現場にもやさしいカーボンニュートラルのために。勇気を出して踏み入れたエンジニアの道
カーボンニュートラルの実現に向けて、熱マネジメントによる“エコ工場”の実現を目指す山本 悠加さん。元々は文系の実務職として活躍されていましたが、「もっと製品や技術に関わりたい」という熱い想いを胸に、今はエンジニアの仕事に挑戦しています。常に新しい世界へ挑戦し続ける山本さんに、心の内を尋ねました。【talentbookで読む】
地球環境にも、現場環境にも、どちらにもやさしい工場をつくりたい
──山本さん、本日はよろしくお願いします。さっそくですが、カーボンニュートラルな工場づくりのためのプロジェクトに参画されているとお聞きしました。山本さんは、どういった課題解決に取り組まれているのでしょうか?
山本 「一つは、現場の人たちが快適に働くための環境づくりです。工場って、夏場だと40度近くまで気温が上がるんですよ。私も定期的に工場に行くのですが、夏はほんとうに暑くて、1~2時間いたらぐったり疲れちゃうくらい……」
──夏の工場はつらい暑さですよね……。
山本 「でも、その環境下で一日中仕事をしている人たちがいるんですよね。そんな大変な思いをして製品を作ってくれている人たちが、少しでも快適に働けるといいなと常々思っていて。私は、そういう方達を助けたいんです」
──現場の方にとってはすごく嬉しい話ですね!良い環境で働けることで、より良いものが作れますもんね。
山本 「はい。ただ、工場を涼しくするだけだったら冷房を強力にかければいいという話なんですけど、それだとカーボンニュートラルに逆行してしまいます。“快適性”と“エコ”を両立させるということが、私たちのミッションなんです」
──なるほど。相反する課題のように思えるのですが、どのように解決しようとしているのですか?
山本 「工場全体の熱をマネジメントすることによって、達成しようとしています。現状、かなりの熱エネルギーが捨てられている状況で、たとえばガスバーナーから出た700度くらいの熱が、そのまま設備の壁を伝って工場内にモワッと放熱されていたり、管を通して外に排出していたりしています。
私たちは、そういった熱エネルギーのロスをなくすために、工場内の熱の流れを最適化する方法や、捨てている熱を再利用する方法を考えています。作業者のいる場所に熱が溜まらないようにするなど、現場の快適さも考慮しながら、多角的な視点で検討していますね」
──難しそうな課題に取り組まれているのですね……!ちなみにデンソーにはいくつか工場がありますが、工場ごとに作りや設備が違ったり、新しかったり古かったりと、状況は様々だと思います。その辺りはどう対応しているのでしょうか?
山本 「私の役割は全ての製造部を横串で見ることなので、どの工場にも当てはまる共通の課題から着手しています。その課題を見極めるためにも、多くの現場に足を運ぶことを大切にしています」
現地現物を大切にしている理由
──現場に足を運ぶ……というお話がありましたが、普段から現場にも行かれているんですね。
山本 「はい、やはり現場に行かないとわからないことも多いので、できるだけ足を運ぶようにしています」
──“現地現物”を大切にされているんですね。なにかきっかけがあったのでしょうか。
山本 「それこそ、私はこの仕事を担当する前は工場の設備などをまったく見たことがなかったので、『排熱が出ている』『現場はものすごく暑い』という話を聞いても、具体的なイメージを持てずにいたんです。その状態で何か解決策を考えたところで、現場の方からしたら、的外れな策になってしまうかもしれないですし。だから、現場に足を運んで、自分の目で状況を見るようにしています」
──百聞は一見に如かず、と言いますもんね。
山本 「また、エコ工場を実現していくためには、現場の協力も不可欠です。現場と密にコミュニケーションを取って進めていくためにも、一緒に仕事をするメンバーや上司には『現場に行きたい』『現場の意見も聞いてみたい』といった意見をちゃんと伝えるようにしています」
──現場の方もうれしいし、心強いでしょうね!山本さんのお話を伺っていると、周りの方や、現場の方との関係性をとても大切にされているように感じます。
山本 「そうですね、自分の経験や知識だけでは仕事はできないので……。気持ちよく仕事ができる関係性づくりは意識しているかもしれないです。特に、他の部署を巻き込んでいくとなると、いかに信頼してもらえるかが大事ですし」
──協力してもらうということは、相手の時間をもらうということですもんね。無駄に相手の時間をもらうことになると、不信感を持たれてしまう。
山本 「そうなんです。なので、なるべく自分の考えを持った上で、相談したり、依頼したりすることを心がけています。そうやって信頼を積み上げていって、一緒に協力してくれる“仲間”が増えていくといいな、って思っています」
「コアに近づきたい。」 エンジニアへの挑戦と、周りの人たちのあたたかさ
──山本さんは今年(2022年)で入社7年目ということですが、最初の3年はエンジニアではなかったんですよね。
山本 「はい、部内のイベントの事務局や働き方改革推進などの仕事を担当していました。実務職として入社したので、サポート的な仕事が多かったですね」
──そんな中、今はエンジニアとして活躍されていますが、全く異なるフィールドへの挑戦はかなりハードルが高かったのではないかと思います。どのようなきっかけがあったのでしょうか?
