竹中平蔵氏「生産性の低い人に残業代出すのおかしい」 高プロのニーズは一体どこにあるのか
東洋大学教授でパソナ会長の竹中平蔵氏が6月21日の東京新聞朝刊で、高度プロフェッショナル制度の導入を訴えた。「残業代を出すのはおかしい」などと主張し、批判の声が相次いでいる。
竹中氏は同紙の取材に対し、働いた時間で成果を測れない仕事をしている人々が増えており、そうした人々に「時間に縛られない働き方」を認めるべきだと発言。さらに「時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代を出すのも一般論としておかしい」とした。
「残業代をなくしたいなら残業を禁止すればいい」と批判相次ぐ
仕事が遅くて残業をしている人や残業代が出ることを見越して、あまり急がずに仕事をしている人も中にはいるのだろう。そうした人の方が多くの残業代を稼げるというのは確かにおかしい。しかし業務の量が多く、きちんと働いても仕事が終わらないという人はどうなるのだろうか。
またネットでは「残業代を無くしたいなら残業禁止したらいい」という意見もあった。ノー残業デーを実施したり、退館時間を設定したりして強制的に残業させないようにすることは可能だ。
竹中氏は冒頭の発言に続けて、
「時間ではなく成果で評価する高プロで、労働生産性を挙げるインセンティブは間違いなく働く」
と主張している。しかし高プロは「成果で評価する」制度を創設するものではない。嶋崎量弁護士はヤフー個人に投稿した記事「本当は存在しない『高度プロフェッショナル制度』~欺瞞性を曝く」の中で、こう指摘している。
「法案にある該当条文の『見出し』を確認してみると、実は『高度プロフェッショナル制度』などという記載はありません。実際の『見出し』は、『(労働時間等に関する規定の適用除外)』なのです。(中略)条文に書いてある法的効果の箇所をみると、『この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない』とあるだけです」
要するに、「成果で評価する」新しい仕組みを作るわけではなく、ただ単に対象になった働き手を労働時間や休日、深夜の割増賃金に対する規定から外してしまうだけだということだ。
「利害関係者が政策に口だすのはおかしい」という指摘も
竹中氏に対しては「利益相反」という批判が以前から根強い。氏は人材派遣大手のパソナグループ会長を務める。かつて推進した労働者派遣法の解禁によって、実際に利益を得ているというのだ。
また、昨年7月には、神奈川県の国家戦略特区で「家事支援外国人受入事業」が規制緩和された。竹中氏が国家戦略特別区域諮問会議のメンバーとして推進していたものだ。
本来、家事代行が目的の外国人は在留資格が認められないが、条件を満たす事業者が雇用する場合は受け入れるというものだ。パソナはその事業者に認定されている。つまり竹中氏は規制緩和を要求し、実際に事業を請け負うことで利益を得ているのではないかということだ。そのため「利害関係者が政策にあれこれ口だすほうがよっぽどおかしい」という批判もある。