Sun Asterisk(サンアスタリスク、以下Sun*)は2013年設立。大手企業などをクライアントに、新規事業やデジタルプロダクトの開発を行う「デジタル・クリエイティブスタジオ」を標榜し、グローバルで2,000人を超える従業員を擁して企業活動を展開しています。
2020年に東証マザーズ(当時)に上場し、2022年プライム市場に市場変更後も業績を順調に伸ばしていますが、いまどのような事業を強化し、どのような人材を求めているのか。同社 中途採用チーム ユニットマネージャーの藤田文香さんに話を聞きました。(キャリコネニュース編集部)
「誰もが価値創造に夢中になれる世界」を目指して
――現在どのような事業を行っているのですか。
当社は「誰もが価値創造に夢中になれる世界」をビジョンに、「本気で課題に挑む人たちと事業を通して社会にポジティブなアップデートを仕掛けていくこと」をミッションに掲げるデジタル・クリエイティブスタジオとして企業運営を行っています。
ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの頭文字を取った「BTC」の三位一体で、エンタープライズからスタートアップまで幅広いクライアントの事業開発支援を手がけています。これまで500社850以上のプロダクトに関わっており、新規事業の創出やデジタルプロダクトの開発支援を行うことで、世の中のアップデートや新しい価値創造が実現できると考えています。
これらの考え方をもとに、事業開発と人材の両面からクライアントのデジタル業務を支える2つのサービスラインを提供しています。1つ目の「クリエイティブ&エンジニアリング」は、当社所属のグローバルチームがクライアントとともに、事業創出やデジタルプロダクトの開発を行ったり、運用をハンズオンで対応したりするサービスラインです。
2つ目の「タレントプラットフォーム」は、当社がASEANを中心に産学連携している大学にて教育と、海外ITエンジニアが集まる採用プラットフォーム「xseeds Hub」の運営、そして当社のヘッドハンターが発掘したデジタル人材をクライアント企業に輩出するサービスラインです。
――業績はここ数期でかなり伸びていますね。
上場前の2019年12月期の連結売上高は45億円でしたが、翌年以降はコロナ禍にもかかわらず53億円、80億円、107億円と成長を続けており、2023年12月期は売上高125億円、営業利益22億円を実現しています。
連結従業員数も、2019年12月期の1,263人から、2023年12月期には1,748人、2024年3月末時点で2,080人ほどに増えました。内訳は、国内のSun*本体が約370人で、メインの開発拠点であるベトナムでは1,425人ほどと最も多くの従業員を抱えています。
クライアントと伴走する適切なチームを編成し事業を創る
――「デジタル・クリエイティブスタジオ」について詳しく説明してもらえますか。
当社では「デジタル・テクノロジーとクリエイティブを活用できる最適なチームを編成、あらゆる産業のデジタライゼーションを促進し、価値創造を実現させるサービス」と定義しています。
また、多くの企業で取り組まれている「デジタル・トランスフォーメーション」(DX)には、業務プロセスのデジタル化を目的とした「デジタイゼーション」と、事業のデジタル化を目的とした「デジタライゼーション」の2つがあると整理しています。
当社が主に事業としているのは、後者の「デジタライゼーション」で、コストの最適化にとどまらない「レベニュー(売り上げ)の成長」を目指し、クライアントがデジタル企業へアップデートする支援をするものです。
柔軟性とスピードを重視した「価値創造型」の手法を採用し、「デザインシンキング等によるアイデア創出」や「リーン・スタートアップ」「MVP開発」「アジャイル開発」「高速DevOps体制と運用」といった開発手法論を用いるのが当社の特徴です。
――現在注力しているのはどのような人材のキャリア採用でしょうか。
全方位でポジションをオープンにしており、職種による強弱はありません。当社の事業は人数の増加がそのまま売り上げに結びつく部分もあり、年100人以上のキャリア採用が必要です。
主力のクリエイティブ&エンジニアリング事業では、前述のBTCが示す通り、ビジネス職やエンジニア職、クリエイティブを扱うデザイナー職など多くの価値創造のポイントがあり、新たなプロジェクトを推進するには、これらすべての職種が必要になります。
なお「BTC」の三位一体が大事と考える当社では、どの職種が上とか偉いといった考えはなく、ヒエラルキーのないフラットな組織体で運営しているところが特徴です。また、会社として拡大期でもあるので、経営企画や経理、人事労務や総務などのコーポレート職種でも人材を募集しています。
「ミッションやビジョンへの共感」は採用の大前提
――求める人物像のようなものはありますか。
繰り返しになりますが、私たちが大切にしているミッション、ビジョンに共感し、かつ、職種間の上下関係やヒエラルキーがないフラットな組織の中で、個人としてプロフェッショナルなスキルを発揮し、スキルを伸ばしていける方を募集しています。
新規事業を成功させた経験やノウハウを持つエンジニアやビジネスデザイナー、プロジェクトマネージャーの応募は歓迎していますが、職種に関係なく、コーポレート職でも「価値創造」や「アップデート」に関わりたい方に参画してほしいですし、実現のために国籍や性別などの差を超えてチームワークをしていける方を求めています。
