会社と取引のある既存顧客を巡回する「ルート営業」は、飛び込み営業による新規顧客開拓に比べて仕事が楽だと言われることもある。しかしその役割を考えると、会社として決して軽視できる仕事ではないし、簡単とも言い切れない。

むしろ適性が合わなければ、続けていくことが難しい仕事ともいえる。そこで今回の「キャリコネ転職求人ウォッチ」は、ルート営業の仕事をピックアップしながら、それがどんな仕事なのか、どのようなスキルが求められるのか整理してみた。

親近感を抱かせる「コミュ力」がある人には天職に

キャリコネ転職サービスの糸数康文氏によると、ルート営業とはすでに取引のある顧客に対して、アフターサービスなどのフォローや御用聞き、追加セールスを行うことだという。

「要するに顧客の維持と開拓ということですが、最も大事なのは既存顧客を失わないこと。そのためのフォローは大事な役割となります」

新規営業とは異なり、飛び込み件数のノルマなどがないため、門前払いを食らうことはない。しかしこれまでコストをかけて獲得した収益基盤を失うことは会社にとって大きな損失となり、失敗は許されない。

既存顧客を失いやすいのは「前任者の方がよかった」と言われるときと、「他社の営業の方がよさそう」と言われるときの2つだという。ただ決まったルートを毎日ぼんやりと回っていればいいわけではないのだ。

例えば身だしなみやマナーは、おろそかにすると印象がすぐに悪くなる。顧客からの問い合わせや要望にも、当然ながら的確・迅速に応える必要がある。トレンドを踏まえて新たな提案も欠かせない。仮に成約に結びつかなくても、他社に先んじられれば「そろそろ潮時かな」と思われてしまう。

追加セールスも売り込みではなく「顧客の声に耳を傾ける」姿勢を忘れてはいけない。かゆいところに手が届く提案力と、親近感を抱かせる「誠実さ」「コミュニケーション能力」とを兼ね備えた人にとって、ルート営業は天職のようなものだ。

米菓メーカーの三幸製菓、専門商社のアイスコで募集中

このようにルート営業は、一見すると地味な仕事だが、実は誰にでもできるわけではなく、適性が合わない人だと全うできない仕事かもしれない。売り逃げのようなこともできないので、「実は新規営業の方がラク」という人もいるほどである。

「雪の宿」や「ぱりんこ」「黒糖みるく」「チーズアーモンド」など一般消費者にもよく知られる米菓を製造・販売している三幸製菓株式会社（本社：新潟市）は、ここ10年間で売上が約3倍に達しており、営業力強化のためにルート営業を増員募集している。

問屋や量販店、スーパーやコンビニなどの取引先を回るルートセールスのほか、消費者の声を吸い上げて商品開発スタッフに還元するのも仕事だ。本社での研修後、全国19か所の営業拠点に配属される。「いっこでもにこにこ」のTVCM放送による全国的な認知度は、無名商品の営業で苦労した経験のある人には嬉しいだろう。

株式会社アイスコは社名こそ一般に知られていないが、アイスクリームや冷凍食品の専門商社として60年以上の歴史と、トップクラスのシェアを誇る会社だ。取引のある小売店に商品を納品し、「売れる工夫」を凝らした商品の陳列や、新商品の提案などの商談を行う。

1日の訪問件数は10～15店舗。35歳までであれば前職不問で、普通免許があれば入社後に2トン冷凍庫の運転研修を受けられる。会社の売上高は10年連続で右肩上がり、ここ数年は2ケタ成長。住宅手当や家族手当、退職金制度などで社員の人生計画をバックアップする体制も整っている。

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親会社をクライアントにする安定したルート営業も

大手企業の子会社などが、親会社をクライアントに行うルート営業もある。株式会社伸和エージェンシーは、大和ハウス工業株式会社の100％出資の子会社。大和ハウスグループの社員を対象に、グループが全国展開するホテルチェーンやゴルフ場などの強力なパイプをフルに活用した旅行企画の提案営業をする社員を募集している。

旅行業務取扱管理者（総合）資格を持っていない人でも契約社員からスタートできる。勤務先は大阪だが、旅行会社の勤務経験がある人で、ちょっと環境を変えたい人にとっては、魅力的な転職先候補になるかもしれない。

三井不動産100％出資の子会社である第一園芸株式会社は、外商を担当する法人営業職を募集している。クライアントは三井不動産グループ企業や大手企業が中心。オフィスや商業施設への「グリーンレンタル」の提案や、社用贈答品の販売などを行う。

募集年齢は38歳までで、学歴は不問。中途入社が5割以上、女性管理職の登用実績もあるというから、女性のキャリアとしても魅力的だ。

英オックスフォード大学が2013年に発表した論文には「機械が奪う職業・仕事ランキング（米国）」の4位に「セールスマン」があがっている。しかし単なる売り込みではなく、クライアントと良好な関係を構築しながら取引を維持・拡大するルート営業の仕事は、機械には置き換えられにくい人間の仕事になるのではないだろうか。

（記事の内容は2016年6月15日現在）