介護人材の不足感4年連続で上昇 外国人人材の活用は8割が「予定なし」日本語での意思疎通や記録作成に不安
公益財団法人介護労働安定センターは8月上旬、2017年度の「介護労働実態調査」の結果を発表した。調査は昨年10月、介護保険サービスを提供する全国の事業所を無作為に抽出して実施。8782事業所から回答を得た。
従業員の過不足状況を聞くと、「大いに不足」(9.6%)、「不足」(24.4%)、「やや不足」(32.6%)と、不足感を感じている事業所は66.6%に上った。不足感は2013年以降、4年連続で徐々に増加している。
従業員が不足している理由は「採用が困難である」(88.5%)が抜きん出て多く、2位の「離職率が高い」(18.4%)、3位の「事業拡大で必要人員が増大した」(10.8%)を引き離した。採用が困難と回答した事業所に原因を聞くと、「同業他社との人材獲得競争が厳しい」(56.9%)、「他産業に比べて、労働条件が良くない」(55.9%)の2つが多く挙げられた。「景気が良いため、介護業界へ人材が集まらない」(44.5%)という回答も多かった。
就職後3年経たずに離職する人が65.2%
1年間の離職率を雇用形態別に見ると、訪問介護員では、正規職員が17%、非正規職員が13.8%だった。介護職員は正規職員が14.3%、非正規職員が20.6%。2職種合計の離職率は16.2%だった。訪問介護員は正規職員、介護職員では非正規職員で離職率が高くなっている。
離職した人の勤続年数は、「1年未満」(38.8%)が最も多く、次いで「3年以上」(34.9%)、「1年以上3年未満」(26.4%)だった。就職して3年未満で離職する人が65.2%にもなる計算だ。
過去3年間で、介護を理由退職した従業員がいたかどうか聞いたところ、「いなかった」(63.7%)が最多。介護離職防止のための取組みで最も多かったのは「介護休業や介護休暇を就業規則に定めている」(66.1%)で、以降、「介護の課題に直面した従業員からの相談窓口を設けている」(35.5%)、「介護休業や介護休暇の内容や利用手続きに関して、従業員全員に周知している」(33.2%)と続く。
賃金・賞与について聞くと、月給は平均22万7275円、賞与は平均57万2079円だった。
外国人人材を活用予定の事業所の半数「技能実習生での受け入れ考えている」
事業所に外国人労働者がいるかどうか聞くと、91.4%が「いない」と回答。「いる」(5.4%)と答えた事業所に労働者の国籍を聞くと「フィリピン」(40.1%)、「中国」(15.3%)、「ベトナム」(12.2%)と、フィリピン人が多数を占めた。
政府は深刻化する介護人手不足に、外国人の雇用で対応しようとしている。昨年11月には、技能実習生の対象業種に介護を追加した。しかし、外国人労働者を活用する予定があるかどうか聞くと、80.1%が「ない」と答えた。
外国人労働者を活用する上での課題として「利用者や日本人職員との会話等における意思疎通に支障がある」「日本語の能力不足により介護記録作成に支障がある」といった声が寄せられた。「活用する予定はある」と答えた15.9%の事業所のうち、「技能実習生としての受け入れを考えている」と答えたのは51.9%で半数を超えた。