公務員として9年働いたあと、行政書士として開業しています。 その傍ら、某家庭教師会社にて生徒さん達と出会ってきました。 そこで分かったのは、「皆さん各々に良い勉強の仕方がある」ことでした。 環境も個性も皆さん違う中、同じ授業というのではなく、マンツーマンの良さを生かしたいと思います。
行政書士試験に独学で合格できる?
行政書士になるには、行政書士試験に合格する必要があります。
行政書士試験の勉強には、
・参考書や問題集を用意して独学する
・通信教育を利用する
・資格学校に通う
など複数の方法があり、独学で合格するには800~1000時間程度の学習時間が必要だと言われています。
現役の行政書士であるMさんは、公務員を退職後に行政書士試験の勉強を開始。2度目の挑戦で見事合格を果たしました。
子育てをしながら通信教育で勉強したMさんが、独学での受験について考えを語ってくれました。
「初学者が独学で合格を目指すには相当な努力が必要です。しかし、しっかりと自己管理ができる人、そして十分な勉強時間を確保できる人であれば、独学での合格も不可能ではありません。
『簡単に合格できる方法』や『お手軽な勉強方法』は、残念ながらありません。自分を律し、正しい方向性で努力することが不可欠です」
行政書士試験の特徴は?
■行政書士試験とはどのようなもの?
行政書士は、行政書士法に基づく国家資格です。
試験は毎年1回、11月に実施されます。年齢・性別・学歴・国籍等に関係なく、誰でも受験できます。また実務経験が必要ないため、初学者でも挑戦することができます。
試験は筆記式(マークシート択一式・記述式)で、全60問の300点満点です。
■試験の難易度と合格率は?
行政書士試験は例年4万人近くが受験する人気の資格試験です。
合格率は過去10年間において10%前後で推移しており、令和元年(2019年)度の合格率は11.5%。決して易しい試験ではなく、十分な準備なくして合格を狙うのは難しいと言えます。
■試験科目と出題範囲は?
試験科目と出題範囲は以下の通りです。
『行政書士の業務に関し必要な法令等』
「憲法」「行政法」「民法」「商法」「基礎法学」
『行政書士の業務に関連する一般知識等』
「政治」「経済」「社会」「情報通信」「個人情報保護」「文章理解」
■試験の合格基準は?
合格基準が明確に決められている「絶対評価」で、下記の要件をすべて満たしていれば合格となります。
『行政書士の業務に関し必要な法令等』…計244点中122点以上(50%以上)
『行政書士の業務に関連する一般知識等』…計56点中24点以上(40%以上)
上記科目の合計得点が、300点中180点以上(60%以上)
行政書士試験に独学で合格するためのポイント
■おすすめの勉強方法は?
独学で合格を目指す人に向けて、Mさんおすすめの勉強法を挙げてもらいました。
・判例六法を最大限に活用する
受験に向けてまず用意するものとして、Mさんは「解説が詳しく載っているテキスト」と「判例六法」を挙げています。
「試験問題は六法から多く出題されるので、判例六法は必ず用意しましょう。とっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、読んでみるとそれほど難しいものではありません。珍しい判例や興味深い話もたくさん載っているので、楽しみながら読んでみてください」
また判例六法の活用法について、次のようにアドバイスします。
「問題集などで問題を解いたら、解説文を読むだけでなく判例六法も開いて判例を調べる癖をつけましょう。面倒かもしれませんが、もともとの情報に当たることで理解がより深まり、知識も身につきます」
・記述式問題対策のため「書く練習」は必須
「試験では記述式での出題もあります。記述式問題は各20点×3問出題で配点は60点と大きく、ぜひ得点したいところ。そのためには、普段からの『書く練習』が大切です。人によって勉強方法はさまざまですが、私は『書いて覚える派』。模試で間違えたところや覚えたいところは、単語帳に書いて活用していました。それは、書く練習にもなり記述式問題の対策につながったと思います」
・学習アプリやSNSは上手に活用する
「移動時間やちょっとしたスキマ時間には学習アプリやSNSも活用していました。通信講座の先生がTwitterで毎日問題を出題していたので、それをチェックするのが習慣になっていました」
■独学の場合の注意点は?
