2022年に「人口世界一」をうかがうインド 無秩序の中で経済は成長していけるのか
中国に代わり、世界経済のけん引役になるのではと注目されているインド。国連は2022年にはインドが中国を抜いて人口14億1868万人になると予測。経済発展にインフラ整備が追いつかず、首都デリーの幹線道路は渋滞の車でびっしりと埋め尽くされている。
富裕層が高級車を乗り回す一方、路上では10分60円で水洗い洗車のバイトをする男性もいて格差は激しい。10月5日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、インドにビジネスチャンスを見出す日本企業を紹介しながら、インド人の実態に迫った。
IT業界には「インド人旋風」が巻き起こっているが
トヨタのディーラーを訪れた会社経営者の家族は、ベンツやアウディなど高級車8台を所有しており、4年に1度新車を購入しているそうだ。奥さんは「もちろん、お金持ちだからたくさん車を買っているのよ。お金なかったら車買えないでしょ」とあっけらかんと笑う。
富裕層が増えている背景には、IT産業が育ったことがある。去年165億円という役員報酬でソフトバンクの副社長に抜擢されたニケシュ・アローラ氏はインド人。マイクロソフトのCEOやグーグルの時期CEOもインド出身で、まさにインド人旋風だ。
番組がIT企業幹部のパンデイさんに密着してみると、朝は早めに家を出たにもかかわらず渋滞につかまった。原因は車の多さだけではなく、インドでは神聖な牛が最優先。さらに他人より先に行きたがるインド人の性格で、割り込みが後を絶たない。
隙間ぎりぎりまで寄せて割り込むため、「サイドミラー出しておくとぶつかって壊れちゃう」と畳んだまま走行していたが、もともとついていない車もあった。
「30分でつくはずなのに4時間もかかっている」とバスの乗客が不満を募らせ、運転手も「8時間労働なのに毎日2時間も残業している」と愚痴をこぼす。結局パンデイさんは通常30分ほどで到着する距離に、1時間40分もかかってしまった。
「渋滞のせいで生活リズムが無茶苦茶。遅刻したので残業か休日出勤だね」
バイク教習所で安全ルールを教えて市場形成するホンダ
こんな有様では、せっかくの経済発展の足を引っ張る。インドの4つの都市を結ぶ高速鉄道はまだ計画段階。交通事故も多発し、年間死者数は約14万人と世界ワースト1位だ。地元警察は「1年で違反者は450万人。罰金を払わせても減らない」とお手上げ状態だった。
自動車免許を不正に取得する人も大勢いる。便利屋に頼めば5000円から2万円ほどで簡単に作れ、しかも国が運営する免許試験場の周辺に小さな店舗を出して堂々と取引していた。番組ゲストでインド出身のバトさんは、インドの実態をこう証言する。
「インド人は、道路に出ると戦場です。信号があるかないかより、戦場で自分が一番に着きたい」
「免許証だけじゃなくて、大学の卒業証明書とか、お金さえあれば買えるものもあります」
聞けば聞くほど驚きの連続で、番組沸騰キーワードが「無秩序」だったのにも納得した。だからダメとするのではなく、日本企業は未整備状態にビジネスチャンスを見出していた。
フランチャイズ「洗車の王国」は、富裕層をターゲットに進出。日本式の丁寧な洗車術が好評だ。ホンダの戦略は、バイク教習所を開設して安全ルールを教えるところから。安全にこだわった市場を形成し、地元企業に押さえられたシェア1位の座を狙う。
番組では、今後国が成長していく途上で、徐々に秩序ができていく可能性を語っていた。一筋縄ではいかない混沌とした雰囲気も魅力ではあるが、日本人が安全教育を提供することで健全な秩序が導入され、命に関わる事故が減るのならよいことだ。(ライター:okei)
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