事業主側から契約の解除を申し出ることも可能だ。反対に、契約期間10年が終わった場合に正社員として復職できる仕組みはないという。

今後はNH社が今回の取り組みの評判、評価などを把握しながら、他企業との連携などを検討していく。他方、電通としても

「NH社(新会社)とのつながりを活用して新しいビジネスを模索したり、社内向けには、本施策に限らないさまざまな働き方の選択肢を引き続き検討していきたいと考えています」(同社広報)

といった展望を描いているようだ。

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