誰もが好きな場所で生きられる社会に。持続可能な農業の実現を目指すPR担当の挑戦
SBプレイヤーズのグループ会社である株式会社たねまきは、日本の農業が抱える課題の解決を目指し、スマートアグリ事業を展開。滝田 美和はPR担当として2022年に入社し、同社の広報部門をイチから立ち上げています。入社のきっかけとなった農業への想いや、PRを通して目指す社会について語ります。【talentbookで読む】
テクノロジーの力で、農業の構造そのものを見直す包括的なソリューションを提供
“日本の農業に、新しいたねをまく”という企業理念のもと、2019年に創業したたねまき。
滝田 「いま日本の農業は担い手不足や異常気象による農作物への被害など、さまざまな課題を抱えています。そういった課題を解決することで農業を持続可能な産業とし、働きたい人が働き続けられる環境をつくることがたねまきの目指すところ。自社内の農場で使用するシステムや農作業をサポートするロボットの開発、テクノロジーを活用した農作物の栽培、販売先の開拓などを一気通貫で行っています。
たとえば、農場の労務管理や作業管理のシステムを開発することで、誰がどのくらい働き、作業がどこまで進んだのかなど、これまで属人的で曖昧だった情報が共有できるようになります。
特定の課題に対して解決策を提案するというよりは、農業の構造そのものを見直すような包括的な課題解決を目指している点がたねまきの特徴。発案されたアイデアは自社農場に適用されますが、拠点数を増やしていくことで、それぞれの地域における雇用の創出につなげたいと考えています。
目標は、10年で10拠点。その最初の拠点である茨城県の常総に、たねまきが一部出資を行い、農業法人としてたねまき常総を設立し、農場の運営や農作物の販売を行っています」
そもそもたねまきが設立された背景には、同じSBプレイヤーズのグループ会社が展開する「さとふる」というふるさと納税事業を通じて感じた、日本の農業を取り巻く状況への危機感がありました。
滝田 「『さとふる』の返礼品には農作物が多いのですが、農家さんとお話しする中で、人手不足や異常気象による被害、農業の構造上の問題に由来するムリやムダが数多くあることがわかってきました。
親会社であるSBプレイヤーズが行政ソリューションに特化した事業を推進していることから、われわれが実際に農業を運営することによって課題の解決策を探るとともに、地域社会に雇用を創出できるのではないかと考えたんです」
そんなたねまきに、滝田は同社初のPR担当者として入社しました。
滝田 「私の入社以前、たねまきではPR活動をほとんど行っていませんでした。そのため、私がイチからPR機能を構築しています。社内のPR担当はいまのところ私ひとり。土台づくりだけでなく、プレスリリースの作成や配信、コーポレートサイトの拡充、自治体による視察の対応など、幅広い実務を担当しています」
食について学ぶ中で、農業の課題に直面。理念への共感が入社の決め手に
経営学部を卒業後、新卒でPR代理店に入社した滝田。PRという職業を選んだ理由をこう振り返ります。
滝田 「大学では広告論をメインで学び、情報を伝える・つなぐという仕事に興味を持ちました。その中で、人と人をつないで伝えていくPRという手法に出会い、魅力を感じました。
PRと言うと、一般的には単に情報をお知らせする仕事だと思われがちですが、“パブリック・リレーションズ”という言葉通り、ステークホルダーと良好な関係を築くのが本来の役目。人と人がつながることで新たな価値観が生まれ、すべての人が自分の価値観を大切にできる社会──PRという仕事を通して、そんな世界をつくれたらと考えたんです」
前職では、自治体や食品メーカーをはじめ、さまざまなクライアント企業のPRを経験。中でも、食品メーカーで健康の啓発プロジェクトを担当したことが、滝田のターニングポイントになりました。
滝田 「食品に関わる中で、『もっと食のことを勉強したい』という気持ちが膨らんでいったんです。そこで、会社を辞めることを決意。退職後に専門学校に2年間通い、栄養士の免許を取得しました」
勉強をする過程で、食を支える土台となる農業が抱える課題を知った滝田。卒業を機に転職活動を始めたところ偶然出会ったのが、たねまきのPRの求人募集でした。
滝田 「これまでのPRの経験が活かせるだけでなく、食や農業にも関わることができる。私が働く場所はまさにここだ!と思いました」
入社の決め手となったのは、農業を持続可能にするというたねまきの理念に共感したこと。加えて、地域を活性化するというSBプレイヤーズの理念にも魅力を感じたと言います。
