PayPayの新しい働き方「成果を出せばいつどこでも」 オフィスに固定席なし、全国のWeWorkが利用可能に | キャリコネニュース
おかげさまで6周年 メルマガ読者数
65万人以上!

PayPayの新しい働き方「成果を出せばいつどこでも」 オフィスに固定席なし、全国のWeWorkが利用可能に

明るく開放感のあるPayPayの新オフィス(編集部撮影)

明るく開放感のあるPayPayの新オフィス(編集部撮影)

キャッシュレス決済サービスを運営するPayPayが9月末、事業拡大によりオフィス移転を果たした。新オフィスは東京・神谷町トラストタワー内にある、コミュニティ型ワークスペース「WeWork」の1フロアだ。

緊急事態宣言による在宅勤務を経て「ニューノーマル時代のオフィス」を構想。固定の席をなくし、全国のWeWorkを利用できるようにしつつ、社員自身が成果を上げやすい場所を自由に選べる人事制度への変更を行っている。

果たしてどのような経緯で、どこまで柔軟な制度にしているのか。現在の課題はどこにあり、どう解決しようとしているのか。先進的でユニークな取り組みについて、経営推進本部人事部部長の仙田厚毅さんに聞いた。(キャリコネニュース編集部)

緊急事態宣言後にオフィス設計を大幅変更

経営推進本部人事部部長の仙田厚毅さん

経営推進本部人事部部長の仙田厚毅さん

――新オフィスへの移転を決めたのはいつですか。

コロナ前です。ここ(神谷町トラストタワー内)に1.5フロアを借りる予定だったのですが、緊急事態宣言の後に1フロアへ変更し、在宅ワークを推奨して席数を4分の1に減らすことにしました。

その代わり、都内と横浜で8か所のWeWorkに当社専用スペースを設け、それ以外の地域でも全国のWeWorkを利用できる契約にしました。

これにより、自宅では業務に集中できない人などがサテライトオフィスとしてWeWorkの専用スペースを利用できるようになりました。地方の拠点に勤務している社員も、予約すればWeWorkを使えます。

当社は2018年に、ソフトバンクとヤフーとの共同出資で設立された会社ですが、人も事業も急拡大してオフィスがすぐ手狭になってしまいます。この2年で5つめのオフィスですが、すべてWeWorkを利用しています。

――新オフィスもコロナ対応になっているのでしょうか。

ソーシャルディスタンスに配慮しつつ業務に集中できる「デスク・ワーク」をはじめ、チームビルディングやセミナーに使う「ラーニング」、対面の議論やブレストに適した「アクティブ・コラボレーション」、偶発的な出会いを促す「コミュニティ&ソーシャル」という、独立した4つのゾーンを設けています。

いままでのように「あなたの部署はこの場所で、あなたの席はここです」といったものではなく、自由な使い方ができるオフィスです。このほか完全個室になる防音のブースもあり、私も朝からZoomの会議をしたり、ひとりで集中して仕事をしたりしていました。

成果さえ出せれば、いつどこで働いてもいい

窓の外には都心の風景が広がる。反対側には虎ノ門ヒルズも

窓の外には都心の風景が広がる。反対側には虎ノ門ヒルズも

――9月から導入した新しい働き方「WFA」(Work From Anywhere at Anytime)のコンセプトは、どういった経緯で生まれたのですか。

WFAとは「好きな場所と時間で自分の働き方を選べる」という意味ですが、働き方を選べるだけでなく成果を出すことが非常に重要になります。逆にいうと、成果さえ出せればいつどこで働いてもいいということです。

もともとPayPayは、顔を合わせて仕事をすることに重きを置く会社でした。創業メンバーには外国籍のメンバーもいて、直接会って議論しながら山のような意思決定を繰り返すことで、非常にスピード感をもって事業を拡大してきました。

ですから在宅勤務制度というものがそもそもなく(笑)、経営幹部は家で仕事をすることに対して強い懸念をもっていました。

それが緊急事態宣言でテレワークを実際にやってみたところ、「これは効率が上がる」と感じたわけです。会議をするにしても時間さえ合えば場所を取らなくていいし、「これまでよりもいいんじゃないの?」という声も出てきた。

そういったことを経験してみて、実績に対してどれくらい影響があるのかということを数字で見てみたところ、実はほとんど影響がなかった。そういうことを踏まえて、だとしたらこの働き方のほうが、それぞれの社員個人成果を上げるには適切なのではないか、ということになったのです。

――とすると、もう元の働き方には戻さないのですか。

最近コロナの第三波が来たと話題になっていますが、社員の安全を考えると、もう完全に振り切っていいのではないかと。この働き方自体は特に大きな業績上の懸念がないということで、後戻りはしないと決めています。

成果主義では「目標の設定」が最も重要

ソーシャルディスタンスに配慮しながら業務に集中できる「デスク・ワーク」

ソーシャルディスタンスに配慮しながら業務に集中できる「デスク・ワーク」

――成果さえ上げていれば、いつどこで働いてもいいとなると、いかに「成果」を評価して報いるかということが重要になってきますね。

当社はもともと完全成果主義、完全年俸制。賞与はなく年俸を上げることで報いていくプロ野球選手のような年俸制です。ソフトバンクグループの中でも、買収した海外企業以外では異端だと思います。

当社は日本で設立された会社ですが、事業の見据える先としてグローバルでやっていこうと考えています。グローバルで活躍できる人材が集まっており、200人弱のプロダクト本部(エンジニア部門)の半分以上は、世界30か国以上から集まる外国籍の社員です。

そういう人たちをきちんと評価できる制度を考えると、日本企業のような制度でいいのかと。もっとシンプルで透明性の高い、明快な成果主義制度のほうが、納得性が高い、受け入れられやすいと考えています。

