警視庁の迷惑防止条例改正案が「東京都版の共謀罪」と物議 解釈次第で報道の自由も制限可能か | キャリコネニュース
おかげさまで9周年 メルマガ読者数
65万人以上!

警視庁の迷惑防止条例改正案が「東京都版の共謀罪」と物議 解釈次第で報道の自由も制限可能か

警視庁が今年、東京都の第一回定例議会に提出した迷惑防止条例の改正案が、物議を醸している。改正案は、つきまといとして取り締まれる対象になる行為に「住居等の付近をみだりにうろつくこと」「名誉を害する事項を告げること」などを追加し、罰則規定も重くする方針だ。

同様の内容はストーカー規制法にも盛り込まれている。しかし、ストーカー規制法は規制対象を「恋愛感情の充足を目的とした行為」に限定している。復縁を迫る、交際を迫るなど、客観的に観測できる行為に限られるのに対し、都の迷惑防止条例は

「正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」

の行為とある。正当性は現場警察官の判断に委ねられるほか、「悪意の感情を充足する目的」があるかどうかも内心の感情で違法・適法かを分けることになるため、解釈は難しい。このまま改正されれば恣意的な運用が行われる可能性があるとして、一部では「東京都版の共謀罪だ」という声も出ている。

「刑法上の名誉毀損にあたらない行為までも処罰可能になってしまう」

画像は東京都庁。改正案が成立すれば、全国に影響する可能性があります

画像は東京都庁。改正案が成立すれば、全国に影響する可能性があります

自由法曹団東京支部のメンバー、船尾遼弁護士は「なぜ今このタイミングで改正案を出したのか、妥当性が見当たらない。追加されようとしている事項は、現行のストーカー規制法で取り締まり可能。条例が変更されれば、自由な議論が制限されかねない」と危機感を募らせる。

一番の問題は、「『名誉を害する事項を告げること』を追加し、刑法上の名誉毀損にあたらない行為も処罰可能にしようとしていること」だと指摘する。

刑法では、客観的に社会的な名誉を下げるような事柄を、不特定多数に向けて言うことが名誉毀損罪の要件になる。しかし条例の改正案では「相手がむっとするようなレベル、たとえば『お前はバカだ』などのレベルであっても、解釈次第で適用が可能」になるという。

そうなると、国会前や路上で議員を批判したり、労働組合が社前集会で会社の批判をしたり、マンション建設に反対する住民がチラシを撒いたり、消費者が企業に対して不買運動するといったことも規制対象になりかねない。行為の形に関する制限もないので、SNSでの発信でさえも規制対象になる可能性があるという。

「刑法上の名誉棄損罪は告訴がなければ処罰できませんが、改正案は告訴がなくとも、捜査機関の判断により逮捕・起訴し処罰できてしまいます。使い方次第でどうにでもなる条例を出すのはどうなんだ、というのが一番大きな疑問点です」

3月末には成立する見通し「反対する人はSNSで発信してほしい」

さらに、「監視を告げること」という追加項目に関しても、解釈によっては「記者などが『あなたを張っている、私はあきらめません』と伝えることがあたる可能性がある」と懸念する。こうなれば、報道の自由にも影響しかねない。

自由法曹団東京支部は、「改正案は、憲法で保障された労働組合の団体行動権、国民の言論表現の自由、知る権利、報道の自由を侵害するものであり、また憲法94条に反する」として都に意見書を出しているが、改正案は今後、19日の警察・消防委員会で審議された後、22日に採決、月末の本会議で成立する見通しだ。船尾弁護士は、

「反対する人はSNSで発信したり、消防委員の元に要請文を送るなどしてほしい」

と話していた。

【PR】注目情報

関連記事

次世代バナー
次世代バナー

人気記事ランキング

  1. 学童保育でワーママ悲鳴「貯金尽きた」「受入人数多過ぎで目が届いていない」 保育園だけじゃない預け先の悩み
  2. 落合陽一が語るAI時代の生き残り方 大事なのは「自分の収入と生み出している価値の差をしっかり把握すること」
  3. 上司に出す印鑑は「左に傾ける」のがマナー? ネットは「狂ってる」「社畜魂だな」と大批判
  4. 若新雄純氏、「30歳成人式」を提唱 「18歳で準成人、30歳で成人と段階を踏むほうが、今の社会に合っている」
  5. 「店員がマスクして接客ってあり?」に反論相次ぐ 「食品扱う職業はマスクしてほしい」「不特定多数のお客様が来るから風邪予防もある」
  6. 1人暮らしにありがちなこと 「郵便受付がいつの間にかパンパン」「冷蔵庫内の賞味期限切れが多発する」
  7. 【新型肺炎】野田洋次郎、マスク買い占めに苦言「過剰反応は備えではない」 ファンからは"買えない"報告相次ぐ
  8. コンサルタントが働きやすい企業2位デロイトトーマツ「昇給は毎年」、3位アクセンチュア「有休と別に年160時間の傷病休暇」
  9. ソニーが「アロマスティック」体験イベントを開催 「香りを持ち運ぶ」新しいライフスタイルを提案
  10. 「レジでお金を投げてくる客」ってなんなの? 店員の心情を的確に表現した動画が話題

アーカイブ