在日外国人の4割がネットで「ヘイトスピーチ」を見たと回答 批判を恐れ、フェイスブック削除する人も
特定の民族や人種への差別を煽る「ヘイトスピーチ」が問題となって久しい。9月8日には、ツイッターでの差別的投稿を削除することを求める抗議行動が、ツイッタージャパン本社前で行われた。
在日外国人は、差別的なデモやネットの書き込みにどの程度晒されているのか。また日常生活でどのような差別に直面しているのか。2017年6月に法務省が発表した「外国人住民調査報告書―訂正版―」で実態が明らかになった。
排外的なデモや街頭宣伝を2割の人が直接目撃
調査は、札幌市や東京都港区など全国37の市区から協力を得て実施された。18歳以上の中長期の在留資格を持つ外国人や特別永住者1万8500人が対象で、4252人が回答した。国籍・出身地域別の内訳は、中国が1382人(32.5%)で最も多く、韓国の941人(22.1%)とあわせて過半数となる。
「日本に住む外国人を排除するなどの差別的なデモ、街頭宣伝活動をしているのを見たり、聞いたりしたことはありますか」という質問に対して、「直接みた」と回答した人は20.3%で、「インターネットで見た」という人は33.3%、「メディアを通じて見聞きした」ことがある人は42.9%に上った。
「それを見たり、聞いたりした時」に「不快に感じた」人は64.9%に達しており、「日本で生活することに不安や恐怖を感じた」という人も22.0%いた。「なぜそのようなことをするのか不思議に感じた」人も47.1%に上った。
全回答者のうち、インターネットを普段から利用している人は3396人(79.9%)。そのうちインターネットで「差別的な記事、書き込みを見た」ことがある人は、41.6%に上り、このような「書き込みが目に入るのが嫌で、そのようなインターネットサイトの利用を控えた」人は19.8%いた。
「ソーシャルメディアアカウント(フェイスブック)を持っていたが、削除した。批判や私生活への介入を恐れたためである」(20代、女性、パレスチナ)
という声も寄せられている。差別的な投稿やリプライを目にしないように、ネット利用を控えざるをえない人が少なからずいるという現状が浮き彫りになった。
またネット上のヘイトスピーチについては、「理解できないと思った。普段付き合いのある日本人はみな優しいから」(20代、男性、中国)、「お互い相手を理解するために努力しなければならない」(40代、男性、韓国)といった意見も寄せられた。
4人に1人が「外国人であることを理由に就職を断られた」
他にも、外国人は生活の様々な場面で差別に直面している。過去5年間に日本で住む家を探した経験のある2044人のうち、「外国人であることを理由に入居を断られた」ことがある人は39.3%だった。「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」人は41.2%で、「『外国人お断り』と書かれた物件を見たので、あきらめた」という人も26.8%いた。
40代のフィリピン国籍の女性は、永住ビザを持っているにもかかわらず不動産屋でぞんざいな扱いを受けたという。「外国人と分かっただけで態度が変わりました。さらに夫婦ともフィリピン人と伝えたところ、さらに厳しい対応をされました。大家さんからは外国人には貸さないと言われました」と回答を寄せた。
職場で差別にあうこともある。日本で過去5年の間に仕事を探したり、働いたりしたことのある2788人に、「外国人であることを理由に就職を断られた」ことがあるかどうか聞いたところ、「ある」と回答した人は25.7%に上った。「同じ仕事をしているのに、賃金が日本人より低かった」という人も19.6%、「外国人であることを理由に、昇進できないという不利益を受けた」人も17.1%いた。
フィリピン国籍の40代の男性は、「複数の会社に電話をし、人を採用しているかどうか尋ねた。電話を受けたスタッフは、『はい』と応えたが、この会社では外国人は雇用しないと言った。実際に同じことを何度も経験した」という。
日常生活の中で「差別的なこと」を言われることも少なくない。過去5年間に直接言われたことがある人は、「よくある」(2.7%)、「たまにある」(27.1%)をあわせて29.8%だった。また「職場や学校の人々が外国人に対する偏見を持っていて、人間関係がうまくいかなかった」ことが「よくある」人は3.4%で、「たまにある」という人は22.6%いた。