「副業解禁時代」のサラリーマンが手を出してはいけないこと:ビジネスデザイナー・細野真悟さんに聞く「小さな事業」の作り方 (1) | キャリコネニュース
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「副業解禁時代」のサラリーマンが手を出してはいけないこと:ビジネスデザイナー・細野真悟さんに聞く「小さな事業」の作り方 (1)

ビジネスデザイナーの細野真悟さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

ビジネスデザイナーの細野真悟さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

リクナビNEXT編集長やリクルートキャリア執行役員を経て、現在はフリーのビジネスデザイナーとして活動する細野真悟さん。自らの挫折経験を踏まえ、新しいビジネスを作ろうとする人の実践型コミュニティ「Fukusen(フクセン)」を運営している。

インタビューの1回目は、サラリーマンの「副業」について。フリーランスとしての独立できる”スキルワーカー”を理想化する風潮に、細野さんは待ったをかける。どんな問題があるのか。聞き手は株式会社グローバルウェイ取締役の根本勇矢。(構成:キャリコネニュース編集部)

フリーランスは意外と「スキル」で戦えない?

――最近「副業解禁」をする会社が増えていますが、具体的に何をしようかと考えると迷います。いままで身につけた専門スキルを活かして、フリーランスとして仕事を取るといっても、責任や負担は小さくないし、会社員との両立は容易ではない。

細野:そもそも「スキルワーカーは安定しているか?」と言われると、実はそんなこともないですよね。スキルって時間が経つと陳腐化しちゃうし、競争原理に思いっきりさらされる。

――営業力や細かな気配りなど中核スキル以外のいろんな力が必要で、ライターもエンジニアも独立すると「全然専門スキルで戦ってないんだけど?」となりがちです。

細野:一個のスキルを極めて、同じスキルを持っている人と競い合い、単価を叩かれながら食えるようになるのは相当大変なことです。それよりも、一個の「小さな事業」を作る方が楽なのでは、と思ってるんです。

年収400万円で手取り300万円くらいのフリーランスは多いですが、そこを目指すより「事業」を作る方が、実は理にかなっているのではないかと。大手企業が参入してこないニッチな領域で、自分の好きとか知ってる分野を活かしたスモール・ビジネスって、すごく安定していると思うんですよね。競争にもさらされないし。

――そういう「事業」が、サラリーマンの本業の横で回っているのは理想ですけど。

細野:僕は、サラリーマンである間に「事業」を仕込んでおくべきだと思っているんです。いきなり「辞めました」とか「先に会社作りました」とかじゃなくて、サラリーマンでメインの収入源があるからこそ、チャレンジができる。

クライアントに時間を売るスキルワーカーは、副業としてやるのは意外と難しい。でも事業作りは、自分のペースで仕込める。会社員が時間に縛られず、本業があるから焦らずに準備できる副業スタイルが、もっとメジャーになるべきだと思うんです。

大事なのは「自分にとって十分な小ささ」

ローンディールの初期メンバーとのミーティングに参加する細野さん

ローンディールの初期メンバーとのミーティングに参加する細野さん

――考えてみれば、脱サラもフリーランスも副業も起業もリスクだらけです。細野さんが提唱する概念は何と呼べばいいのでしょうか。

細野:近いのは「週末起業」かな。でもそれだと週末にしかやらない感じを醸し出しちゃっているところが違うけど。最近の流行りだと「ひとり起業」とか? でも僕、起業っていう言葉がすごく嫌いなんですよね。会社という箱を作っても意味がない。

「サイドビジネス」も日本語に訳すと副業に戻っちゃうので、あんまりピンと来ない。起業のような「立ち上げようとする行為」を言うのか、ビジネスが回っている「立ち上がった状態」を言った方がいいのか。

――ロバート・キヨサキが『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』(筑摩書房)で提唱した「ビジネス・オーナー」に通じる気もします。

細野:そう、「オーナー」なんですよね、最終的な状態としたら。自分がオーナーになっていて、自分があくせく働かなくても、スモール・ビジネスが回っている状態を作ろう、みたいな。ゴールでいうと、そっちを言うといいんだな。

僕、「スモール・グッド」っていう言葉が好きで、「自分にとって十分な小ささ」が大事だと思っているんです。競争にさらされない小ささ。だから「スモール・グッド・ビジネスのオーナー」というのが、概念的に一番近いですね。

個人が自分の人生を主体として考えるキャリアの選択肢が、日本にはまだありません。結局は雇われ人としてどう生きるかを考えるしかなく、体よく使われる兵士になるためのノウハウが出回っているだけ。

一方で、起業というとすぐIPO(株式公開)だとかユニコーン(高評価額の未上場企業)だとか、ひと儲けするとか売り逃げるとかになるけど、そういうことじゃない。十分ないい小ささで、自分が幸せに生きるために必要な、ちゃんと価値を提供しながら持続するビジネスで、それが自分のやりたいことだったらいいなと。

自分が好きなことじゃないと、続かないし幸せじゃない

ビジネスパーソンのキャリア選択肢と「can」「will」「must」の関係(細野さん作成)

ビジネスパーソンのキャリア選択肢と「can」「will」「must」の関係(細野さん作成)

――ミドルのセカンドキャリアについても、いろんな本が出ています。そういったものと細野さんの考えとの違いってなんですか。

細野:これまでのキャリア本は、やっぱりスキルワーカー的な色が抜けてないと思うんですよね。俺がすべて回す「株式会社 俺」みたいな。

市場が見えていて、儲ける仕組みづくりをコツコツやれば、自分が好きなことじゃなくても回っていくかもしれないけど、やりたくないのに小金儲けできるのはグッドじゃない。ただのスモール・ビジネス。

自分がやっていて好きだとか、「自分だから」みたいな色がないと、幸せじゃないし続かない。とはいえ、俺がすべて回すのもツライ。俺が回すのではなくて、仕組み化するのがスモール・グッド・ビジネスのオーナー、って感じはしますね。「俺じゃなきゃダメ」ではないんだけど、「俺がやりたい」っていうくらいの。

――それが可能な領域って、いまだとインターネットビジネスになりますか。

細野:そうとは限らないんですよ。もちろん、これから起業するのにネットを使わないことはありえない。でも、ツールとしては使うけど、ネットビジネスに限るわけではない。

下手したら利益率1%のビジネスとか市場にはあるわけで、そうすると300万円の手取りのために3億円の売り上げ立てないとみたいなことになる(笑)。戦う立地と、自分のやりたいことをどの領域でどうビジネス化するかさえ決められたら、可能性があると僕は思っています。

ちょっと抽象的な話が続いたので、次は「スモール・グッド・ビジネス」のアイデアについて、事例も含めてもう少し具体的な話をしましょうか。【2回目以降のインタビュー記事はこちら】

※本記事は2月3日に掲載した取材記事となります。7月よりブランドチャンネル設立に伴い、カテゴリーを移動しておりますが、本記事はPR記事ではございません。

細野真悟(ほその・しんご):リクナビNEXT編集長、リクルートキャリア執行役員、リクルートグループの子会社の社外取締役を歴任。現在は、企業間レンタル移籍プラットフォームのローンディールのCSOを務めるかたわら、音楽コラボアプリを運営するnana musicの戦略顧問、および共済型ビジネス実践ファーム「Fukusen(フクセン)」を主宰するビジネスデザイナーとして活躍中。

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細野さんへのビジネス壁打ちの相談は「タイムチケット」まで。

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