有効求人倍率「バブル超え」と言われても「実感わかない」 高倍率は介護や接客ばかり、労働人口が減っているだけ?
厚労省は5月30日、4月の有効求人倍率を発表した。4月の有効求人倍率は1.48倍と、バブル期の1990年7月の1.46倍を超えて過去最高を記録。しかし、「なんかおかしくない?」「全然そんな感じはしないけどなあ」など、生活実態と数値の間に開きを感じている人も少なくない。
バブル期として挙げられた1990年7月の都道府県別有効求人倍率を見てみると、倍率が1倍を下回っている都道府県が6つあるが、今回倍率が1未満の都道府県は無い。であれば、景気が良くなっていると考えたいが、法人税の収入推移を見ると、そうも言えなさそうだ。
ハローワークの求人も非正規ばかりの現状
1990年7月に有効求人倍率が1未満だったのは北海道、青森、高知、福岡、鹿児島、沖縄。しかし、2016年度の法人税収入が上がったのは沖縄県のみで、他は大幅に下がっている。
北海道を例に挙げると、当時約3214億円だった法人税収入は、2016年には1928億円程度と、1000億円以上減少した。企業の人手不足は好景気のためではなく、単純に労働人口の減少が原因の可能性が高い。
また、求人件数が増えても、実際に就職した数は先月より減っている。3月の就職件数は19万6790件だったが、4月は5.9%減って16万4258件だった。
「あるのは非正規の求人ばかりで正社員はない」という声もある。有効求人倍率の元となる「一般職業紹介」の統計で雇用形態の区別をつけ始めたのが2004年のため、バブル期と現在の求人を比べ、雇用形態にどの程度の違いがあるのか探ることは出来ない。
ただ、正社員に限定してハローワークの求人を検索すると求人件数が大幅に減ることからも、非正規雇用の求人の多さは推察できる。
職種の偏りも指摘されている。新規求人が増えたのは、運輸業・郵便業(8.3%増)、製造業(7.9%増)、建設業(6.9%増)、生活関連サービス業・娯楽業(6.1%増)、サービス業(他に分類されないもの)(5.7%増)だった。
仕事の負荷が高く、離職率の高い業界の倍率の上昇が顕著
事務的職業の倍率に注目すると、全体では0.4倍と、依然として1倍には満たない。一般事務は0.31倍だ。一方でサービス業は、家庭生活支援サービスが3.44倍、介護サービスが3.13倍、接客・給仕は3.73倍と、どれも3倍を超えている。また、建築・掘削の職業に目をやると、建設躯体工事の8.35倍という数字が目に入る。これは今回発表された職業別倍率の中で最も高い。
倍率が高くなるのは、介護や接客、建築など、仕事の負荷が高く、離職率も高いと言われる業界のようだ。労働環境の辛さで辞める人が増え、それに伴って求人数が増えたと言われても、生活が向上している実感は持ちにくい。
求職者が働きたい職種と求人倍率が高い職種とのずれが、「バブル期並み」と言われても実感できない原因かもしれない。