滝田 「祖父母の家が茨城にあったので、小さいころから長期休みを茨城で過ごしていたんです。でも、若い人はみな東京に出てしまうため、高齢化や過疎化が進んでいることを当時から感じていて。
自分がお世話になった地域に何か恩返しがしたいという気持ちが漠然とあったのですが、たねまきが展開する農場の最初の拠点が常総だと知り、いろいろなピースがカチッとはまった感覚がありました」
唯一のPR担当として奮闘。事業会社の一員としてPRに携わるやりがい
PRの実務経験は豊富だったものの、社内にPR機能を構築することは滝田にとって初めての挑戦。苦労も多かったと振り返ります。
滝田 「これまではPRの経験者に囲まれた環境で仕事をしていたので、目指すものを実現するためにやるべきことに関して共有認識があり、意思疎通がスムーズにできていました。でも、いまは周りにPRを知る人がいないため、なぜそれをやるのか、それによってどのような結果が得られるのか、まず経営陣や上司、同僚に理解してもらわなくてはいけません。
営業やマーケティングと違い、PRは費用対効果が見えにくいのが特徴です。具体的なアクションがどれほど売上に貢献するかを明確に数字で示しづらい中、できるだけ結果を数字で見られるようにしたり、PRの重要性についてバックグラウンドから説明したりして、理解を得ようと努めています」
PR担当にとって、日々のメディア調査や関係者との関係構築など、地道な業務は必要不可欠と言う滝田。最近ではそれらがテレビ番組の取材につながり、ひとつの手応えを感じています。
滝田 「取材を受けたのは、持続可能な社会を目指し、さまざまな分野でチャレンジを続ける社会活動家を紹介するという、SDGs系の番組。メディア調査を通じて番組を知り、たねまきと親和性が高いと感じたので担当者にアプローチしました。
先方に事業を説明する上では、入社してすぐに作っておいてファクトブックが役に立ちましたね。自社の取り組みや外部環境を調査した結果を資料としてまとめておいたので、メディア側にもスムーズに事業を理解してもらえたと思います。
番組では、社長のインタビューや農場の様子も放送されるはずなので、視聴者の方にたねまきの取り組みについて知っていただくとともに、農業の未来に希望を抱いていただけたらと思っています」
PRの仕事を選んだ当初から、滝田がずっと目指してきたのは、“新たな価値観をつくり出すこと”。いまは、PRを通して農業に対するマイナスイメージを変えたい、という想いがあります。
滝田 「農業には、泥臭くてあまり稼げないといったネガティブなイメージがまだまだあると感じています。技術で何かをつくり出すことは私にはできませんが、PR担当として会社とステークホルダーをつなぐことで、新しい農業のイメージをつくり出すことはできるかもしれません。
たねまきには、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが、農業や地域に貢献したいという想いを持って集まっています。みんな違う専門性を持っているからか、自分がわからないことを聞くと、思いもよらない解決方法を提示してもらえることがよくあるんです。それぞれに強みがあるメンバーが互いに協力し合いながら、同じビジョンの実現に向かって進んでいる──そこにたねまきという会社の魅力があると思っています」
たねまきのPRを通して、誰もが好きな場所で暮らしていける社会に
今後はコーポレートPRや製品PRに加え、危機管理の広報などにも業務の枠を広げていきたいと話す滝田。より多くのメンバーが活躍できる組織にするために、誰もが働きやすい環境づくりにも意欲的です。
滝田 「性別や年齢、生まれた国などいろいろな枠を超え、多様性や異なる価値観を認め合えるような会社にしていきたいですね。当社はリモートワークや産休育休などの制度が整っているほか、自分の時間や家庭を大切にしながら働いている人が多く、ライフステージが変わっても無理なく働き続けられる土壌があります。
今後、私もライフステージに合わせて柔軟に働き続けることで 、モデルケースになるような働き方の前例をつくっていけたらと思っています」
入社以来、事業目標の実現に向けて会社とステークホルダーをつなぐ役割を果たしてきた滝田。たねまきの一員として目指す農業の未来をこう展望します。
滝田 「農業を持続可能なものとし、雇用を生み出すことで、農業に従事したいと思っている人が、生まれた場所や自分の好きな場所でずっと働き続けられる環境をつくることがいまの目標。同時に、地方に根づいている時代に合わせて変化が必要な価値観を払拭していく必要もあると思っています。
私たちが地域に新しい風を持ち込むことで、誰もが自分の人生を自由に選択できるような社会にしていけるといいですね」