「冷凍寿司」で握りたてのおいしさ味わえる? ネットは賛否、識者は「可能性大」とみる
冷凍食品は技術の進歩によって、作り立ての味をかなり再現できるようになってきた。それでも「冷凍寿司」と聞いて、即座においしそうだと思う人は少ないだろう。
2月24日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、冷凍にぎり寿司で職人の味を再現する新しい技術を紹介。開発者の東京海洋大学・鈴木徹教授の研究室を訪れた大浜キャスターは、解凍された冷凍寿司に舌鼓を打っていた。
「シャリもふっくらしていて、ネタもしっとりして、普通においしい。冷凍って感じは全然しないです」
電子レンジのマイクロ波を制御し、ネタとシャリの加熱を調整
冷凍した寿司を電子レンジで解凍すると、ネタに熱が入ってまずくなる。しかし鈴木教授が開発した電子レンジで15秒温め、常温で8分ほどおくと、まるで職人が作った握りたての寿司のような味が再現される。
マイクロ波の制御によって、ネタには弱く、シャリには強く熱を加えることができるからだ。実用化に向けて、大手電機メーカーの技術者だった土場義浩社長が率いる「サンケイエンジニアリング」とともに、鋭意研究開発中だ。
5貫セットなどを一度に同じ条件で解凍することを目指しており、技術が確立できれば寿司職人なしで、どこでも本格的な寿司が食べられる。鈴木教授は「冷凍寿司のイメージが悪いので払拭したい」と語る。
四谷にある客単価1万5000円の有名店の寿司職人は、「(冷凍なんて)不可能だろうな」と懐疑的。酢飯の風味がどうなるかも気になるようだった。しかし、解凍した握り寿司を試食すると、驚きの表情をみせた。
「全然いいですね、びっくりしました。これすごいですね」
CTスキャンなどで科学的に分析してみると、シャリがちゃんと空気を含んでおり、職人が握った柔らかい食感も再現していた。
ネットには批判多数「どんなにうまくてもいらないなぁ」
海外展開も狙って「シーフードショー大阪」へも出展。鈴木教授は「職人がいない海外店に輸出して『本当の握りたての寿司はこうだよ』と伝えたい」と熱意をみせた。
これを見た視聴者は、ネット上で意見が分かれていた。「温度管理さえ徹底できれば冷凍寿司もけっこううまいはず」と肯定的な意見もあったが、まだまだ反応は微妙なものが多い。
「冷凍寿司ってうちの近くのスーパーに売ってるよ。怖くて食べた事ないけど」
「見た目が酷すぎ。コンビニ寿司の方がまだまともじゃないか?」
「どんなにうまくてもいらないなぁ」
しかし経営コンサルタントの梅澤高明氏(A.T.カーニー日本法人会長)は、このテクノロジーに興味津々。海外への売り込み方を次々に挙げていた。
「私であれば、素直に比較的安価な寿司チェーンをやる。寿司職人の不足で供給が追い付かないということがなくなるのが、メリットとしてまず1つめ」
寿司を前菜として扱う海外のバーもターゲットに
さらに梅澤氏は寿司店だけでなく、寿司をアペタイザー(前菜)として扱う海外のカジュアルレストランやバーに納めることや、食品・惣菜コーナーが充実しているスーパーやハイパーマーケットに入れることも提案。
「最近イートインコーナーも結構増えてきているので、そんな使い方もあるかなと」
と語り、考えればもっとアイデアが出てきそうな勢いだった。
冷凍寿司はすでに飲食店への導入を狙い、ベンチャー企業「えだまめ」と業務提携。鈴木教授とともに事業展開を検討する成田博之社長は、「あの有名店が監修した、と最初の段階ですごいと思ってもらえるものを導入して、一歩目を踏み出したい」と意気込みを語った。
個人的にはコストに見合うのかと疑問だったが、海外において「本物の寿司」は付加価値が高く、ビジネスとして見込める可能性と感じた。それにしても養成学校の成功などを含めて、寿司職人を巡る環境変化の激しさには驚かされるばかりだ。(ライター:okei)
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