「株式会社週休3日」って何する会社? 代表は「正社員の働き方を再定義したい」と語る
静岡県浜松市にある企業「株式会社週休3日」が話題だ。「日本に週休3日正社員制度を普及させるとともに、働き方の選択肢を広げていきたい」という思いの元、薬剤師を中心に、医師などの医療系職種や保育士らに、週休3日で働ける求人の紹介をしている。
代表取締役の永井宏明さんによると、同社は、永井さんが介護付き有料老人ホームで施設長を務めていたときの経験をきっかけに設立された。人材不足解消の苦肉の策として、施設で「週休3日正社員制」を導入したところ、それまで20%台だった離職率が5年で7%にまで減少。週休3日正社員に限れば2%と、かなりの効果があったのだという。
年配の経営者は「捧げてくれる時間が少なくなる」と導入に消極的
週休2日で働いていた人が週休3日になると、給与は下がってしまうのが一般的だ。それでも、働く人の満足度はかえって高くなっているという。
「薬剤師の方からは、週休2日のときは長時間労働で疲弊していたけれど、休みが増えて働きやすくなった、趣味が充実した、と聞きます」
週休3日で働く男性薬剤師も多い。
「男性は社会的な立場から『正社員でいなければ』という方が多いのですが、週休3日で正社員という新しい選択肢は、そういった方に魅力的に映るのと思います」
週休3日正社員を普及させるには課題もある。1つは、経営者側の理解がなかなか得られないことだ。県内の調剤薬局の経営者や人事担当者は、週休3日正社員という働き方をポジティブに捉える人が多いというが、
「50代、60代の経営者の方は『意欲や時間を自分の会社に捧げてほしい』というニーズがあります。そのため、『週休3日だと捧げてくれる時間が減る』と、受け入れてもらえないのです」
とこぼす。
また、永井さんによると「日本的な会社の人事部門や人事制度が本当の壁」だいう。
「今まで通りに働く社員の中には、週休3日正社員を見て不公平感を持つ人もいると思います。『そこまで労働者に寄り添わなきゃいけないの?』と疑問を持つ経営者もいるでしょう。週休3日正社員の導入を考える時、旗振り役になる人事部を擁護する人が少ないというのは、制度普及の大きな壁です」
「多様な働き方が可能」は、地方移住のアピールポイントになる
株式会社週休3日では、働き方の多様化を進めることで地域振興もしたいと考えている。地方の移住政策では、「自然の豊かさ」、「移住に際して補助金が出る」、「住民が良い人」など、アピールポイントはどこも似たものになりがちだ。こうした中で、「週休3日正社員の求人がたくさんある地域なら、『働きやすい』地域として差別化できる」というのが永井さんの考えだ。
「一日増えた休みをどう使うかは生き方にも関わってくるので、『生き方』という方向での提案も可能になります」
現在、同社は代表の永井さんを含め2人で運営している。今後、社員を増やしていきたい思いはあるそうで、
「その時には週休3日正社員で採用したいですね。私は、『正社員の働き方の再定義をしたい』と思っています。精神的な安定性も含め、正社員という雇用形態は日本に合っています。週40時間労働では疲弊する人、家庭の事情で週5日働くのは厳しい人の中から能力の高い人を採用すれば、弊社にメリットもありますし、社会にもインパクトがあると思います」
と話していた。