入社2年目で大学との共同研究に参加。再生・細胞医薬分野で挑戦を続ける女性研究者
大学院では細胞分化の研究に勤しみ、博士号を取得後、新卒で2017年4月に大日本住友製薬に入社した池田 愛。2021年現在、再生・細胞医薬分野の研究員として、大学との共同研究を行っています。基礎研究に加え、安全性と安定した品質が求められる研究職。彼女の再生医療への想い、そしてこれから目指す姿を語ります。【talentbookで読む】
「人の役に立つ仕事をしたい」その想いを実現させるため、再生医療の世界へ
私は大学の学部時代には理学部に所属し、分子遺伝学という分野で生物学の基礎を学びました。再生医療に興味を持つようになったきっかけは、高校時代に受けた生物の授業での発生学の実験です。
そこから生物学をもっと知りたいと思うようになり、大学では基礎の生物学を学びました。大学院に進むときには、発生学や再生学への興味から、細胞分化の研究を行っている研究室へ移り、ES細胞から神経へと誘導するときに起こる現象を研究しました。
その間、魅力的な研究者の方にたくさん出会いました。周りの友人は基礎研究者を目指して勉強会を開き、研究のおもしろさや、熱い想いを共有していました。また、当時、理化学研究所の発生・再生化学研究センターを訪問する授業があったのですが、最先端の研究に携わる研究者の方々はキラキラと輝いていて、アカデミアの世界にも憧れを感じました。
大学院卒業後の進路選択は、とても迷いましたね。大学に残る道も考えましたが、将来何をしていきたいかと考えたときに、「私は人の役に立つ仕事をしたい」と思ったんです。大学院で研究してきたことを一番役立てられて、自分が一番ワクワクする分野は何かと考えると、やはり再生医療でした。
就職活動が始まる前に判断を迷っていると、大学の教授から「池田さんは大学で研究を続けるよりも、会社で研究する方が向いているんじゃないかな」というアドバイスをいただいたことがありました。大学での研究は個人プレーで進める側面が強いですが、チームで一丸となり、同じ目標に向かって仕事を進める企業研究の方が、私には向いていると感じました。
就職活動では再生医療に関わっている会社を軸に、製薬会社に限らず医療機器メーカーなども広く見ていました。その中で大日本住友製薬は、再生医療に力を入れていること、基礎研究から携わることができ、理化学研究所やさまざまな大学など最先端の研究を行うアカデミアとも協同して研究を進めている点が魅力的でした。
採用担当(板倉)と初めてお話をしたときは、もともと研究をされていたということもあり、とても話しやすく、1人1人の特性をよく見てくれていると感じました。就活の時に再生医療の仕事をしたいという想いも伝え、自分の将来のことも相談できる印象を受けたので、それも安心感につながりました。
企業研究は成功だけじゃない。課題解決に向かって模索し続ける姿勢を学ぶ
入社後約1カ月間の研修をしたあとは、再生・細胞医薬神戸センターに配属され、再生医療の産業化を見据えた基礎研究を行うグループに所属しました。OJTを基本として、先輩方にサポートをいただきながら仕事を学ぶスタイルでした。
大学での研究と入社後の研究は、分野は近いものの、企業では基礎研究に加え、良い品質の細胞を安定的に供給するにはどうしたら良いか、という製造の観点での研究も重要になります。
製造という場で安定的に毎回同じ品質の細胞をつくるには、精度を格段に上げなければいけません。また、研究室よりも大量の細胞を用意する必要がありますが、培養の規模を上げるだけで細胞の品質が落ちることもあります。
他社に先駆けて再生医療の産業化を進めている当社には、安定的に同じ品質の細胞を患者様に届ける責務があります。安全性と品質をいかにして守っていくかがとても重要です。
再生医療は前例が少ないため、それぞれの課題に対して自ら解決策を模索していく必要があります。
私をサポートしてくれていた先輩は全製造工程の中でも要となる難しいステップを担当されていたのですが、一つひとつの課題に向き合い、解決に向けて粘り強く努力をされていました。その姿をそばで見ていて感銘を受け、仕事に対する姿勢やあり方を学ばせていただきました。
企業研究では成功だけではなく、上手くいかなかった原因を突き止め、それが起こらないようにどう対処するかも重要になります。
再生医療は新しい分野で前例も少ない上に、それぞれの課題の解決方法として決まった答えがない場合も多く、研究者の知識や機転、粘り強さがダイレクトに結果に表れます。
