海上自衛隊で働くってどういうこと? 「個人の自由や移動の自由は捨てる覚悟が必要」「査定では運動能力を重要視」
「将来なりたい職業ランキング」などで上位に食い込むことも多い公務員。特に不況時などは大卒・高卒に関わらず人気の就職先となるが、売り手市場の近年も手堅い人気ぶりを誇っている。
ひと口に公務員といっても職種も待遇も様々だが、学生などを対象とした様々な”なりたい職業ランキング”調査の常連となっており、キャリコネに寄せられた口コミからその労働の実態を紹介したい。
当記事で取り上げるのは、情報の収集・処理によって海洋国家である日本の周辺海域防衛や海上交通の安全を確保する任務にあたる海上自衛隊員たちの口コミだ。【参照元 キャリコネ 海上自衛隊】
イージス艦などの艦艇や航空機を所有し、日本周辺海域などで弾道ミサイル攻撃や航行する船舶に対する警戒監視活動を行っている海上自衛隊だが、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処については、防衛省・自衛隊は政府の方針に基づき2009年3月から活動を継続。海賊行為の未然防止への貢献で国際社会から高く評価されているという。
「専門性が高く、キツくリスクの高い職務ほど手当が高く付く」
日本のみならず、アジア太平洋地域及びグローバルな海洋という舞台に平和と安定に寄与する海上自衛隊だが、陸上自衛隊や航空自衛隊と比べても、給与面での手当や福利厚生の手厚さが特徴のようだ。実際に口コミ投稿者の年収も陸自などに比べ全体的に高い人が多く見受けられる。
「海上自衛隊は護衛艦勤務になると、危険手当や航海手当などの手当てがつき、階級にあった給料プラスそれらの手当てが加算されるので、陸海空の自衛隊の中でも一番平均支給額が高いと思われます。きついときもありますが、基本的にその分の報酬はついてくるので、かなり良いと思います」(10代後半 男性 270万円)
「基本給は薄給だが、手当が付くことで高額な給与となる。専門性が高く、キツくリスクの高い職務ほど手当が高く付く。査定面では運動能力が重要視されており、評価に大きく影響するため継続的なトレーニングが必要。同時に定期的な学術試験にパスしていく必要がある為、継続的な学習が必要とされる」(20代前半 男性 350万円)
「船に乗ると1.33倍の手当てがつく。ヘリコプターや哨戒機のパイロット、潜水艦、船にのるとかなり給与は良い。ただし、お金はもらえるが使えない(海の上であるため)。上陸すると、だいたいパチンコ、風俗、飲みで無駄に金を使う人が多い。陸上勤務になるとかなり給与が下がる」(20代前半 男性 330万円)
また、福利厚生についても申し分ないようで、「官舎は2万~3万円の家賃で2LDK、3LDKの部屋が借りられます。ただし、官舎の草刈とか、掃除とか、雪かきとか、イベントには家族が強制参加させられます。その他、部隊によってはレクリエーションセンターなどが完備されていて、ジムやプール、大型の風呂、サウナなどが無料で利用できます」(20代後半 男性 600万円)など、非常に高い評価ばかり。
「民間ではカフェテリア制度などで提携ジムを安価に利用できる制度などが最近目立ちますが、基地内や学校内には50メートルプール、多目的グランド、ジム、風呂などが完備され、全部無料で利用できる等健康維持には困りません。民間で取り入れられている福利厚生はほとんどあると思います」(18歳 男性 276万円)
「育休時には休みが取れるし、給料もでる。育休は最大2年か3年くらい取れたはず。コンプライアンスがかなり徹底して教育されているので、男性が多いが休みは取りやすい」(20代前半 女性 400万円)
加えて、「教育に掛ける時間とコストは、民間企業とは比較にならない。段階的かつ継続的な学習が可能。教育制度は完璧に整備されている。この教育を経験すると、民間企業がいかに教育に掛ける時間とコストを軽視しているかが分かる」(20代前半 男性 350万円)といった声も印象的だ。海自に限らないかもしれないが、そうした教育体制の充実ぶりも隊員のやりがいに繋がっていることが伺える。
「この業界は売り上げやノルマは基本的にありません。なので、純粋に自分の技量UPを図れますし、給与面でも優遇(安定)されますので、お金の心配をすることなく任務や、訓練に打ち込むことができます。ただ、この仕事が社会の表舞台に出てくる時は国難の時が多く、訓練成果を発揮し、やりがいのある任務の時は誰かが苦しんでいるときであるといった、矛盾も生じます。しかし、自衛隊にしか出来ない活動が出来るのは『やりがい』にあたると思います」(30代前半 男性 450万円)
「実家に帰省するにも行程表を提出し、上官の許可を得る必要がある」
もっとも、一見恵まれたとも言えそうな待遇は全て任務のため。艦艇所属の隊員からは出勤は不定期で期間も長く、停泊中も整備や当直業務などに明け暮れ、閉鎖的な空間での長期行動は大きなストレスといった内容の声も聞こえる。手当分は働かされることは覚悟しておくべきだろう。
特に遠洋での艦船勤務なども考えられる海自は、一般的に自衛隊と聞いてイメージする集団生活や協調性が強く求められる傾向が、より色濃く現れるようだ。
「身体の半分以上は国家のものになると思った方がよい。プライベートとは無縁の世界。入隊前の個人の自由や移動の自由は捨てる覚悟が必要。民間で取る有給休暇や遅刻早退の概念はなく、身勝手な都合で休むことは許されない」(20代前半 男性 350万円)
「仕事柄、残業という概念はなく24間勤務が求められる。そこをやりがいととらえるかで感じかたが変わってくると思う。職場においては、仲は良く、和気あいあいと勤務できていると考える。有給休暇等の取得は職場によるとしか言えない」(20代前半 男性 320万円)
「プライベートにおいても自由が制限されることは事前に確認するべき。実家に帰省するにも行程表を提出し、上官の許可を得る必要がある。一般社会では当たり前の個人の自由、移動の自由が制限される。生活の全てが組織に帰属すると言っても過言ではない」(20代前半 男性 350万円)
陸海空の自衛隊の中では海自は口コミの数が妙に少なかったが、こうした事情も影響しているのかもしれない。有給の取りやすさや職場の雰囲気は職種などによって違うようだが、民間企業以上に人によって合う/合わないが、くっきりと分かれてしまうのは間違いないようだ。【参照元 キャリコネ 海上自衛隊】