――やはりミッション、ビジョンへの共感が大事であると。
実際に入社した人たちからも、会社がビジョンの実現に向けて真剣に取り組んでいることに歓迎の声が聞かれます。前職では「言われたことを形にすればいい」と言われ、組織のヒエラルキーに阻まれて上流やビジネスに関わらせてもらえなかったとフラストレーションを抱えていたデザイナーが、生き生きと活躍しているという話を聞いています。
また「BTC」がフラットな関係にあることで、クライアントとコミュニケーションを取りながら、上流から下流まで一気通貫して事業やデジタルプロダクトを作ることができた、とエンジニアが喜んでいるという話も聞いています。
――現状、採用上の悩みのようなものはありますか。
採用活動上の競合他社が多いところですね。当社は「デジタル・クリエイティブスタジオ」を掲げる日本の上場企業ですが、デジタルプロダクトを作ろうとしているスタートアップとも、大手コンサルファームともバッティングするところがあります。
当社としては、やはりミッションやビジョンを具現化している様子や、そういう社風の中で働く社員の雰囲気を、候補者の方に見ていただきたいと思います。実際、一度当社に接触した方の中で、共感して当社に入社いただく方の割合は高いです。
大手の外資系コンサルにはデジタル領域の案件があるものの、すべての案件がアントレプレナーシップを発揮できる新規事業やデジタルプロダクトの創出だったりするわけではありません。
その意味では、実際に新規事業に携わることのできる回数や、案件の特別性、お客様と密にコミュニケーションを取りながらデジタルプロダクトが作れるといった仕事そのものの醍醐味も、差別化ポイントになるかもしれません。
月1回以上は「オープンオフィス」を開催
――転職を検討している人に御社の社風や雰囲気を直接伝える機会は作っていますか。
月1回以上は「オープンオフィス」を開催しています。代表や役員、従業員と転職候補者が自由に交流できる場を設け、候補者に寄り添った情報提供をしつつ、個性の強い社員一人ひとりの考え方や人柄、職場の雰囲気を感じ取っていただく機会を作っています。
また、これは転職候補者に限りませんが、新規事業の作り方を解説するイベントやセミナーなどを開催し、社外の方々との接点を設けています。講師には『異能の掛け算‐新規事業のサイエンス‐』(NewsPicksパブリッシング刊)の著書があり当社で新規事業開発のマネージャーを務めている井上一鷹などが登壇しています。
――若い世代を中心に働き方の柔軟性を求める考え方が増えています。
「原則としてリモートワークが可能」とお知らせしています。業務によっては、オフィスで行う必要があるものや、客先に半常駐のような形で働く仕事もあり、全てリモートワークとは宣言できないのですが、首都圏以外に在住している社員もおります。
ただし、リモートワークだけだと人間関係を形成しにくい、既存の人間関係の中に入りにくいということもあって、あわせて大事にしているのが「オンボーディング」(新しい職場への順応を促進する取り組み)で、人事が事業部や上司との間に入ってつながりを作る取り組みを行っています。
入社1ヶ月目に行う必ず面談では「心身のコンディションはどうか」「社内の人間関係ができているか」「プロジェクトなどの業務で課題感を抱えていないか」「入社前とのギャップがないか」といったヒアリングを行い、これを踏まえて配属先の責任者や人事を交えて課題の解決に向けて対応できる体制を築いています。
――社内向けのイベントも開かれたりするのでしょうか。
全国各地に従業員がいるので、年2回の全社的なイベントは大切にしています。年末には「SAA」(正式名称Sun* Annual Award)という表彰式と食事会を開催しています。また、社名変更をした3月3日を創業記念日とし、全社員が一同に会してミッションやビジョンを確認したりコアバリューについての理解を深めるイベントを開催しています。
「候補者体験」が自社らしいものになることを目指したい
――キャリア採用活動において今後目指していきたいことはありますか。
中途採用における「候補者体験」が当社らしいものになるといいな、と考えています。候補者が一方的にスキルをジャッジされるとか、会社側が一方的に自社の思いを伝えるとかではなく、候補者のよりよい意思決定に沿った形で、当社らしい体験を提供できれば、より当社を選んでもらうことに近づくのではないかと思っています。
例えば採用チームが候補者の不安を聞き取り、それを基に事業部と話をして、懸念を払拭してもらうための説明を考えてもらうとか、実際に会って話をしてストーリーを作ってみようといったことを、社内の連携を取りながら行っています。
他にも、オープンオフィスでの接点の持ち方やカジュアル面接のやり方、働く上で本人が引っかかっているポイントを受け止めるような面談のあり方など。もしかするとすでに、他社と比べて面接の回数が多いな、などと思われているかもしれませんが(笑)、インタラクティブな候補者体験にしていきたいなと考えています。
私たちもまだ創業10年と歴史が浅く、業界における知名度もまだまだ足りません。より多くの方に当社を知っていただき、転職を考えるときに最初に想起されるような企業を目指していきたいと思います。