一つのクレームから生まれた新たな企業の姿──ホテル清掃品質改善プロジェクト | キャリコネニュース
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一つのクレームから生まれた新たな企業の姿──ホテル清掃品質改善プロジェクト

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分譲マンション、ビル・商業施設等の建物管理などを行う大和ライフネクストで、ホテル管理の現場と営業を経験してきた杣川 みずき。クレームから始まった品質改善プロジェクトに携わる中で、成果とともに社内に大きな変化を生み出してきました。杣川が感じた変化と、個人として、組織として描く未来を語ります。【talentbookで読む】

客室清掃は皆で協力して取り組む、チームスポーツのような仕事

2021年現在、ホテルの客室清掃を担う部署で、営業を担当しています。新規ホテルでのサービス立ち上げのほか、既存のホテルへのリプレイス営業も行っています。

入社から7年目の今まで同じ仕事を続けてきましたが、入社した当初は今のホテルサポート部のような大きな組織ではなく、オフィスビルや商業施設の管理を行う部署の中の、ひとつのチームとしてスタートしました。その後、徐々に規模が大きくなり、グループができ、課ができて、今では部になりました。その変遷と共に過ごしてきた感じです。

客室清掃の仕事は変化が大きいと感じています。毎日決まった時間の中で仕上げる必要があり、時間との勝負の中、宿泊されるお客様が変わればニーズも変わってきます。常に新しいことやいろいろなことが起こるので、そこにやりがいを感じています。

私も入社当時、半年ほど現場スタッフとして皆と一緒に清掃を行っていました。今でもよく人手の足りない現場にヘルプで入っています。

そんな現場の仕事にはチームスポーツのような感覚があります(笑)。

日々戦場のようになっていて、朝から人手が足りない中でどうするのか、スポーツ(のポジション表)のようにホワイトボードを使って「何階は誰々さん担当」と割り振って、戦略を立てるんです。それで、1日が終わると「今日終わったね」とみんなで労い合います。

体力も必要ですが、皆でやっていることが積み重なっている仕事です。

私はもともとオーケストラをやっていて、100人ぐらいの規模でひとつの音楽をつくっていく経験を長く続けてきたので、近しいところがあるかもしれません。

全国の現場スタッフを含めると600名以上が同じ部門にいて、いろいろな人とつながれます。課のメンバーとも皆で「現場が楽になるにはどうしたらいいだろう」「じゃあ次はこうしよう」と、どんどん新しいことを考えながらやっています。皆で取り組んでいけるのがおもしろく、やりがいがあって気に入っています。

1件のクレームから始まったプロジェクト。地道な調査から改善策を生む

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髪の毛が落ちている、アメニティが足りないといった客室清掃の不備を減らす品質改善プロジェクトに、2016年から1年がかりで取り組みました。

そのプロジェクトは、お客様(当社へ清掃を委託されているホテル様)から1件のクレームを頂いたことがきっかけで始まりました。

私たちは全国のホテルで清掃業務を受託していますが、事務所のメンバーは主に東京や大阪にいるほか、仙台や博多などの都市にひとりずつ配属されています。当初は地方のホテルで不備が起きても、各エリアの事務所メンバーや現場の責任者が対応を行うにとどまり、それを共有して次に活かす体制ができていませんでした。

お客様からすれば、なぜ同じ不備が繰り返し起こるのか、対策はどうなっているのか、なぜ組織内で共有できていないのか、という気持ちがあったと思います。

そこでまず、全国の一つひとつのホテルから日々どのような不備が何件起きているのかを集計していきました。さらに、その部屋を担当したスタッフの年齢や社歴、担当している部屋数や何室目に不備が起こったのかをまとめていきました。

そこから、社歴が関係あるのか、何室も担当した後で疲れていたのかなど、いろいろな可能性から原因を探る地道な活動を半年ぐらいかけて行いました。

そして、集約した結果を現場ごとにグラフ化して、全国の現場への配信を始めました。その結果、それまではそれぞれの責任者が一人で頑張る面がありましたが、本部から「今日の不備は全国でこれくらいでした」「このホテルは今月1件も不備が出ていません」などの情報が毎日届くようになって、「うちも頑張ろう」というモチベーションアップや連帯感につながりました。