「これは私の失敗談ですが、前述の学習アプリやSNSで短い情報だけを見て『わかったつもり』になっても、少し違う切り口で出題されると応用が利かずにわからなくなってしまいます。便利なツールはうまく活用しつつも、テキストや六法全書で確認するという基本は忠実に守りましょう。
また出題範囲が広いので、闇雲に取り組んでいては時間の無駄になってしまいます。問題集で取り組む問題を間違えないよう注意が必要です」
独学では勉強方法を軌道修正してくれる人がいないため、「この勉強方法で良いのか」を常に自問自答しながら勉強する必要があると言えそうです。
行政書士はトラブルを未然に防ぐ「街の法律家」
現在は行政書士として開業し、業務に励んでいるMさん。普段はどのような活動をしているのでしょうか。
「行政書士は市民と官公庁の橋渡し役としてさまざまな業務を行っています。風営法に基づく店舗の許認可手続きや各種届出などを行うほか、個人の方からのご相談も多くいただきます」
Mさんのもとに寄せられる相談には、遺言や相続、離婚に関するものが多いと言います。
「遺言や相続、離婚話などは、こじれると大きなトラブルになり紛争に発展してしまうこともあります。話がこじれる前に行政書士に相談することで、トラブルの未然防止につながります。
弁護士や司法書士に相談するのはハードルが高いイメージがありますが、行政書士はもっと市民に身近なもの。書類作成や制度内容でわからないことなど、気軽に相談してほしいと思っています」
■行政書士の将来性は?
AI時代の到来により行政書士の仕事は先細りになるとも言われていますが、「この先も行政書士の需要はなくならない」とMさんは言います。その理由を語ってもらいました。
・「人」にしか担えない役割がある
「書類作成や申請手続きなど、AIに代替できる業務は確かにあります。しかし、そこに至るまでの過程で相談者に寄り添えるのは『人』なんです。さまざまな不安や悩みを抱えて相談に来られる方にどのような言葉をかけるのか、どんな雰囲気でお迎えするのか。そこまで考えて対応できるのがAIにはない強みであり、行政書士の役割だと思っています」
・業務の範囲は日々広がっていく
「時代や社会の変化に伴って新しい法律や制度が次々に生まれ、人々の需要も変化していきます」
新型コロナウイルスが流行してからは、自分に万一のことがあった場合を心配した飼い主から「ペット信託」について多くの問合せがあると言います。またコロナウイルスに関する助成金申請についての相談も増えているそうです。
「結婚時に交わす『婚姻契約書』やドローンを飛ばすための認可申請についてなど、昔では見られなかった相談も登場してきています。
こうした変化により生まれてくる新たな業務にいち早く対応できるのが行政書士です。世の中が変化していく限り、行政書士の需要がなくなることはありません」
行政書士を目指す人へ
「日々難しい勉強に取り組んでいるとモチベーションが下がり、行政書士を志したきっかけを忘れてしまいがちです。そんな時は初心に立ち返り、なぜ行政書士になりたいと思ったのかを思い出してください。
私自身、身近な人が遺産分割について悩んでいるのを見て、『このような問題を解決できる仕事に就きたい』と思ったことが行政書士を志すきっかけになりました。最初のきっかけを思い出すことで、またモチベーションも上がってきます」
また、Mさんはこうも語ってくれました。
「試験に合格して晴れて行政書士になってからも、いろいろなことにアンテナを張っておくことが大切な職業です。私も行政書士として市民の皆さんに一層寄り添っていけるよう、新たな資格取得も視野に入れて日々勉強中です。ぜひ一緒に頑張っていきましょう」
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