リユース業界で急成長を続けるバイセルテクノロジーズ 「人が主軸」の成長戦略で未経験者の採用を強化

バイセルテクノロジーズ 田中利政さん
株式会社BuySell Technologies(バイセルテクノロジーズ)は2015年、事業譲受によりリユース(中古品の買取・販売)事業に本格参入した会社です。大都市圏への出店のほか、出張訪問買取を中心に着物やブランド品などを扱って業績を伸ばし、2019年に東証マザーズ(現グロース市場)への上場を果たしています。
上場後は積極的なM&Aにより業績を伸長している同社では、いまどのようなポジションで、どのような人材を求めているのか。同社人事戦略室 採用戦略本部 採用部 部長の田中利政さんに話を聞きました。(文・構成:キャリコネニュース編集部)
積極的なM&Aで「出張訪問買取」のトップ企業に

株式会社BuySell Technologies 人事戦略室 採用戦略本部 採用部 部長 田中利政:2010年大阪大学理学部卒。大手リテール企業を経て、人事コンサルタントとしてIT・教育業界を中心に採用戦略の立案から実行、入社後の定着・活躍支援まで一貫して支援。AI系スタートアップでは人事マネージャーとして年間100名規模の採用を実現するとともに、人事制度改定や組織開発を主導した。2025年6月より現職。
――御社は現在どのような事業を行っていますか。
着物やブランド品、貴金属、時計など、幅広い商材を扱う中古品の買取・販売事業を展開しています。店舗を構えてリユース事業を手がける会社は数多くありますが、当社は「出張訪問買取」の分野で規模・売上ともにトップクラスの位置にあります。
出張訪問買取とは、店舗への持ち込みが難しい大量の品物を買い取ってもらいたい、買い取りしてもらえるか分からないので見てもらいたい、といったお客様のニーズに応え、ご自宅にうかがって品物を査定し、その場で買い取りまで行うサービスです。
近年、当社はM&Aを積極的に活用して事業を急拡大させています。2024年10月には出張訪問買取業界2位の「買取 福ちゃん」を運営するREGATEを含むレクストホールディングスを完全子会社化し、この分野の国内シェアが圧倒的トップとなりました。

2027年度に売上高1400億円、営業利益100億円を目指す
――2025年12月期はおよそ1000億円の連結売上高を目指しています。
今後もM&Aなどで事業規模や提供できるサービスエリアを広げ、より多くのお客様に価値を提供できる体制を整えていきます。ただし、単にお客様の数を増やすだけでなく、お客様一人ひとりの満足度を高め、同じお客様から何度もご依頼いただける関係構築を目指しています。
認知度の向上も重要だと考えています。出張買取を主軸としながらも、店舗を各地に展開することで「至るところで目に入る」環境を作るとともに、広告にも力を入れています。新しいTVCMも順次展開していく予定です。
――現在注力しているキャリア採用はどのポジションになりますか。
最も注力しているのは第二新卒を含むジュニアクラスの営業スタッフです。当社の事業は圧倒的に「人」が主軸になると考えています。買取という無形サービスを提供する当社では、お客様と相対する査定士の所作や話し方のすべてがお客様の満足度に直結します。
サービスの主軸が人であるからこそ、人と会社の成長が比例関係にあり、良質なサービスを提供できる人材をいかに増やしていくかが非常に重要になります。現在は特に未経験者の採用を大切にしており、早期に活躍できる仕組みを構築しています。
ポイントはお客様に「この人なら信用できる」と感じてもらうこと
――出張訪問買取の営業職とは、具体的にどのような仕事の流れになるのですか。
全国各地にある営業センターを拠点として、その日訪問するお客様宅を社内システムで確認しながら、順番に訪問していきます。1日あたり3〜4件程度の訪問が標準的です。
「こんなものを買い取って欲しいのですが」といったお客様のニーズは、お問い合わせを受付するインサイドセールス部門を通じて事前にお伝えいただいているので、基本的にはそのご要望に応じた商品を査定して買い取りを行います。
ここで重要なのは査定前のお客様へのヒアリングで、「今回ご依頼いただいた背景はどのようなものでしょうか?」といった聞き取りを丁寧に行うことです。例えば、終活や遺品整理に伴って不要なものが出てきた、といった背景を十分理解する必要があります。
そのうえで「処分されたいものの中には、こういうものもあるのではないでしょうか?」と提案したり、「こういったものは、どなたが使用されていたのですか?」とさらに掘り下げてお聞きしたりします。
すると、もともと買い取って欲しいとご連絡いただいたもの以外にも「こういったものもお願いできるかしら?」と、お客様が気づいていなかった商品のお話が出てくることがあります。そのようなものも含めて査定し、基本的にはその場で成約して買取金額をお支払いします。
出張買取で求められるスキルセットは、店舗買取とは基本的に大きな違いはありません。ただし、店舗では持ち込まれたものをしっかりと査定し値付けし、その場で成約していく「守り」のアクションが中心なのに対し、訪問買取はお客様に気づきを与える「攻め」の営業の要素が比較的強くなります。

