高校生の6割「自分ががんばっても社会を変えることはできない」 若年層の低い投票率、背景には無力感か
今回の衆院選は、2015年に改正公職選挙法が成立し、18歳選挙権が認められてから初となる。総務省によると、2016年の参院選時の20歳未満の投票率は、18歳が51%、19歳が40%と全体平均の55%を下回っていたという。
こうした投票率の低さは「若者は政治に興味がない」の一言で片づけられがちだが、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で行う「子どもの生活と学びに関する親子調査2016」を見ると、18歳未満の約8割が「18歳になったら選挙に行く」と回答しており、決して意欲がないわけではないようだ。
ベネッセ教育総合研究所は10月18日、「調査データから読み取れる選挙・投票に関する『子ども・若者の意識』」という分析結果を発表した。若者の投票意欲には、無力感や政治への苦手意識などが影響していると見ている。
学年が上がるにつれ無力感も強まる 「政治は難解」と答える高校生は7割以上
「子どもの生活と学びに関する親子調査」は、2016年夏に、小学生3823人、中学生3730人、高校生3461人とその保護者を対象に実施された。その結果、「18歳になったら選挙に行く」と回答している子どもの割合は、小学生で79.7%、中学生で84%、高校生で84.1%に上った。
これだけ多くの子どもが投票意欲を持っていても、実際の投票率が低い理由には、社会に対する無力感や、政治は難解だというイメージの蔓延があると思われる。高校生の64.8%は「自分ががんばっても社会は変わらない」と回答。小学生の52.3%、中学生の59.7%と比べると、年齢が上がるにつれて無気力感も増している。「政治のことは難しくてよく分からない」と答えた子供は、学年が進むにつれて減るものの、高校生でも76.4%に上っている。
また、調査では、これら2つの質問で「そう思う」「そう思わない」のどちらを選択したかと、「18歳になったら選挙の投票に行く」かどうかの回答に関連があるか調べた。その結果、「自分ががんばっても社会は変わらない」「政治のことは難しくてよく分からない」と答えた子供のほうが、そうでない子どもより、投票意欲が低かった。
「保護者は投票を通して社会参加をする姿を子供に見せて」
保護者の投票行動と子どもの投票意欲にも関連が見られた。次の選挙に行くかどうかの設問で「行く」と答えた保護者の子どものうち、「18歳になったら投票に行く」と回答したのが88.7%にも及んだが、「行かない」と答えた保護者の子どものうち「投票に行く」と答えたのは56.8%に留まった。身近な大人である保護者が選挙に高い関心を持っている方が、子どもの投票意欲も高くなることはある程度予想がつくが、その差は31.9ポイントとかなり大きい。
分析をした、ベネッセ教育総合研究所副所長の木村治生氏はリリース中で、
「家庭の中でニュースを見ているときに、どのような異なる立場があり、それぞれの論拠はどのようなものか、政治家は 対立をどう解決しようとしているのかを話してみてはどうでしょうか。そして、投票は自らの考えを実現する手段の一つであり、保護者自身が投票行動を通して社会に参加していることを、子どもに伝える必要があると考えます」
と、保護者の積極的な投票を訴えていた。