一方で、この報告書を読んでも、群馬県にはどんな魅力があるのかは伝わってこない。群馬の魅力を知りたいが、直接行くのは遠い。そこで、まずは都内のアンテナショップを訪れてみることにした。こういう場所なら、群馬県の魅力がきっちりわかるようなプレゼンテーションがされているだろう。たぶん。
さて、群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」があるのは銀座7丁目、銀座エリア最大の商業施設「GINZA SIX」から目と鼻の先の場所だ。そこで、店を目指してスマホのマップを頼りに歩いていったのだが、たどり着く前にすでに不穏な空気を感じ取ってしまった。
表通りは平日でも賑わっている銀座だが、1本裏通りに入ると途端にオフィス街といった雰囲気の場所もある。「ぐんまちゃん家」があるのは、まさにそんなオフィスビルの一階なのだ。観光客や買い物客がたまたま通りかかる感じではなく、周囲にワクワクするような雰囲気が1ミリも存在しないのだ。
案の定、店の中に先客は1人もいなかった。
訪れたのは平日の午後で、ちょっと小雨が降っていたから、人が少なめでも仕方ない。しかし、表通りや近くの商業施設は賑わっていたし、銀座に買い物客がいないわけではない。ただ、この店内に人がいないのだ。
2人いた店員も、唯一の客が入ってきても「いらっしゃいませ」と言ってくれるわけでもなかった。この辺は、都会的なドライな感じの接客である。群馬だけど。
さて、入店から1分も経たないうちに、筆者のテンションはだだ下がりになったのであるが、当初の目的は「魅力探し」である。
気を取り直して、何かあるだろうと探してみたのだが、正直に申し上げると惹かれるものは何ひとつなかった。グッズは、どこの自治体でもありそうな凡庸なものばかり。水沢うどんや焼きまんじゅうは、美味しそうにも思えるのだが、なぜだか心がときめかない。
そうなってしまう最大の原因は、店の雰囲気が寒々しいことだろう。アンテナショップは一般的に「その地域の雰囲気」を伝えようとする店が多い。その土地ならではの調度品を置いたり、観光地の雰囲気を再現する内装などを設えて、あたかもその地域に来たかのような気分にさせてくれる。
ところが「ぐんまちゃん家」は違う。打ちっぱなしコンクリートの店内に、ただ商品が並んでいるという感じなのだ(写真参照)。
移転で来客数が激減
実はこの「ぐんまちゃん家」、2018年までは銀座5丁目の晴海通り沿い、歌舞伎座の斜め向かいで営業していた。ところが、わざわざ人通りの少ないエリアに移転し、客足が激減してしまったという過去がある。
6月12日の移転オープンから9月末までの約3カ月半の来場者は約8万3000人で、前年同期(約16万5000人)から半減したことが19日、分かった。売り上げは15%(約600万円)減の約3500万円だった。歌舞伎座に近い好立地から、大通りに面していない場所に移ったことが影響したとみられる。
来場者と売り上げの減少について、広報課は立地条件の変化が要因と分析。担当者は「以前はふらりと入れたが、今は偶然立ち寄れる場所かと言われると、そうでもない」と声を落とす。(『上毛新聞』2018年10月20日付)
銀座の中心地からも近い晴海通り沿いにあった頃には、フラッと立ち寄る人も多かっただろう。実際筆者も、ぐんまちゃんがやってくるイベントや、名物・おぎのやの釜飯の販売などが頻繁におこなわれていたのを目撃しているし、何度か釜飯を買ったこともある。移転は、予算の都合もあったのだろうが、魅力の発信という意味では一歩後退しているだろう。
店員さんたちは親切だった
唯一の救いは、一見ドライに見える店員さんたちが、実は親切だったことだ。数種類置いてある焼きまんじゅうがどう違うのか聞いてみると、味の違い、老舗と売れ筋の店の商品があることを教えてくれた。
そこで、おそるおそる報告書のことを聞いてみると……。
「40位以下だとかえって目立っていいと思いますよ。むしろ30位あたりの県よりはマシです」
なるほどね。逆転の発想である。それなら、いっそのこと「魅力度ワースト4位の群馬県ショップへようこそ!!」なんてネタ看板を出すくらい開き直ればいいかもしれないが……。県のトップがガチ反論している状況だと、そういう「自虐ネタ」で盛り上がるのも難しいのかも。
群馬の場合、草津や伊香保みたいな有名温泉はあるし、登山やトレッキングができる自然もあるし、野菜は美味しいし、上州和牛ブランドもあるし、新幹線や高速道路で首都圏からのアクセスも抜群と、本来魅力はたくさんあるはずなのだが……。いやあ魅力の伝え方って、本当に難しいな。