建国50周年を迎えたシンガポールの「光と影」 国民所得はアジア1位、幸福度調査は最下位 | キャリコネニュース
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建国50周年を迎えたシンガポールの「光と影」 国民所得はアジア1位、幸福度調査は最下位

マレー半島の先端に位置し、国民1人あたりの所得が日本の1.5倍で、アジア1位のシンガポール。2015年8月3日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、建国わずか50年で「アジアの奇跡」と呼ばれる超優良国家に成長した秘密を探った。

街にゴミひとつ落ちていないことで知られるこの国は、禁止された場所で飲食や喫煙をすれば高額な罰金が科せられる。テング熱対策で街路樹には殺虫剤を撒き、発症率は隣のマレーシアに比べると半分以下だ。

観光客はここ10年で2倍近くに急増し、いまや世界的な観光都市となった。様々な管理の徹底は、清潔で安全な国であることをアピールする国家戦略だ。

厳しい管理社会。エリート官僚の年俸は億単位

世界的な観光都市シンガポール

世界的な観光都市シンガポール

面積は東京の23区と同程度、資源もない小さな国がこれほど栄えたのは、リー・クアンユー元首相(享年91)という強力なリーダーがいたからだ。今年3月に亡くなったが、1965年にマレーシアからの独立を実現し、建国の父として国民に尊敬されている。

リー元首相が一貫して持っていた理念が、「富の集中」と「繁栄の追求」だ。「世界のベスト空港」3年連続1位、「最も住みやすい都市」1位、「ビジネスに適した国」世界1位、「IT技術活用度」も世界1位だ。株の売買が非課税で、相続税もない。

すべてが素晴らしく見える裏には、厳しい「規律」が存在する。「報道の自由度ランキング」では180か国中153位(日本は61位)。一般的なマンションのいたる所に警察の監視カメラがあり、街中や電車内にも監視カメラだらけだ。

シンガポールの犯罪件数は日本の約半分だが、5人以上の集会は取締りの対象になっている。「スピーカーズコーナー」という広場でだけ、政府の批判など自由な発言が許されているが、もちろん監視カメラが取り囲んでいた。

クアンユー元首相のもうひとつの戦略は「超官僚国家」。8万2000人の国家公務員の中に「エリート官僚」がいて、年俸は1億円とも2億円とも言われる。一般の官僚も、国の経済が発展すれば連動して給料が上がる。「自分の仕事が国のパフォーマンスにリンクするため、頑張る」というしくみになっているのだ。

「小学校の時の成績と能力には相関関係がある」

国家戦略において手本にしたのは日本。勤勉さや質の高さを評価し、1981年から総勢200人の官僚が日本企業でトレーニングを受けた。現在も、優秀な学生は国費で海外留学させ、官僚に登用し国づくりに当たらせている。

誰もが憧れるエリートコースだが、小学校の卒業時からふるいにかけられる。「PSLE」という全国統一試験の結果次第だ。そのため塾が盛んで、日本の「公文式」も人気。小学5年生で二次関数を解くダラニさん(11歳)も通っており、仕事以外のすべての時間を娘のために割いているという母親はこう語る。

「将来いい仕事に就くために、必死で勉強させているんです」

このシステムを推し進めたリー元首相は、「小学校の時の成績とその人の能力には相関関係がある」と言ったそうだ。日本経済新聞社・論説委員兼編集委員の太田泰彦氏は「大器晩成という言葉は、シンガポールにはないんです」と結んだ。

また、リー元首相は「サバイバル」という言葉を好んだ。ただ、その息苦しさもあるのだろう。米調査会社ギャラップが12年に発表した日常生活の「幸福度」調査では、シンガポールは148カ国中最下位だったという。

落ちこぼれた人にも居場所はあるのか

ジャーナリストの竹田圭吾氏は、この国の特徴を「国というよりも『会社』。効率を追求して富を集中させ、いかに利益をあげるかに徹している国。会社なので言論の自由はいらない」とした上で、シンガポール教育の特異性について語った。

「優秀な幹部社員を育てればいいという考え方。ああいう教育をしていかなければならない。永遠に競争し続けなきゃいけないわけです」

では、エリートコースに乗れなかった子どもはどうなるのか。社会全体が競争に覆われれば、それに敗れた人たちの居場所がなくなってしまう。日本の教育の方がいいとは言わないが、生まれながらにして会社に属していると思うと恐ろしい気がした。(ライター:okei)

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