上場以来、5年間で5件の連続的なM&Aを実行
――営業職にはどのようなスキルや素養が必要になりますか。
お客様に「この人なら信用できる」「この人に見せたい」と思っていただけるかどうかが、商品の売却を決めていただけるかどうかに直結します。信頼関係を築き、お客様が気づいていなかった商品の価値に気づいていただき、査定を楽しんでいただける営業スキルが、当社の査定員として非常に重要なポイントになります。
こうしたコミュニケーションの中で生まれる関係構築によって、プラスアルファの価値提供を創出できる方が、しっかりと成果を出せますし、その結果としてのインセンティブをもらえるようになっています。
「営業に集中できる環境」で成約率は約8割
――査定や買取はその場で行うのですね。
営業職が一人でもできるだけ短時間に査定を完了できるように、商品の情報を登録すると買取金額の目安が出てくる当社独自のAIシステムを開発し、営業職をサポートしています。また、より専門性の高い商材については、本社の専門スタッフと連携しながら値付けをしていく体制も整えています。
――リード(見込み客)獲得については、どの部門が行っているのですか。
別途マーケティング部門とインサイドセールス部門が担当しています。専門部隊がお客様からの問い合わせを受け、アポイントを獲得し、フィールドセールスにリレーします。フィールドセールスはテレアポなどを行わず、訪問営業に集中できる環境になっています。
事前ヒアリングもインサイドセールスが行うため、フィールドセールスは「こういう案件があるので訪問してください」という形で情報共有されるところから仕事を始められます。

バイセルテクノロジーズのミッション・ビジョン
――営業活動に集中できる点は大きなメリットでしょうね。
一人あたり年間1,000件近い商談機会があり、打席に立ち続けられる環境があります。成約率も8割程度と高いので空振りとなることも少なめで、営業活動を通じて成功体験をしっかりと積むことができる点が魅力です。
もちろんテレアポから行うことで身につくスキルもあるとは思いますが、数多くのお客様と直接相対して営業スキルを高めていきたいと考えている人にとっては、よりマッチしているといえるのではないでしょうか。
――どういう人が営業職として活躍していますか。
商品を真贋査定できるスキルが身につくことをポジティブに受け取ってくれている人もいますが、古物を扱いたいというより、未経験でも営業に挑戦したい方、心理的負担が少ない中で打席に立ち続けたい方が活躍する傾向にあるのが現状です。
活躍している人の前職は、接客やサービス業、小売、営業などさまざまです。共通しているのは「相手を主体に考えて、相手のニーズをいかに満たすか」に重心を置いて考えることができる人だということです。
リユース事業とは、お客様の大切なものを買い取り、次に必要な方につなげていくことで、商品を捨てずにまた使っていただけるようにする仕事です。当社は「人を超え、時を超え、たいせつなものをつなぐ架け橋となる。」というミッションを掲げていますが、この仕事の社会的な意義を踏まえ、やりがいを感じている人が活躍できている傾向にあります。
教育研修専門の部署が未経験者を戦力化
――現在の営業職の採用ターゲットは未経験のジュニアクラスとのことですが、そのような人をどのように戦力化していますか。
社内には教育研修専門のセールスイネーブルメント部があり、しっかりと研修を行った人材を現場に送り出すフローを確立しています。ハイパフォーマーの特徴を分析し、成果に直結するキーアクションを複数抽出していますので、これを基に対象社員全体にトレーニングやコーチングを実施し、キーアクションの実施を浸透させます。
加えて、商品知識の研修も並行して実施しています。お客様と相対してコミュニケーションを取る中では、商品知識も重要になってきます。実際に商材を見て手で触れて、どういう部分をポイントとして見るのかをインプットする研修プログラムを用意しています。
教育スケジュールやトレーニング回数を管理し、設定したKPIに基づいて目標とのギャップや課題を抽出してトレーニング内容を決定できる仕組みです。

