至福のひと皿も、満足のおもてなしも、メンバーの幸せも求めるシェフ兼マネージャー | キャリコネニュース
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至福のひと皿も、満足のおもてなしも、メンバーの幸せも求めるシェフ兼マネージャー

ポジティブドリームパーソンズのシェフ・古庄 真和は、学生時代にボクシングで鍛えた体格のイメージと反して温和で真摯な姿勢が印象的だ。その勤勉さから社内では歴代最年少でシェフに昇格し、さらにチームを育成・統括するユニットマネージャーも担っている。一目置かれる彼のルーツやキャリア、将来の夢を聞いた。【talentbookで読む】

母への感謝と外食での感動から料理人に。ポリシーは「生産者に会うこと」

古庄が料理人の道を意識したのは中学生のころ。それまで厨房の一切を担ってきた母親が病気で寝込み、戸惑いながら包丁を手にする父を見たことがきっかけだ。

古庄 「我が家は外食の機会はほとんどなく、レストランに行くのは誕生日やクリスマスのときくらいだったんです。そこで食べる特別な料理に対する感動もありましたが、当然のように毎日食事を作ってくれる母に対して、そのとき感謝の気持ちが湧いてきました」

以降は母親を手伝うようになり、料理の楽しさを覚えていった古庄。さらに表現にもこだわるようになり、「食」と「デザイン」の双方を学べる高校に入学。夢はぶれず、その後は調理の専門学校に進んだ。

古庄 「料理は“形あるもの”で、食事が終わればなくなってしまいます。でも、記憶には残り続ける。家族や友人が僕の料理を喜んでくれたこと、そして彼らの思い出になることが幸せで、『この道に進もう』と決意しました」

そんな古庄のポリシーは「自らの足で生産者を訪ねること」。生産者の声を聞き、食材を自分の目で見てメニューを考えるスタイルを長く続けている。

この原点にあるのは、2010年、同じ九州の宮崎県で起きた口蹄疫(こうていえき)問題だ。当時福岡のシェフ達と宮崎を訪れた古庄は、畜産農家が大事に愛情を込めて育てた牛が殺処分となり目の前で失うこと、涙を流す生産者の姿を目の当たりにしたのだ。

古庄 「直接生産者さんに会うと、『僕らに負けない熱意を持っているんだ』と、強く心を揺さぶられます。生産者はいい食材を作るのに気候や土地、水や肥料からこだわり、毎日毎日食材と向き合っているし、出荷先でどう使われるのかを楽しみで気にかけている方も多い。そんな方たちの熱い想いを、僕たち料理人が必死にならないといけないし、それが使命だと感じますね。

生産者の熱い想いを乗せた食材と料理人の熱い想いを融合させ、料理へと表現する、そしてお客様が笑顔で喜んでくれる。これからも食材選びや交流は大事にしていきたいです」

自分の力だけでは成しえない「チームでレストランをつくる」という視点

専門学校卒業後、古庄はフレンチを学ぼうと約10年にわたりふたつのホテルに勤務。職人気質の厳しい職場で料理と向き合う中、やがて勤務先がPDPに統合されたのだ。

辞めるも続けるも選択できたが、新会社の説明会に参加し、顧客と社員を大切にする姿勢に心惹かれたという。また、PDPでは努力していくことで若くてもいろいろな経験ができることも知った。

古庄 「中でも『感動』というキーワードが印象的でした。料理やサービスはお客様の心を動かす手段ですが『おいしかった、の先を目指そう』という熱意がグッと刺さりましたね。僕自身も食べた人の記憶に残る料理を目指していたので、その理念に深く共感して入社を決めたのです」

新しいキャリアは「ザ マーカススクエア 福岡」から。レストラン、婚礼、宴会の3つがある店舗で古庄はチーフ職も任され、チームと一緒に奮闘していた。

そんななか、新店舗としてオープンする「エッセン タパス&グリル」と「ザ オールデイラウンジ」のレストラン2店舗を統括する異動の話が……。

古庄 「『ザ マーカススクエア 福岡』のメンバーは家族同様で、異動には寂しさもありました。でも、挑戦することで経験し、失敗することから学びはあると思ってずっとやってきた。自分が移ればチームはさらなる経験を積むことができるし、何より僕自身も成長するべきだと。明るい未来も想像していました」

異動先ではユニットマネージャーとなり、これまで得たノウハウをマネージャーとして実践しようと意気込んでいた。しかし、店舗立ち上げの慌ただしさの中で、なかなかワンチームを築けなかったという。ときには業務を“こなすこと”に追われて視野が狭くなり、コミュニケーションエラーが続いた。

古庄 「マネジメントする人数が一気に増えたこともあり、前のチームで大切にしていた『料理やサービスの価値は自らの価値にもつながる』という思いを皆に伝えきれていませんでした。先輩たちからいろんなアドバイスをいただいたことで、なんとか軌道修正できましたね。

