宇野代表が「未来塾」で経営幹部を養成するUSEN&U-NEXT GROUP 新規事業リーダーのキャリア採用を強化
1961年創業の大阪有線放送社を企業ルーツとして、幅広い事業を行うUSEN&U-NEXT GROUP。動画配信サービスU-NEXTが2014年に東証マザーズに上場を果たし、2015年には東証一部(現プライム市場)に市場変更、2017年にUSENとU-NEXTが経営統合してUSEN-NEXT HOLDINGSによる持株会社体制となりました。
2024年4月にはU-NEXT HOLDINGSに社名変更し、同年8月期には売上高と営業利益が8期連続で過去最高を達成しました(売上高は2018年8月期の8ヶ月決算値を12ヶ月換算)。急成長を続ける会社は、現在どのようなポジションで、どのような人材を求めているのか。同社 採用戦略部の野村大河さんと吉川公美子さんに話を聞きました。(構成・文:水野香央里)
社名の冠を「U-NEXT」に変えた理由
――現在どのような事業を行っていますか。
野村 当社グループの事業は、大きく4つに分けられます。1つ目は動画配信サービス「U-NEXT」を提供する「コンテンツ配信」、2つ目は店舗BGMやDXサービスなどを提供する「店舗・施設ソリューション」、3つ目は法人向けICTサービスや自社光回線、電力などを提供する「通信・エネルギー」、4つ目は新規事業として成長が期待される「金融・不動産・グローバル」です。
創業以来60年以上続く店舗BGMは、現在も飲食店をはじめとする全国の店舗で利用され、国内市場シェアNo.1を獲得するなど安定した収益の源泉となっています。「店舗DX」は、これまで店舗BGMで培ってきた顧客との関係性や人材の専門性を活かし、店舗で深刻化する人手不足の解決を目指す取り組みです。
事業ポートフォリオとしては、店舗・施設ソリューション(店舗DX除く)と通信・エネルギーで生み出される安定収益を、コンテンツ配信や店舗・施設ソリューション(店舗DX)、金融・不動産・グローバルへ積極的に投資し、さらなる成長を目指すという形となっています。
特にコンテンツ配信は、コンテンツの拡充や2023年の「Paravi」とのサービス統合で着実に会員数を伸ばし、国内勢最大の動画配信プラットフォームへと成長しました。動画配信市場の規模は拡大しており、今後もグループの成長をけん引していく見込みです。
――最近、社名を「USEN-NEXT HOLDINGS」から「U-NEXT HOLDINGS」に変更されました。
野村 将来を見据えた新たな成長フェーズへ移行するべく、2024年4月1日に「U-NEXT HOLDINGS」へ社名を変更。また、グループ名を「USEN&U-NEXT GROUP」としました。これら新社名には現在の当社の考え方や今後の方向性が強く表れています。
店舗BGMの「USEN」と動画配信サービスの「U-NEXT」は、どちらも現在の当社の中核を担う事業ですが、認知度は世代によって二分されています。中高年層では「USENといえば有線放送」となる方が多いように感じますが、若年層では「U-NEXT」しか知らない人も多く、「そもそも同じ会社だったの?」と言われることも少なくありません。
新社名には「U-NEXT」を使用していますが、「NEXT」には「私たちの次のステップ」という意味だけでなく、これからも「未来をより良くしていきたい」という想いが込められています。また、新たなグループ名を通して「USEN」と「U-NEXT」が同じ企業グループであることを知っていただければと思います。
お客様との「ラストワンマイル」を守るために
――現在どのようなキャリア採用を強化していますか。
吉川 グループ全体で100を超えるポジションでキャリア採用を行っており、営業、企画、ITエンジニアなど幅広く募集しています。
まず、意外にもグループとして新たに強化しているのはビジネス職の採用で、特にエネルギーや金融・不動産の新規事業の立ち上げをリードできる人材、即戦力として活躍してくれる人材を募集しています。損害保険や生命保険の会社で企画の経験がある人材の採用は、当社にとって重要になってくると考えています。
店舗・施設ソリューションでは、店舗DXを推進するビジネス職を募集しています。こちらは全くの新規事業というよりも、安定した既存事業の基盤と重なり合う部分を見つけて、新たな事業やサービスを開発していける人材を求めています。
当社の特徴的な職種でもあるフィールドエンジニアの採用にも力を入れています。機器の設置工事をするエンジニアで、修理や保守まで一貫して対応するのが特徴であり、強みでもあります。
フィールドエンジニアは、当社とお客様との「ラストワンマイル」をしっかりと守るために欠かせない職種です。経歴としては電気工事士などの技術を持っている方に入社していただけると非常にありがたいですね。
フィールドエンジニアの拠点は都市部だけでなく、地方を含む全国約150カ所に設けています。これはクライアントへの手厚いサポートを可能にするためであるのはもちろんですが、地方での雇用を確保する社会的な意義もあると考えています。Uターン転職を考えている方にも向いているかもしれません。
――求める人材像はありますか。
吉川 社名変更とともに、新しいコーポレートスローガンとして「NEXT for U」を掲げました。ここには、世の中のすべての人々の未来のために、エンターテインメントとテクノロジーで未来をより良く新しいものにしたい、という思いを込めていますが、このような考え方に共感してもらえる方がいいですね。