――成果主義の評価には、何が最も重要になりますか。

目標の設定です。いかに自分の目標を、事前にKPI(指標)化するかというところが重要で、その達成度合いによって評価が決まります。目標は半期に一度見直しながら、より精緻にするように進めています。

ただしKPI化は、営業など数字が目に見える部署ではやりやすいのですが、会社はそういう仕事ばかりではありません。全社的な展開の途中ですが、いまは業務を数値で評価しにくい管理部門での試行を行っているところです。

――リモートワークを突き詰めると成果主義とともに、いわゆる「ジョブ型」雇用になっていくといわれます。

当社はもともとすべてキャリア採用で「このスキルをこのポジションですぐに活かせます」といった即戦力の人材を採用しており、まさにジョブ型です。

当社の公用語は日本語と英語なので、求人用の職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)も日本語と英語で公開しています。

新メンバーを迎え入れる「オンボーディング」が課題に

偶発的な出会いを促す「コミュニティ&ソーシャル」

偶発的な出会いを促す「コミュニティ&ソーシャル」

――「どこで働いてもいい」となると、オフィスの役割も変わりますね。

定期的に顔をあわせるときや、新しい付加価値を生むときには、オフィスは必要だと考えています。リーダーだけでキックオフをしたり、三密に注意しながら新オフィスで1日合宿をしたり、ということもやっています。

各部門でも、チームビルディングであるとか、エンゲージメント(協働意欲)を高めるとか、ディスカッションして意見交換するとか、タイミングを見ながら必要に応じて直接顔を合わせながらオフィスを使っています。

リモートでひとり成果を出すことと、人と人との協力関係から新しいものを生み出すことの両方を認めたうえで、WFAというコンセプトになっています。

――リモートで孤独を募らせる人がいる、という声も聞きますが。

当社でもWFAが始まってから入社する人がいて、特に外国からいらっしゃった方だと非常に孤独を感じるという方がいました。

現在は、オンボーディング(新しく入社したメンバーが組織に馴染めるようサポートすること)の際には、実際に周りの人と顔をあわせて紹介したり、最初の数日間はオフィスで一緒に働くことを通じて業務指導をしたり、といったことをルール化しています。

オンボーディングは非常に大事だと思いますね。入り口のところで、周りにどんな人がいて、自分の仕事はどうで、分からないときには誰に聞けばいいのか、といったことをきちんと教えてあげないと、本人はもやもやしてしまう。

スタートを切りやすい態勢を作ってあげるということを各部署でも工夫していますし、人事でもしくみを作ろうとしています。

社員の声を反映しながら制度をブラッシュアップ

同僚とランチやおやつを食べるためのスペースも

同僚とランチやおやつを食べるためのスペースも

――外国籍の社員が多いとのことですが、海外で働くことはできるのでしょうか。

海外在住でPayPayの社員として働くことは、税金の問題などのハードルがあって、なかなか難しいのが現状です。しかし、世界のどこにいてもPayPayで働けるという状態は、ぜひ目指したいと考えています。

現在、WFAをブラッシュアップした「WFO」(Work From Oversea at Anytime)という制度を始めるため社内で調整を行っています。外国籍の社員から、クリスマス休暇を取って帰国したい、帰国先で働きたいという声があり、年末年始を含む1か月程度は特例的に帰国し、休暇を取りながらWFAができるような仕組みを作っていく予定です。

もちろん、きちんと日本に戻って来られる目処のある国に限定するなど細かくルールを作っていますが、臨機応変に状況を見ながら運用していきます。

――クリスマス休暇は喜ばれるでしょうね。

ええ、かなり喜ばれています。WFAが社員にとっていかに働きやすいものになるのか、人事の制度やサポートをブラッシュアップしていかなければなりませんが、優秀な人材を採用するためにWFAの効果が広まっていると感じます。

例えば、東京に来るのが難しいけれども、自分の地元で生活をしながらPayPayで働きたいといった応募も増えています。

応募者に話を聞くと、今後コロナがどうなるか分からない中で、在宅勤務になったりオフィスへの出社を指示されたりということが今の会社で繰り返されるのなら、完全に在宅でできる仕事に切り替えたい、ということでした。

また、既婚女性の方が夫の転勤で引っ越しがあってもPayPayで働き続けたいとか、オフィスへの出勤が難しい障害者の方からの応募もありました。自分たちで想像もしていなかった効果が出ています。

求める人材像は「ひとりで自走できる人」

仕事を終えたらラウンジでコーヒーやビールが飲める

仕事を終えたらラウンジでコーヒーやビールが飲める

――WFA下での「求める人材像」はどのようなものになりますか。

私たちの求める人材像としては「ひとりで自走できる人」といえます。

PayPayというサービスを使って、みなさまに便利だと思っていただけるかということを、さらに拡大していくという目的の中で、自分自身がいったい何をすべきなのかを考え、問題を自分で発見し、自分で解決していける人です。

もちろん、自分だけで解決できない問題については、周りの人と協力して解決していける人。しかもそれをものすごいスピード感をもって行う。そういう行動が取れる人です。

特にプロダクトの部門においては、アジャイルでゼロから作り上げることができる方。マネジメントができるというだけではなく、自分で作れる、自走できる人材を求めています。

――外国籍の方を歓迎しているということでしょうか。

国籍など関係なくエンジニアのスキルで選考していくと、結果的に残られた方のうち半分以上が外国籍になったということです。あえてそういう方を採用しようとしているわけではありません。国籍の垣根を超え、良いプロダクトを作っていけるメンバーであれば大歓迎です。

関連記事

アーカイブ