残業代ゼロは「容認できない」 労働者委員が「長時間労働の抑制こそ実現すべき」と提言

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各メディアに「残業代がゼロになる」と報じられた新しい労働時間制度の導入について、厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会労働条件分科会で、9月10日に議論が行われた。

連合の総合労働局長・新谷信幸氏ら7人で構成される労働者代表委員は、今回の分科会で改めて「新しい労働時間制度」に反対する主張を示した。さらに、労働規制の緩和ではなく、「休息時間の保障」や「年次有給休暇の取得促進」など、長時間労働の抑制に向けた施策の導入をするよう求めている。

新しい労働時間制度は「健康・安全を害する事態を招く」

政府が6月に提出した「日本再興戦略・改訂2014」には、労働時間でなく「成果」のみで評価される新しい労働時間制度の導入検討が記載されていた。一定の年収要件(年収1000万円以上など)や高度な職業能力を持つ労働者を対象にしたものとされている。

この制度が導入されると、労働時間が賃金と一部でリンクしなくなるため、各メディアは「残業代ゼロ法案」と報道。今回の会議でも労働者代表委員は、この制度が導入されれば「長時間労働が助長されることになるのは明らか」だとし、こう批判している。

「ワーク・ライフ・バランスに反し、過重労働による精神疾患や過労自殺、過労死等の健康・安全を害する事態を招くことになる当該制度を容認することはできない」

年収要件に関しても、いったん導入されると「将来的には切り下げに歯止めがかからなくなる」と懸念を表し、年収や職業能力で区切った労働時間制度を導入することは、労働者の健康・安全を確保する観点からは「認められない」と、全面反対の姿勢だ。

「連続11時間の休息時間」「監督官の増員」も要求

しかし政府は日本再興戦略で、「残業ゼロ」と同時に「働き過ぎ防止のための取組強化」を掲げ、「労働基準監督署による監督指導の徹底」や、早朝に出社し夕方に退社する「朝型の働き方の普及」などを課題にあげた。

さらには「長時間労働抑制策」「年次有給休暇取得促進策」を具体化させるための検討も進めており、労働者の健康・安全確保に取り組む姿勢を見せている。

これについて労働者代表委員側は、一貫して「長時間労働の抑制に資する」ための施策でなければならない、という主張を崩さない。労基署については、法違反の疑いのある企業に対して「監督指導を徹底することは当然」であり、労働基準監督官の増員を求めている。

さらに、時間外労働に「上限時間」を導入することや、すべての労働者を対象に24時間につき「連続11時間の休息時間を保障」する規制の導入など、「長時間労働削減のための規制強化」を求めた。

「朝型の働き方」に関しては、「夕方での退社の徹底」とともに、使用者によって「実労働時間が厳格に管理されるべき」だとする。朝早く出社し、夜遅くまで働かされることのないように、「労使の十分な検討」が必要ということだ。

「成果で評価」は現行法で実現可能との指摘も

年次有給休暇については、一定日数についてあらかじめ取得日を決めておき、「確実に取得させることを義務づける手法」や、取得によって「不利益取扱い」が起きることがないよう「禁止を明確にすべき」といった具体策が提案されている。

11日の読売新聞は、こうした労働者代表委員の主張に対し、経営者側からは「健康確保については、各企業の労使が話し合い、自主的に取り組むべき問題だ」との意見が出され、議論は平行線をたどったと報じている。

また、11日の日本経済新聞が「時間ではなく成果で評価するホワイトカラー・エグゼンプションの導入」と表現したことに対し、労働政策研究・研修機構の主席統括研究員の濱口圭一郎氏は自らのブログで、

「一体今の日本で、『時間ではなく成果で評価する』ことを、そういう成果主義的賃金制度を導入することを、どこのどういう法律が禁止しているというのか」

と批判。新制度として提言されている「成果重視の制度」は、規制緩和がなくとも現行の法制度の中で実現できると強調している。

政府の労働時間改革についての議論は、16日の経済財政諮問会議で再開される。労働生産性の向上や賃金、雇用体系の見直しなどが年末までに検討され、改革の方向性をまとめる予定だ。

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