求める人材像としては、社会課題に関心があって何かに異議を唱えたいと考えていたり、知的好奇心を持って行動に移したりできることを、1つのコンピンテンシーとして重視しています。また「人が好き」であることも当社が大切にする価値観で、チームワークを大切にする、人を大事にするカルチャーに共感してくれる方を求めています。
自ら手を挙げて希望の部署に行ける異動制度も
――御社ではどのような方針で人材育成を行っているのでしょうか。
野村 当社はこれまで毎年200~300人近くが新卒採用で入社してきたこともあり、新卒文化が強く、社員を自社で一から育てることを重視してきました。一方、多くの新規事業を展開する中で、社内で持ち合わせていない新たなスキルやケイパビリティが必要になる場面が増えているのも事実で、キャリア採用の強化は大きな課題です。
新卒をしっかり育てていくとともに、キャリア採用で高いスキルを持った経験者に新たに参画してもらいながら、経営層として将来のグループの中核を担う人材を輩出する流れを作っていきたいと考えています。
次世代の経営人材を育成するために、現在「未来塾」というプログラムを行っています。当社は、U-NEXT HOLDINGSの傘下に29の事業会社を抱え、連結売上高が3,200億円を超えていますが(2024年8月期)、これを「100億円の事業体を100社作る」ことで「1兆円企業」に増やすというビジョンがあります。
これを実現するためには、それぞれの会社を担える社長が必要です。10人から20人の選抜された社員を、HD代表の宇野康秀が直々に1年間育成しており、塾生同士や経営幹部との交流会をはじめ、社内外の経営者・起業家との意見交換会、課題に対するプレゼンやビジネスコンテストなど、充実したカリキュラムが用意されています。
実は私も「未来塾」の一期生で、卒業生です。もともとは事業会社で営業をしていましたが、募集に手を挙げて1年間のプログラムを終えた後、採用責任者に着任しました。私のようにコーポレートの部署で要職についた社員だけでなく、卒業のタイミングで事業会社の社長になった社員もいます。
――そのような形で、制度が具体的に機能しているのですね。
吉川 このほかにも当社では、社員の働き方を支えるために、社員がイキイキと生産性高く働くための「Work Style」と、多様な成長ができる環境づくりの「Growth」、心身ともに健康で持続的に働ける環境づくりの「Well Being」という3つのカテゴリーで、多様な制度や福利厚生を整えています。
特に力を入れているのが「Growth」の制度で「未来塾」もこのひとつです。当社ならではの制度としては、Career Growth Program「Next Way」があげられます。これはグループ内でのさまざまなキャリア形成や挑戦をバックアップするグループ内異動の仕組みで、さらに3つの制度「Scout U」「Want U」「Try U」で構成されています。
「Scout U」は、これまでの経歴や成果、能力などを記載した履歴書を社内で開示すると、事業会社の社長が見て自分の会社にスカウトする仕組みです。「Want U」はこれとは逆に、各会社や部門が新しく部署を立ち上げたり、こういう人材が欲しいと告知したりといった公募に対し、社員が手を挙げることができる仕組みです。
「Next Way」は、両者が手を挙げあってポジティブに異動できる仕組みです。このような制度によって、実際に年間で100人を超える社員が異動していることからも、当社の「風通しのいい文化」を感じてもらえるのではないでしょうか。
若手優秀層を中心に報酬水準を引き上げ
――他の2つの福利厚生についても教えていただけますか。
吉川 「Work Style」としては、フレックスタイム制度を導入しています。また、これまでの「60歳定年、65歳まで契約社員」という定年再雇用制度を大幅に見直し、「会社が提示する条件と合意することで、70歳を2回目の定年として正社員として働ける」制度に変更しました。社外での副業だけでなく、グループ内で副業ができる「Helpers」という制度もあります。
「Well Being」では、オンライン医療相談環境の整備などを含む健康支援施策の独自のプログラム「Well.U」を設けています。また、産前産後休暇や産前休暇開始前日までの期間に20日間付与される「Ladies休暇」、育児・介護休業制、子の看護のための休暇・介護休暇なども設けています。
――採用活動について、今後新たに取り組んでいきたいことはありますか。
野村 実は当社ではリファラル(社員からの紹介)による採用が非常に多く、キャリア採用の3割近くを占めています。当社のグループで働くことに社員がやりがいを感じ、満足度が高いことが背景にあると考えています。また、紹介された方に入社いただけるのも、働く環境の整備やカルチャーが受け入れられた結果だと受け止めています。
今後は引き続きリファラルに取り組みつつ、アルムナイ(中途退職者)の採用強化を図りたいと考えています。ライフステージの変化などを理由に退職した女性社員が、子育てが落ち着いたタイミングなどで当社に戻ってきてくれるケースが増えています。女性が働きやすく活躍しやすい環境が整っていることも、その理由になっていると思います。
2024年1月には優秀な人材の獲得強化のために、新卒初任給の引き上げを行いました。また11月には、若手優秀層を中心に8%の報酬水準引き上げを行い、従業員エンゲージメントの更なる向上を図っています。
候補者の方々には、当社について「揺るがない基盤がありながら、ベンチャースピリットを持ったグループ体」と説明することが多いです。すでにできあがっている大企業に加わるよりも、「日本を代表する企業グループになる」という期待感を持って過程を一緒に楽しみながら、一緒に成長していける方に当社を選んでもらえたら嬉しいですね。