もし思わぬ事故で自分が他人に損害を与えてしまったら――。大分市で登校中の13歳の女子中学生(当時)にぶつかられた79歳(同)の女性が、転倒したけがで後遺症が残ったなどとして賠償を求めた訴訟の判決で、大分地裁が中学生に約790万円の支払いを命じた。毎日新聞などが3月16日に報じた。
女子中学生側は「普通の速さで歩いていた」と、過失はなかった主張をしていたが認められなかった。何気ない日常を過ごしていたら、思わぬ形で加害者になってしまった形だ。賠償額も重い。
今回の判決について、服部啓法律事務所の深澤諭史弁護士は、キャリコネニュースの取材に対して「なんでとんでもない賠償額が命じられたのかと印象を持たれるかもしれませんが、民事の損害賠償は基本的に被害の大小で決まります」と説明する。
民事訴訟では「賠償=埋め合わせ」 判決後に和解が成立するケースも
損害賠償の例として、10万円の壺を挙げる。
「例えばその壺を割ってしまったとして、それが嫌がらせでも、間違えて割ってしまったとしても、被害の大小は一緒ですよね。刑事とは異なり、民事の損害賠償は被害に比例することになります」
民事の場合、行為の悪質性は考慮されない。深澤弁護士は「賠償=埋め合わせ」と概念を説明し、今回の支払い命令に関しても「そうなりますよね」と妥当な印象を抱いたとした。
今回のように、損害を与えた子どもに賠償金の支払いが命じられることは「普通によくあること」とする。ただ、子どもが他人に迷惑をかけた場合には、話し合いの末に判決まで行かずに和解で終わるケースも多いという。
「中学生に790万円は払えるわけがありません。判決後に和解が成立するケースもあり、減額する代わりに親と一緒に支払うこともあります」
飼い犬が人を噛んだ、旅先でホテルの客室を水浸しになった……などの事態にも備える
今回の報道を受け、深澤弁護士は17日にツイッターで、
「数年前からずっといっていますが、個人賠償責任保険に入りましょう。月額数百円で、ちょっとしたミスでの賠償責任や、そのための弁護士費用を補償してくれます」
などと情報発信していた。
個人賠償責任保険がカバーする内容は契約約款によるが、一般的には自動車保険と同様で、賠償金額のほか、弁護士費用や示談代行などを含むものもあるという。
「日常生活における損害をカバーするものです。旅先のホテルで湯を止めるのを忘れて、床を水浸しにしてしまったとか、飼い犬が他人を?んじゃったりとか」
クレジットカードによっては自動付帯にものもある。深澤弁護士が法律相談を受ける際にも、まず最初に「クレジットカードを見せてください」と話すという。一般に、掛け金は月500円ほどで、サービスとしてあるのでできる限り入った方がいいという。補償上限については1事故あたり1億円から3億円が多く、”もしも”のときの助けになるだろう。
しかし、深澤弁護士は「相談に来られる方のうち、実際に個人賠償責任保険に入っているのは1~2割程度」と明かす。
「示談代行をやってくれるのも大きなポイントです。自動車保険をイメージされる方が多いですが、金額は非常に安く済むので、小さなお子さんや旅行されるシニア層の方はぜひ入ってください」
と呼び掛けた。