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ワタミ復活のカギは「創業者・渡邉美樹氏との完全決別」 いまこそ親離れするときだ

2四半期ぶりの復配を発表したワタミグループだが、会社を巡る環境は厳しい。このタイミングで「渡邉美樹氏との決別」を呼びかけると、「いまさらブラック企業イメージの払拭を図ろうというわけか?」と早とちりする人がいるかもしれない。

しかしここで展開したいのは、そういうストーリーではない。私見だがワタミ凋落の根本的な原因は「事業戦略の失敗」である。大元の事業がしっかりしていればイメージの問題など吹き飛んでしまうのは、ユニクロのファーストリテイリングが証明している。

事業戦略が迷走した原因は「ワタミは自分の子ども」と言ってはばからない渡邉氏に頼り切った現役社員たちが、当事者意識をもって市場変化を見極められなかったからに他ならない。いまこそ創業者の呪縛を断ち切るときだろう。(文:深大寺 翔)

夏の特別メニューのコスパは素晴らしかったけれど

イメージだけでは会社は傾かない

イメージだけでは会社は傾かない

筆者はこの夏、これまであまり行くことのなかった居酒屋チェーンを集中的に巡ったが、最も驚かされたのはワタミの特別メニューの充実ぶりだ。千葉県産もろこし焼290円、三陸産活ホタテ390円は驚くほどのコスパ。3種のビーフ丼は、専用アプリの提示で790円。肉の質が素晴らしいだけでなく、ボリュームたっぷりの大サービスだった。

以前は顔色の優れなかった店長や副店長(正社員)の表情も明るくなり、裏方の「ブラックな労働環境」が改善されているように見受けられた。本社も店舗も懸命になって前向きに努力していることが感じられ、ワタミ復活の日も近いと思わせた。

しかし翌週にチェーン居酒屋の鳥貴族を訪れたとき、その手軽さと安さ、店の賑わいに衝撃を受けた。いまの市場に合致した戦略を取っているのは完全に鳥貴族の方であり、「このままではワタミは決して勝てない」と感じたのである。

ワタミの事業戦略の経緯については、ビジネスジャーナルが11月に掲載している3本の記事に詳しい。筆者の中村芳平氏(外食ジャーナリスト)は、2000年代初頭からの居酒屋低価格戦争を時系列にまとめている。

致命傷だったのは、JAPANESE DINING「和民」(いわゆる黒・ワタミ)へのリブランディングが、東日本大震災と同じ2011年3月にぶち当たってしまったことだ。サラリーマンの利用など客単価は上がったが、大多数の客層はこの流れについていくことはできなかった。

上場企業とは思えないほどの「創業者崇拝」

もしかするとブラック労働を是正するために、ワタミはどうしても低価格競争から抜け出す必要があったのかもしれない。結局、デフレに慣れた客層はワタミに戻ることはなく、「黒・ワタミ」はぜいたくな空間を持て余しているように見える。質が高ければ勝てるというものではないのだ。

ワタミの事業戦略の曲がり角となった2011年には、もうひとつの大きな転機があった。創業者の渡邉美樹氏が東京都知事選に出馬するために、2月に代表取締役会長を辞任したことだ。ここで表面上、渡邉氏は一度ワタミの経営から離れている。

その後、渡邉氏は非常勤取締役会長という珍しい肩書きで復帰するが、2013年6月には参院選出馬のためすべての役職を辞任し国会議員に当選した。こうして経営陣から外れたはずの渡邉氏だが、ワタミにおける創業者の影響はいまだに驚くほど大きい。

東京・大鳥居にあるワタミ本社には、受付横に「ワタミ夢ストリート」という博物館があり、創業資金を貯めるために佐川急便で働いていた渡邉美樹氏をかたどったロウ人形が飾られている。れっきとした東証一部上場企業だが、初めて見た人は宗教団体の施設と勘違いしてしまうかもしれない。

会社のウェブサイトからも、渡邉氏のフェイスブックなどへのリンクがはられており、今年9月30日まではGoogleで検索すると、ワタミのウェブサイトの説明に「創業者 渡邉美樹の思いを大切に」という一節が入っていた(現在は外されている)。

社名から「ワタミ」の文字を外すときは来るのか

カリスマが経営上の意思決定から外れた会社はどうなっていったのか。渡邉氏の後を託された側近や部下たちは、「渡邉さんの会社を自分たちが守らなければ」という意識を強めていったことは想像に難くない。

創業者を強く意識すればするほど、本来注視すべき市場の変化から目が離れていく。9月にはグランドメニューの見直しも行われたが、やはり現在のトレンドをうまく掴んでおらず、魅力が低いと感じざるを得ない。

しかしここのところワタミブランドとは別業態の店が開店するなど、ようやく新しい芽が出てきた。幹部社員を対象としたビジネススクールに参加したり新店舗を訪れたりする姿をフェイスブックに投稿してきた渡邉氏だが、11月25日には前日の臨時株主総会を受けて、こんな投稿をしている。

「今のワタミと私の関係は、喩えるなら親と子の関係です。永遠の関係であるものの、子は親の所有物ではありません」
「『最近のワタミは、昔のワタミよりいいね』子供がいつかそう言われることは親子である以上、私にとって最大の幸せです」

親密さは残しながら、会社と微妙に距離を置くスタンスを感じさせる。また渡邉氏はこの文の中で「私が経営に戻ることはありません」と断言している。事実上の子離れ宣言である。

現役社員の側も、いよいよ自分の足で歩き始めるときだろう。ゆくゆくは「ワタミ夢ストリート」を潰してカフェテリアにし、社名を変えるくらいの勢いで突き進んで成長することが、創業者に対する恩返しになるのではないだろうか。

あわせてよみたい:ワタミ値下げに相次ぐ「そこじゃない」の声

 

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