かわいい引きこもり中年ゆるキャラ「氷河くん」誕生物語 愛知労働局「デザインはうちの職員です」 | キャリコネニュース
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かわいい引きこもり中年ゆるキャラ「氷河くん」誕生物語 愛知労働局「デザインはうちの職員です」

氷河くん

かなりかわいいビジュアルだ。(画像は愛知労働局のサイトをキャプチャ https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hyogaki_hyougakun.html)

コロナ禍である。それに伴ってすっかり世間の関心が薄れたことはいくつもある。そのうちのひとつが、就職氷河期世代の行く末だ。バブル崩壊後の就職難を経験した世代の未来は、昨年の春まで日本の社会不安の一つだった。

国が重い腰を上げ、現在30代半ばから50代半ばまでの非正規雇用や無職の状況にある100万人を集中支援し、30万人を正規雇用に転換させる方針を打ち出したのが、2019年6月(政府決定)。この流れを受けて愛知労働局が作成したのがオリジナルキャラクター、アザラシの氷河くんだ。

ネット上では好意的な反応がみられる一方、「名前がストレートすぎるんじゃないか?」「白アザラシが色白の引きこもりを連想させてキツイ」「氷河くんは中年男。氷河くんママは70歳くらいだろう。かわいく描かれると問題が矮小化されているのでは?」と否定的な声もある。

氷河くんをデザインした愛知労働局ではどう考えているだろうか? 中の人に直接訊いてみた。(取材・文:檀原 照和)

「コロナ」もきっかけ

お話を伺ったのは、愛知労働局職業安定課の松下昇さん。意外なことに「デザインはうちの職員が考えました。美大出でもなんでもない素人が、がんばって担当しました」という。

愛知県が氷河期世代の就職支援に力を入れ始めたのは「あいち就職氷河期世代活躍支援プラットフォーム」という県内22の機関・団体による第1回会議が行われた2019年10月9日。氷河くんがお目見えしたのはその1年後だという。

「氷河くんを導入した理由の一つはコロナです。20年の春先までは景気が良く、人手不足がつづいていました。その状況がわずか半年で吹き飛んでしまったんです。ニュースがコロナ一色になってしまい、就職氷河期世代への関心がすっかり薄まってしまいました」と松下さん。

お役所ならではの堅さ、「就職支援窓口」への近寄りがたさを払拭したいという思いもあったという。

「頭にあったのは、政府広報がやっている就職氷河期世代の支援ポータルサイト『ゆきどけ荘』 (絵は『センネン画報』『みかこさん』『cocoon』などの今日マチ子さん)です」

キャラの導入を考え始めたのは20年の7月に入ってから。導入が10月なので、実質2ヶ月程度で完成にこぎ着けたことになる。

支援団体からも好反応


youtubeキャプチャ

YouTubeにも登場している。(https://youtu.be/-_c2TMudKU4)

「氷河くん」自体は「氷河期だから氷河」という割と安直な発想で生まれたものの、導入には慎重を期した。引きこもりの親御さんの団体など三つの団体に前もって聞き取り調査を実施したのだ。すると「マンガだと受け入れやすい」「記憶に残る。ふと思い出せるのが良い」と3団体全てからポジティブな反応が返ってきた。その事実を以て採用を決めたという。

「とは言え、懸念がゼロだったわけではありません。しかし利用者からの反応は概ね好評です。ハローワークのページに氷河くんをあしらったり、YouTube 動画をつくったりしていますが、こうしたページをみてハローワークを訪れた方がいる、という報告を受けています。わざわざ企業からもお褒めの電話をいただきました。普通はこういうことはありません。つくってよかったと思いますね」(松下さん)

ネット上では否定的な意見も散見されるが、そもそも全ての人間が満足するデザインというのはあり得ない。それよりもお役所らしからぬ対応に踏み切った愛知労働局の英断にエールを送りたい。

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