セールスイネーブルメント部の取り組み事例
――営業職以外に実施しているキャリア採用はありますか。
経営管理、事業統括などのハイクラス人材も採用しています。近年のM&A戦略による急速な事業拡大に伴い、経営管理や事業統括など、グループ全体を統括できる人材が今後数多く必要になってきます。
組織が拡大していくと、それをしっかりマネジメントできる人材や、ガバナンスや統制を適切に導入していける人材が不可欠です。事業部の本部側・コーポレート側でしっかりとパフォーマンスできる方が重要になっています。
ハイクラス層については、最近はリファラル(従業員の紹介)による入社が非常に多くなっています。当社が成長を加速させている段階という点を伝え、安定性に加え、成長性のダイナミズム、手触り感の3つを同時に得られる環境にあることを当社の魅力として伝えています。
売上規模でも「リユース業界ナンバーワン」を目指したい
――人事面での変革を進めているようですね。
徳重の社長就任後、制度改革に着手しました。2025年1月からは「社員の成長への投資〜Bet on Your Growth〜」をコンセプトとした新人事制度を開始しています。
1つ目は「報酬の引き上げ・手当の導入」です。特に出張型営業職は、正社員の月額給与の引き上げや職務手当・全国転勤手当の新設により、月額給与の下限が22万円から30万円へ大幅向上し、トップセールスのインセンティブは月50~60万円にもなります。
2つ目は「ミッショングレード制度の刷新」で、年齢や勤続年数ではなく、担う役割でグレードを決定する制度を導入しました。従来の成果基準だけでなく、成長実績や成長期待を加味した評価に転換しています。
3つ目は「キャリア自律を支援する目標設定方法の導入」で、社員一人ひとりが目指すキャリアと会社のミッションをリンクさせた目標設定を行う「CSTシート」を導入しました。CSTとは「CAREER」「SKILL」「TARGET」の略です。
個人がどういう「CAREER」を歩んでいきたいかを上司と対話しながら明確化し、それを実現するために必要な「SKILL」を設定し、会社のミッションと個人のキャリアをつなぐ具体的な半期目標(TARGET)を決めるというものです。
最近の傾向として、当社を志望していただける候補者の方々から「前職の評価制度への不満から転職を決意した」という話を聞くことが増えています。そのため、面接や面談の中で評価制度について厚めに説明するようにしています。

バイセルテクノロジーズの「CSTシート」の考え方
――今後どのような業界ポジションを目指していますか。
当社はすでに「出張買取事業」や「時価総額」ではリユース業界ナンバーワンですが、売上規模では上位にまだいくつかの会社があります。今後はM&Aと既存事業の成長でそのような会社に追いつき、追い越していく計画です。
リユース業界は参入障壁が高くないため、中小企業が非常に多い業界です。業界内で複数の企業と手を組むM&Aによって成長する余地が大きく、もっと伸びていける、もっと上を狙えるという手応えがあります。
当社の事業は「人」がサービスの主軸であるからこそ、人への投資を惜しまないという経営の強い意志があります。これは採用だけでなく、内部の人事体制、組織体制、教育体制の整備にも当てはまります。こうした「人への投資が止まらない会社」であることが、これから入ってくる方にとって一番の魅力として伝わる部分ではないかと考えています。