いろいろなデータ収集をして、不備の原因を繰り返し検証したり、膨大な資料をつくったりするのは初めての経験でした。ものすごく大変で、激動の1年でした。

それでも、最初にクレームを頂いたお客様の社長へのプレゼンまで参加させていただいて、改善策のご提案をした際に「こういうのを待っていたんだよ」と言っていただけたときは、本当に1年かけてやってきた甲斐があったと感じましたね。

プロジェクトが目に見える成果を生み、新たな顧客の開拓へ

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品質改善プロジェクトの成果は、数字にも大きく表れました。

私たちは「不備率(不備の起きた割合)」を指標にしていて、プロジェクトでは「0.1%(1000室に対して1件)以内」を目指してスタートしました。当初は約0.2%だったのが、2020年11月度には0.09%を達成し、年間を通しても毎月0.09%~0.14%の間に収まるようになってきました。

このプロジェクトをきっかけに、何が課題なのか情報を集めることによって、それをもとに皆それぞれが施策を考えられるようにもなりました。データ配信以外にも、道具を統一したり、現場の教育用にDVDを撮って動画で見せたりといろいろなことをやりました。

現場にも、漠然と「不備を無くそうね」と言うよりも「先月は5件だったから、今月は3件にしよう」と数字を目標にするほうが伝わりやすく、全体の意識統一にもつながっていると思います。

そして、こうしたプロジェクトから始まった仕組みが当社のノウハウになって、新規受託の営業にもつながっています。

データを基にした裏付けの資料をお出しできるので、お客様にもご納得いただけるよう丁寧にご説明できます。自分から「自慢のようで恐縮ですが、私たちは本当に真摯に取り組んでいます」と、ここまでデータを取って調べていることをお伝えすると、「そういう会社さんはなかなか無いですね」と言っていただくことがありますね。それは当社の強みで、他社と違うところだと思います。

当初のお客様は同じグループ会社のホテル様が中心だったのですが、今ではグループ外ホテル様の比率が約6割と、かなり増えてきました。

相手の立場で考えることを大切に。個人と組織としての未来を描く

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仕事をしている中で大切にしているのは、相手の立場に立って考えることです。

時には、お客様からかなり難しいご要望をいただくことがあります。そうしたときに、できない場合でも最初から「絶対にできない」と言わず、なるべくやれる方法を考えて「ここまで考えたのですが、やはり無理でした」とお話を持っていくのを、常に意識しています。

というのも、自分が逆の立場だったときに、その方が納得できるからです。実際に「他の会社さんのときは、そういうアイデアは出てこなかったんだ」と言っていただくこともありました。

また、こうした相手の立場に立った考え方は、他の場面でも活きています。たとえば、現場が大変な状況であっても、事業をしていく上ではどうしても数字を追う必要があります。そんなときも、机上で出た数字をそのまま現場に流すのではなく、なるべく現場の立場に立って気遣いながら「まずここまでやってみよう」と落とし込んでいこうと気を付けています。

こうした考えのもとにあるのは、新入社員のときに経験した研修です。

「ひっくるめて言うと、相手への思いやりがマナーだ」と教わったのがとても印象に残っていました。常に相手からしたらどうかという思いやりを持って、社内でも社外でも、言葉一つでもメールの一文でも、少しねぎらいの言葉を入れることは日頃から意識しています。

7年この仕事をやってきて、もちろん忙しいし大変なこともあるのですが、涼しい顔をしているとよく言われるんです(笑)。

本当につらいときだってありますし、辞めたいと思ったこともあったのですが、なにかが嫌だからという理由では辞めたくないんですよね。負けず嫌いなところがあるのかもしれません。

「もう少しやってみよう。少し耐えたら何かあるかもしれない」と考えて踏ん張ってきました。

ずっと同じ部署にいて変遷を見てきたからこそ、つらい時代を経て、また次に伸びてくるのを肌で感じているんです。大変なときでも「今は沈むときなんだ。あとは上がるしかない」と考えて、常に「次は何があるんだろう」 と、期待や興味を持っています。

ようやく、グループ外のホテル様にも私たちのホテル清掃を積極的に売り込む段階に来ました。今後はさらにブランド化されて、「大和ライフネクストに頼めば安心だ」と思っていただけるようにするのが、一つの目標です。

個人としては、今の仕事を気に入っているので、その中でステップアップしていきたいです。将来的にはチームのマネージャーなどの立場で、これまでの経験を後輩たちに伝えていきたいと思っています。

個人として、組織としての目標に向かって、これからも皆で力を合わせて一歩一歩、前に進んでいきます。

大和ライフネクスト株式会社

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