先輩のようになりたいという気持ちは今もありますし、自分たちのデータは製品に直接つながるので、やりがいと責任を感じています。
一方で、限られた時間の中でゴールを達成しないといけない仕事もあるので、どのように進めたら良いか悩んだこともありました。
自分ひとりでできる仕事の量は限られていますし、人それぞれに得意なこと苦手なことは違います。いかに周りの人の協力をいただいて仕事を進めていくかが大切だと感じています。
入社2年目で得た、成長への切符
2019年4月に、共同研究のため大学の研究室へと派遣されました。アカデミアとの共同研究は、大日本住友製薬が力を入れているところで、私の部署からも多くの若手社員がさまざまな大学に派遣されて活躍しています。私が声をかけていただいたのは入社二年目のとき。驚きと同時に、成長につながる良い機会だとありがたく感じ、チャレンジすることを決めました。
共同研究では、神経変性疾患の患者さんに対し、iPS細胞から作成した神経細胞で運動障害を改善するための研究に取り組んでいます。基礎研究の段階から、臨床に応用していくための研究をしています。
新しい治療法でチャレンジングではありますが、純粋な基礎研究で答えがまだ見つかっていない課題に対してコンセプトから検証することに、ワクワクする気持ちで取り組んでいます。
大学の研究と企業研究の違いについて、大学はどちらかというと上流を、企業は下流の研究を担当する傾向にあります。しかし当社の再生・細胞医療分野は、初期の段階から大学と強く連携して研究を進めているので、明確な違いや切り分けをあまり感じません。
治療のコンセプトを検証する基礎研究から、臨床に応用するためのさまざまな検討、安定的な生産をするための産業化研究まで、密に意見交換をしながら連携して進めています。
共同研究先の研究室には、医師の先生方が大勢いらっしゃいます。皆さん深い医学知識をお持ちで、また患者さんに医療を施す立場から物事を見ていらっしゃるので、勉強になることばかりです。
その中で、これまでの自分の経験が活かせたこともありました。
私は入社してから2年間、シングルセル遺伝子発現解析という実験手法を部署に取り入れる仕事をし、その解析手法を検討していました。その技術を現在の共同研究に取り入れることで、新たな側面から研究にアプローチすることができるようになりました。先生方も興味をもってくれて、論文にも取り入れていただけたことはとても嬉しかったですね。
現在やっているのは初期の萌芽的内容ではありますが、入社後に製造工程の研究に関わってきたからこそ、これから進む先や一連の流れがイメージできるようになっていることを今実感しています。先生方に信頼を置いていただけるように、これからも努力していきます。
感謝の気持ちを大切にし、新たな医療の実現へ
仕事に取り組む上で大切にしているのは、与えられた環境や一緒に仕事を進めてくださる方へ、感謝の気持ちを大切にすることです。
ひとりでできることは僅かですし、私には知識も経験もまだまだ足りません。有難いことに、私の周りにはロールモデルになるような方や、相談できる方がたくさんいます。和気あいあいと親しみやすく、相談しやすい環境があります。
一緒に仕事をしてくださる方、支えてくださる方、アドバイスを下さる方に日々感謝して、自分の役目を果たしていきたいと思っています。そして、周りの方からも気軽に頼りにしていただけるような存在になっていきたいです。
また、業務面としては、自分が携わっている再生医療製品を、患者さんに喜んでいただける医療として届けたいという想いがあります。
最近、私の尊敬している先生が脳梗塞になられました。生き生きとされていた先生が不自由にされているのを見て、何か力になりたいと思いました。身内の方に届けるような気持ちで、多くの方に喜んでもらえるような薬づくりに携わることができたら嬉しいことだと思います。
今は小さなテーマリーダーのような役割を任せていただいていて、まだまだ知識が足りない部分が沢山あります。経験したことの無いような医学的な知識ももっと必要だと思っていますし、開発のことや知財のことや製造のことなど沢山まだまだ学んでいかなければいけないことがあると思うので、継続して周りの方からも自分でも学んでいきたいと思っています。
一つひとつの課題に真摯に向き合いながら、皆で協力して、新しい医療の実現に向けて取り組んでいきたいです。
大日本住友製薬株式会社
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