破水しても働く女性役員は「自然体」なのか? 日経DUAL記事に相次ぐ疑問視
日経DUALが4月8日に掲載した、「大和証券 子育ても仕事も自然体で女性役員に」が話題になっている。大和証券で6人目の女性役員となった広報部長・白川香名氏(48)へのインタビュー記事だ。子育てをしながら役員となった初のケースだという。
破水するまで働くのは「自然体」なのか?
記事では白川氏に、仕事と子育てについて聞いている。白川氏には2人の子どもがおり、1997年の第1子出産の際は、同社初となる産休を取得したそうだ。しかし、産後8週間で仕事に復帰。夫が会社を休んで育児をした。
第2子を妊娠したときは「プライベートなことだから」と、妊娠8ヶ月まで周りには告げずに仕事の日々。予定日の1ヶ月前に破水し、産休に入ったのは出産前日だった。さらに出産後はすぐに復帰。しかし、朝7時に子どもを保育園に預け、夜7時に迎えに行く生活に焦りを感じていたようだ。
「残業はできないし、夕方の職場の雑談にも加われない。業務後の何気ない雑談が仕事のヒントになったりするのに、そうした場にいられない疎外感を味わった」
仕事一辺倒の生活は続く。長男が手術を受けるときも「仕事があるので手術が終わるまでは付き添えない」と言い放ち、看護師から怒られた。次男の中学受験も「母としてできることは塾の月謝を払うことぐらい」と見守らず。しかし子どもへの罪悪感はまったくないという。
「子育てのプロに任せるわけだから、私がずっとみているより、はるかにいい」
「職場ではやるべきことをやるだけ。『子どもがいるからできない…』とか『子どもがいてもやる…』といった基準は存在しない」
30代女性社員は「普通に頑張っている人」とコメント
そうした仕事一筋ぶりが奏功したのか、40歳を超えて仕事で「アイデアがどんどん実現できるようになった」のだという。そうした実績が評価されての役員抜擢なのだろう。
記事では、大和証券の30代女性社員のコメントとして、
「白川さんのように、子育てをしながら、普通に頑張っている人でも役員になれるんだと思うと、励みになる」
という声が紹介されている。記事は「仕事も子育ても、あるがまま自然体。それが白川さんの人生観だ」と結ばれており、あくまで「普通」「自然」であることが強調されている。
だが、子育てを顧みず、破水するまで仕事をする姿が果たして「普通」「自然」なのだろうか。ツイッターなどでも3000件以上のツイートを集めたが、
「オレの読解力が低いのか?どう読んでもスーパーウーマンにしか読めない」
「『大和証券』の”子育ても自然体”が全く自然体ではない件」
と疑問視する声が相次いだ。
会長は「女性活躍」を掲げているが…
大和証券の鈴木茂晴会長は2014年3月18日、同じ日経DUALのインタビューで「育休を取ることが会社によい影響を与える」と発言している。同社ホームページによると、2013年度には女性486人・男性19名の計505人が育休を取得。2005年度に比べて取得者が約4倍に増えた。
また、2008年には「子育てサポート認定事業主マーク」(愛称「くるみん」)を取得。女性の活躍を推進する方針を打ち出していた同社だが、ツイッターでは
「いやー、これはダメでしょ 逆に『女性はここまでしないといけない』って誤解しまっせ汗」
「こんなの読んで『私も大和証券に入ろう』って思う女子がどこにいるんだろう。『ここまでやって自然体だからな!できなきゃやめろ』って恫喝されてる気分になるよね」
「ルミネといい、大和証券といい、『輝く女性』っていう名目をもとに時代が逆行してるんじゃないかと思う」
と、記事が提示する働き方に疑問の声が相次いでいる。
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