そこからは、『チームをどう築き上げるか』という視点が強くなりました。僕だけが料理のレベルを上げるとか、僕の想いをただメンバーに伝えるとかではなく、大切なのは『また一つ強いチームを生み出し、レストランはみんなでつくっていくものだ』と気付いたのです」

レストランの味・雰囲気を自宅に届けたい──コロナ禍での商品開発

新店の立ち上げを経てシェフ・ユニットマネージャーの経験を積んだ古庄は、「グラナダスィート 福岡(現 グラナダスィート オン ア ターブル)」へ異動。「さらなる経験をして成長してほしい」という会社からの要望を今回は素直に受け取った。

古庄 「前回の異動で、失敗やうまくいかなかった経験を乗り越え、成長できたと感じていました。異動を断ってずっと同じ店にいたら、料理の腕だけを鍛錬する存在で終わっていたかもしれません。また新しい環境でレストラン、婚礼、宴会の3つを行う環境にチャレンジできることが嬉しくて、ワクワクして引き受けました」

異動してからは、何よりもコロナ禍でのメニュー開発が心に残っているという。レストランの客足は途絶え、にぎやかだった中洲からも人が消えた状況で、古庄はこれからの飲食店のあり方、自分たちのやるべきことを模索した。

古庄 「自分たちにできることとお客様が求めていることを手探りで考え、当レストランでしか味わえない料理をデリバリーやテイクアウトで提供しよう、と商品開発にチャレンジしました。とにかく試行錯誤で市場や店舗分析をしながらアクションと検証を繰り返す日々です。まずは親しいお客様に連絡し、ご注文を受けたらメンバーが直接届け、感想を聞かせてもらうという地道な一歩を積み重ねました」

このサービスは好評を博し、各種メディアでも取り上げられ認知度・評価をあげていった。メニューもどんどんブラッシュアップされ、50回もリピートしてくれる顧客もいる。商品開発の行程は、実店舗をオープンさせるのに似たタフで刺激的な感覚だった。

古庄 「商品開発で軸としたのは、『オン ア ターブル』でしかできない体験をテイクアウト、デリバリーで打ち出すこと。レストランはただ食事をするだけではなくて、お祝いや気晴らしをする場でもあると思うのです。そんな気分を家でも味わってもらえるように、当店ならではのテイクアウト&デリバリーを目指しました」

「おいしかった」の先へ。メンバーと「お客様に喜ばれる幸せ」を共有する

料理の楽しさを知った少年時代、飲食業界に入って修行に励んだ日々、PDPで強いチームを作りあげた経験……。これらを経て、古庄は「これからもレストランとしての価値を追求したい」と語る。

古庄 「レストランとして成功するためにはPDPのレストラン事業のポリシーにもありますが、だだ『おいしかった』で終わらず、お客様に『また来たい』『誰かに紹介したい』あるいは『特別な場所だから秘密にしたい』と思っていただけるかが大切です。そうすれば自然と評価やリピート率に繋がるので、何をすべきか常々メンバーと考えています。個人的には、全国各地に社内の素晴らしいシェフ達がいるので、生産者と料理人を融合させコラボレートをした新しい企画を行うことにも挑戦したいです。

たとえば、僕たち九州のシェフと生産者、東北のシェフと生産者が手を取り合えば、おもしろいひと皿ができると思うのです。その想いをお客様に伝えるサービスマンとも一緒に。実際、九州でいえば宮崎の方々はいろいろなイベントを一緒に開催してくれます。農家は横のつながりも広く『今ならどこの誰が作っている、この野菜がおいしいよ』と教えてくれることもあるのです。こうした生産者と僕らの思いを重ね合わせて、広く感動を届けたい。かしこまらず、戦略を練りすぎず、各自の熱意で動かせたらすばらしいな、と」

一緒に働くメンバーに対しては、それぞれの目標を持って仕事に向き合って欲しいと語る古庄。

古庄 「広い視野を持ち、自分なりの答えを見つけて『だから頑張るんだ』という意識を持てばより良い未来を築けると思っています。とはいえ、目標を見失うこともあります。そんなときは敢えて足を止める、つまり原点に立ち返ること。そして気軽にいつでも相談してほしいですね。僕にもまだまだ足りない部分はありますので、共に成長していけたらいいですね。大前提として『お客様に喜んでもらうことが幸せ』なのはみんな同じはずです。なので、そこを一緒に追求していきたいと思います」

プロの料理人としてはもちろん、今ではサービスとキッチン部門の2軸で店舗を率いるマネージャーとしても研鑽を積む古庄。PDPの新たなリーダー像を作り上げ、これからも謙虚に、真摯にチャレンジを続けていく。

株式会社ポジティブドリームパーソンズ

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