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「不景気なら採用減」は当たり前? 氷河期支援に思う経営者と人事の責任

変わるべきは「受け入れ側」だ

変わるべきは「受け入れ側」だ

人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は、氷河期世代に対する経営者や人事の責任について。「景気が悪ければ採用を絞る」という非戦略的な採用計画は、見直されるべきではないでしょうか。

いまさら「変われ」はひどすぎないか

今年4月の経済財政諮問会議で、無業者や非正規雇用者の多い「就職氷河期世代」を「人生再設計第一世代」と位置づけ、キャリア支援を行なっていく方向性が示されました。

この世代は(実は私もそうですが)バブル崩壊後に卒業した人たちを指し、今の30代半ばから40代半ばの約1700万人にあたります。

サポートは良いことですし、人手不足解消策のひとつでもあるのでしょう。それにしても遅きに失しています。人間には「臨界期」という特定の能力を学習するのに適切な時期があり、それを逃すといくら努力しても限界があるからです。

支援具体案はまだ曖昧ですが、私には「人生『再設計』」という言葉が「今までの人生設計を変えろ」と読めて気になっています。

再設計をするということは、今までの知識やスキル、大事にしてきた価値観や志向、重視してきた労働条件(お金や働く場所など)を変えろ、新しく作り直せ、そしてこれからの世の中に適応しろ、ということになります。

レポートを読んでも「人手不足産業への就職促進」「ICT等の能力開発」「新規能力開発プログラムの充実」「地方で求められる職業能力に沿った能力開発」と、やはり新しい能力を身につけよ、というスタンスがありありです。

変わるべきは「受け入れ側」だ

しかし、ここまで守ってきたものを捨てさせるのは、アラフォー、アラフィフ世代にとって、あまりに酷というものではないでしょうか。

そうでなく、どうせお金や人を使うなら「受け入れ側」を変えるべきです。都心に人がいるのだから、地方に人を送り込むのではなく、都心に事務所を置くなり、リモートで仕事をしてもらうなりして雇用すればいい。

新たにICTの能力をつけさせるのではなく、簡単なインターフェイスを開発すればいい。今までの人に頼った業務プロセスを、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)化したりして省力化すればいい。

政府がお金を使うとしたら、そこではないでしょうか。

もちろん、「もう変われない」と決めつけているわけではありません。しかし、冷や水を浴びせる絶望的な話しかできず恐縮ですが、「変わりにくい氷河期世代」という前提を認めた改革でなければ、実効性は薄いように思います。

「不景気期こそ採用数を増やす」戦略を

それにしても思うのは、こんな難題を後世に残さないのが重要ということです。氷河期世代の原因は、「景気が悪ければ採用を絞る」「景気が良ければ採用を増やす」という、企業の非戦略的な要員計画です。

労働人口は一定ですから、逆張りする方が優秀な人材を採れていたのに、体力ある企業まで短期的利益に目が行ってしまい、横並びで採用を抑制してしまいます。

まさに今も、オリンピック後の不景気を推測し、企業はまたも採用を絞ろうとしています。こういう時こそ優秀人材を獲得できるチャンスなのに、同じ轍を踏もうとしています。

そんな中で「不景気期こそ採用数を増やす」という戦略的な企業が増えれば、こんな問題はもう起こらないのではと思うのです。

私も経営者のはしくれで、不景気でも採用数を維持する大変さはわかるつもりです。しかし、この苦労はどんな投資よりも効くのではないでしょうか。

経費やボーナスを多少削っても、新しい人材への投資は減らさない。こういう決断を、勇気を持って行い、既存の社員に対してもその意義をきちんと伝えること。

これこそが、社会に対する経営者や人事の責任です。そして、単なる社会的責任というだけでなく、きっとその企業にも「将来を支える人材」を送り込むことができることでしょう。

【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/

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