「名ばかり正社員」は日本社会の闇なのか? 年収200万台、昇給なし、週休二日も守れない
安倍首相は2月5日の予算委員会で、同一労働同一賃金について「必要であれば法律を作る」と述べた。どのような形で法制化されるかは不透明だが、いわゆる正社員と非正規労働者との間にある「理不尽な格差」を縮小することがねらいとみられる。
これを実現するためには、非正規の待遇改善とともに「恵まれすぎた正社員の待遇」の見直しが求められる可能性がある。しかし大企業以外では、正社員も安泰ではないという反論もあるようだ。おーぷん2ちゃんねるには2月14日、ある男性が「『名ばかり正社員』という日本社会の本当の闇」というスレッドを立てている。
解雇するまでもなくブラック待遇に「自己都合でリタイア」
スレ主は、労働問題を考えるときには「正規か非正規か」ばかりに話がいきがちだが、「本当の問題はこれだろと言いたい」と訴える。「名ばかり」とは正社員でも給与が少なかったり、休日などの福利厚生が整っていなかったりする企業が多いということだ。
「・年収200万台/・昇給無し、あっても極僅か/・賞与無し/・退職金無し/・週休二日も守れない/生活保護貰った方がマシや・・」
それでも非正規より「解雇されにくくはあるやん」と、正社員の利点を指摘する声もあがったが、これにも「中小企業にそんなの関係ないし」と否定。簡単にクビになる場合があるだけでなく、退職に追い込まれることも珍しくないと反論する。
「そもそもブラック待遇に耐えきれずリタイアする奴が多いため自己都合退職よ」
雇用契約で時期が定められていなければ正規雇用となるが、このような状況を「正社員」と呼んでいいのか。労働実態が隠された状態で、正社員数が統計的にカウントされることを、スレ主は「怖い」と表現している。
確かに「無期雇用」と引き換えに、過酷な労働環境に追い込まれている正社員は少なくないようだ。厚労省「2014年度『過労死等の労災補償状況』」によると、過労自殺と認められた件数は210件と過去最高。精神障害発症も含めると、労災と認められたうち84.0%が正社員によるものだった。また、脳・心臓疾患による過労死や病気を含めた請求決定件数637件においても、86.1%が正社員によるものだった。
大手企業勤務の派遣社員とは「逆転現象」が起きている?
他のユーザーからは、スレ主の意見に賛同する声もあった。
「名ばかり管理職なら分かるが正社員=高待遇だと思ってるとしたらそれは勘違い」
もしも「手取り12万、年休80日の正社員求人」を、政府が「正規雇用だから何の問題も無いな!!」と捉えているとしたらコントだとして、正規・非正規の区分けではない待遇改善が必要とスレ主は訴えていた。
割りの悪い正社員のポジションを嫌って、あえて非正規を選ぶ人もいる。2015年に日本人材派遣協会[pdf]が4593人の派遣社員にアンケートを取ったところ、派遣先から直接雇用の打診があった際に「断る」と回答した人が20.8%を占めた。
理由のトップは「体力的・精神的な負担が多くなるから」で34.2%。調査対象の派遣社員のうち、派遣先の4割以上が大規模企業で、当面は派遣社員を希望する人は約7割にのぼる。中小ブラック企業の正社員との間では「逆転現象」が起きているのかもしれない。
あわせてよみたい:非正社員の増加は「定年退職した正社員の再雇用」も影響か