山本 「文系出身だったので、入社時は技術に関わろうという気持ちはなかったのですが、技術開発する人たちの近くで仕事を続けているうちに、自分も製品や技術に関わってみたいなという気持ちが芽生えてきたんです」
──なるほど、技術そのものに興味を持つようになったんですね。
山本 「はい。また、心境の変化もありました。ずっと縁の下の力持ち的な役割をしてきましたが、会社や組織の目標に対してもっと直接的に貢献したくなったというか、会社のコアに近づきたくなったというか、そんな気持ちに変わっていきました」
──だから、エンジニアになる道を選んだというわけですね。
山本 「そうですね。エンジニアになると決めたら、上司や先輩、他部署の室課長など、たくさんの人に相談をして、自分の意思を伝えていきました」
──エンジニアになりたいと伝えた時、周りはどのような反応でしたか?
山本 「みなさん本当に真剣に私に向き合ってくれました。背中を押してくれたり、大変さを教えてくれたり、会社に貢献するならこんな選択肢もあるよとアドバイスしてくれた方もいたり。そのおかげで不安なくエンジニアに転身することができましたね」
──周りの方達にも支えられたんですね。とはいえ、かなりの知識やスキルの習得が必要ですし、大変だったんじゃないですか?
山本 「大変でした……!社内に“技術検定”というエンジニアの登竜門的な試験があり、ほぼ知識ゼロからのスタートだったので、めちゃくちゃ苦労しましたね(笑)」
──そのように人一倍努力をされたからこそ、今の山本さんがあるのですね!
山本 「上司がステップアップする道を用意してくれたことも大きいです。最初は、技術を体で覚えるために手足を動かす仕事から始まり、徐々に実験や企画など、自分で考える仕事を増やしていってもらいました。上司からはいつも『やれたらすごいし、やれなくても普通。やってみることが大事だよ』と言ってくれていたので、あまり気負わずチャレンジすることができましたね」
──すごい、理想的な組織だ……!
思ってもみない未来に出会うために。ビジョンは描かず、今は自分を磨き続ける
──今後のことも少しお伺いしたいです。先ほど、お仕事ではエコで快適な工場づくりを目指しているとお聞きしましたが、山本さんご自身の将来のビジョンも教えてもらえますか?
山本 「……それが、全然ないんですよ(笑)。5年後、10年後、自分が何をやっているのか想像もできないです。今はただ、将来の人生の選択肢を広げるために、その過程として、いろいろと知識を身につけています」
──どんなチャンスが来ても対応できるように、といった感じですかね?
山本 「そうですね。社内にもまだまだ知らない仕事はたくさんあります。今日のインタビューのような、広報のお仕事もそうですね。これまでかなり狭い世界でやってきたので、今はあまり視野を狭め過ぎないほうがいいのかなと思っています。知らない仕事に携わることで、もしかしたら、思ってもみない世界に出会えるかもなって。そういう意味では、あまり将来像は固めていないんですよね」
──きっとこの記事が出たら、いろいろな部署からオファーが来ちゃいますが、大丈夫ですか?(笑)
山本 「えー、選びたい放題だ(笑)。でも本当に、最初の3年間があるから今の自分がありますし、今の挑戦があるから次のステージにつながると思います。与えられた機会、チャレンジできる機会があれば、個人の成長につながると思うので、どんなことでもやっていきたいですね」
──山本さんがいろんな場所で活躍する姿が目に浮かんできます。これからもそのチャレンジ精神で、人生を切り拓いていってくださいね!本日はどうもありがとうございました。