楽天・三木谷会長兼社長の5000億円超え巨額資産はこうして稼ぎ出された
国内EC最大手の楽天株式会社。世界29か国・地域でグローバルに事業展開する同社を率いるのは、創業者で代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏(53歳)だ。今回は、三木谷氏の巨額の資産の理由について情報を整理してみよう。
三木谷氏は1965年生まれ。1995年に大手銀行を退職後起業し、2000年に株式を店頭公開。積極的なM&Aによって時価総額1.2兆円の大企業にまで押し上げた。最近では子会社のJリーグ・ヴィッセル神戸がイニエスタ選手を32億円もの高額年俸で獲得し、話題を集めた。
自宅は推定30億円超、70億円のプライベートジェットも
米経済誌「フォーブス」の2018年版長者番付ランキングによると、三木谷氏は国内7位となる5660億円もの資産を保有している。東京都渋谷区の超高級住宅街・松濤地区に270坪の自宅があり、土地と建物で推定30億円超とも言われている。アメリカにも生活の拠点を構えており、資産管理会社が保有するプライベートジェット「ガルフストリームG650」は、新機で70億円するとも。
三木谷氏の資産をここまで拡大させたのは、楽天のビジネスだ。2000年の上場以来連続増収を続け、売上高は2017年12月期までの5期間で約1.8倍に増加した。2018年に入って朝日火災を約450億円で買収するなど、創業以来積極的なM&Aを行ってきた結果だ。
営業利益は、広告宣伝費の増加や子会社株の評価損もあり減益傾向だったが、2017年度は米国子会社と金融部門の牽引もあり最高益に転じた。5期平均の売上高営業利益率は14.8%と高い水準となっている。
ネットとリアルの融合の先駆者
楽天の強みは、「楽天ID」による顧客の囲い込みだ。2018年6月末時点で、楽天の会員数は9870万人。4万6000を超える楽天市場の店舗や、グループ会社が運営する70以上のサービスを「楽天ID」で利用することができる。
楽天の公開資料によると、1ユーザーが2サービス以上を利用している指標のクロスユース率は68.4%にのぼる。
独自の楽天スーパーポイントや、今年1500万会員を突破した楽天カードなど、実店舗でも使えるサービスも多く、ネットとリアルの融合に早くから取り組んだ結果が、楽天の収益性の高さにつながっているといえる。今回買収した損保事業とのシナジーも想定されていると見られる。
2017年12月期からはセグメントの集約を図り、楽天市場や楽天トラベル等のEC中心のインターネットサービス事業が67.1%、楽天カードや楽天銀行等のFintech事業が32.9%。セグメント利益ではインターネットサービス事業が58.1%、FinTech事業が41.9%となっている。
売上高利益率はFinTech事業の方が高いこともあり、今後はFinTechの強化を目指しており、2018年8月に仮想通貨交換業の「みんなのビットコイン」を買収している。
なお、Jリーグのヴィッセル神戸はインターネットサービス事業に含まれている。このほか、FCバルセロナのメインパートナーおよびグローバルイノベーション&エンターテインメントパートナーとして、4年間で250億円以上を拠出するという。
グローバルでの知名度を高めたい楽天にとって、スポーツを通じてブランド名を世界的に浸透させていきたいというところだろう。
役員報酬は1億円未満、持ち株配当は年18億円
2017年12月期の有価証券報告書を見ると、楽天では三木谷氏を含めて3名の常勤取締役、4名の社外取締役で構成されており、3名の常勤取締役に合計で3億2,000万円の報酬が支払われている。
そのうち2億400万円は副社長の穂坂雅之氏の報酬であることが記されており、残り1億1,600万円を三木谷氏と米国子会社の代表を務めるバクスター氏が分け合うことになる。バクスター氏の報酬が1,600万円程度とは考えられず、三木谷氏の報酬は1億円未満と見られる。
一方、三木谷氏は同社株の12.28%を保有しており、自身の資産管理会社である合同会社クリムゾングループの15.78%を合わせると、28.06%の楽天株を保有している。2018年9月21日現在の楽天の時価総額は1兆2319億円のため、三木谷氏の持株時価は3457億円となる。
楽天の2000年の上場時の時価総額は2456億円であり、単純計算で企業価値が5倍に増加したことになる。同社の配当利回りは2018年9月期時点で0.52%、年間4.5円の配当。三木谷氏は同社株を約4億264万株保有しているので、年18億円の配当を受け取っている計算だ。
なお、上場会社オーナーの場合、配当には最高税率の55%を適用されるため、三木谷氏名義分の約8億円分に対して年4億円もの税金を支払っている。
一般的なサラリーマンの感覚からは、かなり大きいと感じられる。しかし、年間131億円の配当を受け取るユニクロの柳井会長兼社長や、119億円のソフトバンクグループの孫会長兼社長に比べると少ない金額だ。
従業員の平均給与は単体で708万円、5期連続で増加中!
楽天の2017年12月期の連結従業員数は1万4845人で、単体では5831人。平均年間給与は、単体で708万円だった。従業員数は5期連続で増加しており、従業員の出身国・地域は70を超える。
連結従業員1人あたりの売上高は、この5期で右肩上がり。同営業利益は横ばいから下降気味だったが、2017年度には前期比増となっている。楽天単体の従業員の平均年間給与は5期連続で増加しているが、グループ全体に恩恵を広げるためには利益率の向上が必要になるだろう。
携帯電話事業への参入を宣言したものの、既存キャリアの電話料金を「4割値下げ」させる流れもあり、勝算が崩れたのではないか、との見方もある。今後の成長をどの分野でもたらすのか。楽天の今後の戦略が注目される。
(この記事はTENSHOCKに掲載された記事を再構成したものです)