ヒット豊作でもアニメ制作企業46%が減益の謎 「製作委員会方式を見直す時期にきている」と識者は指摘 | キャリコネニュース
おかげさまで9周年 メルマガ読者数
65万人以上!

ヒット豊作でもアニメ制作企業46%が減益の謎 「製作委員会方式を見直す時期にきている」と識者は指摘

昨年2016年は、『君の名は。』や『聲の形』といったアニメ映画がヒットした。にもかかわらず、アニメ製作企業は苦境に立たされているという。帝国データバンクが8月22日に発表した「アニメ制作企業の経営実態調査」報告書から、その実情が明らかになった。

アニメ制作企業の収入の合計は過去最高、一方で1社当たりの収入は10年で4割減

アニメ制作企業の収益動向

アニメ制作企業の収益動向

アニメ制作企業230社の収入高の合計は、2007年以降増加傾向だ。放映本数の増加が追い風になり、2016年には過去最高の1813億4700万円に達した。一方、1社当たりの平均収入高は2007年の12億3600万円をピークに、10年間で約4割も減少。2016年には7億9900万円にとどまった。

複数のヒット作に恵まれた2016年も、増収した企業は35.5%で、2015年の43.1%をも下回っている。一方、減収した企業は30.4%と、過去5年間で初めて3割を超えた。売上高ではなく利益に注目すると、増益した企業は44.2%と、減益企業の46.5%より少ない。

収益減により倒産した企業もある。作業工程の企画・立案からアニメーターの招集などを手がけていたマングローブは、自社作品である『サムライチャンプルー』のヒットなどを受け、2013年10月期には年収入高が約10億1700万円に達していた。しかしヒット作を続けて生み出すことができず、2015年11月に破産した。

『ストラトス・フォー』や『ナジカ電撃作戦』といった代表作品を持つスタジオ・ファンタジアは、2006年9月期には年収入高が約3億8400万円に上っていたものの、得意先からの受注が低迷し、2016年11月に倒産に至った。

「新興のアニメ制作会社には自転車操業のところが多い」

アニメ作品のヒットがいくつも生まれているのに、なぜ減益したり、破産したりする会社があるのだろう。アニメ業界に詳しいジャーナリストの河嶌太郎さんは、アニメの会社の収益が上がらないのは、「2000年代以降、制作会社の数が雨後の筍のように増えているから」だと語る。

帝国データバンクが2016年8月に発表した「アニメ制作企業の経営実態調査」によると、調査時点で153社あった制作企業のうち、81社が2000年代以降に創業している。

「新興の制作会社の多くは、従業員を正規雇用では雇っていませんし、会社自体が不安定であることがほとんどです。経験を積んだ人が他のアニメ制作会社から独立して新しい会社を立ち上げることが多いのですが、こうした会社は自転車操業状態のところも少なくないため、アニメ市場が拡大しても、1社当たりの収入が増えないということが起こっています」

複数の会社が出資して制作費用を賄う「製作委員会方式」にも問題があるという。

「アニメの制作会社だけでは、制作費用を出せません。そのため出版社、ビデオメーカー、玩具メーカーなどの企業が『製作委員会』に入り、出資します。『委員会』に入っている企業がそのアニメから莫大な収入を得たとしても、利益は『委員会』内の企業で分配されます。制作会社に支払われる制作費用は予め決まっており、アニメがヒットしても後から追加で還元されることはありません」

「そろそろ『製作委員会方式』の見直しが本格的に議論されてもいい時期に差し掛かっていると思います」と、今後はビジネスモデルを変えていく必要があると話す。

「例えば、2017年に放送された『けものフレンズ』は、キャラクターがCGで作られたことで、低予算で作ることができました。にもかかわらずあの大ヒットですから、業界内で物作りに対する考え方が変わりつつあるようです。他にも、『ずんだホライずん』のようにクラウドファンディングだけで制作資金を調達する事例もでてきています。また、深夜アニメが中心とはいえ、そのテレビ放映権料はバカになりません。製作側が資金調達をし、それをネットの動画の配信に限定して、広告収益も得る形にすれば、低リスクでかつ製作側に直に利益が入ってくる構造になります。新しいビジネスモデルを模索する段階に来ているでしょう」

※ウェブ媒体やテレビ番組等で記事を引用する際は恐れ入りますが「キャリコネニュース」と出典の明記をお願いします。

キャリコネであの有名企業の「働きがい」「年収」「残業」の実態を見る

【PR】注目情報

関連記事

次世代バナー
次世代バナー

アーカイブ