身近な業務を身近なツールで“テック化”を ― 若手中心の業務改革 ― | キャリコネニュース
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身近な業務を身近なツールで“テック化”を ― 若手中心の業務改革 ―

▲経営企画室の谷口世理奈。社内業務改革プロジェクトを立ち上げた

▲経営企画室の谷口世理奈。社内業務改革プロジェクトを立ち上げた

当社の事業のコアとなっている「DevOps」と「コンサルティング」。これを社内の間接業務に適用するというミッションに立ち向かいました。エンジニアでもコンサルタントでもない私たちが実践したことと今後の展望について、経営企画室の谷口世理奈がお話しします。【talentbookで読む】

突如振られた難題。PR・人材採用に関する業務のDevOps化

当社の中期経営計画が施行された2019年4月、私の所属している経営企画室は代表の西田陽介から「社内業務改革プロジェクトを立ち上げるべし」という命を受けました。

それは「DevOpsを社内業務に取り入れることで、顧客に提供するコンサルティングの有効性を確認せよ」という内容。対象は「PR・人材採用に関する業務のDevOps化」でした。

私は、PR・人材採用業務に関して普段から気になっていたことがいくつかありました。ルーチンワークが多い、効率や作業の質にばらつきがある、効果測定の仕方があやふやであることなどです。

それらの課題を当社のDevOpsの考え方である「自動化」「再現性」に照らし合わせたときに、どのように解決したら良いかその時点で具体案は持っていませんでした。

そこで、普段PR・人材採用に関する業務の作業を一緒に行っているPR/HRチーム全体を巻き込んでプロジェクト化することにしたのです。

まずは業務の進め方を振り返り、どのような点が問題であるのか把握する必要がありました。チームで検討を行った結果、PR・人材採用に関する業務の表面的な問題として真っ先に気がついたことは「情報にバラツキがある」ということ。PRや採用活動は何かしらのメディアに情報を掲載する必要がありますが、各メディアに掲出されている情報の一元管理ができていなかったのです。

具体的には、メディアによって事業内容の打ち出し方に矛盾が生じていたり、会社概要が古くなっていたり、使用している画像類の選定基準がぶれていたりという状況になっているということがわかりました。

なぜそのような事象が起きていたのか。

それは、その時々の需要にあわせて掲載内容をつくっていたために都度ゼロベースになってしまっていること、一度作成したものは各メディアの管理画面に埋没してしまいほかのメディアへの転用が困難であること等に起因していました。

加えて、各メディアに掲載されている情報が全体を通してどういう状況なのか、概況の把握が困難であることがさらにわかりにくくさせていました。私たちは、これらの課題を解決するためには従来の業務のやり方を抜本的に見直す必要があると考えたのです。

自分たちに馴染みのあるツールを活用してDevOps化を図る

▲バリューチェーンを分析した時の手描きの資料

▲バリューチェーンを分析した時の手描きの資料

そこで、DevOpsの基本的な考えである以下の内容を適応させることで、業務の効率化を図ることにしました。

・属人性(スノーフレーク)を排除すること
・再現可能(イミュータブル)なものにすること
・継続的に情報集約(CI)すること
・それらを継続的に掲出(CD)すること

課題解決の方針は決まったものの、次はスキルの壁に阻まれました。

DevOpsを実現するにはテクノロジーの知識やツールに関して深い知見を持っている必要があります。しかし、メンバーは若手社員ばかり。経験豊富なプログラマもエクセルマスターもいません。

さらに、それぞれほかの業務を抱えながらプロジェクトに参加しているメンバーばかりでしたので、割ける時間も多くありません。また、残業前提で作業を進めるのは、働き方改革を推し進める当社の方針から外れてしまいます。このような課題や制約がある中で成果を出さなければならないという状況でした。

──まずは、“動いてみること”が大切なんじゃないかな?

そこで私たちは、「全体像として最低限のバリューチェーンだけを決め、あとはそれぞれが分担する」というスタイルを取りました。そうした中でも、整合性を担保するために バージョン管理を徹底。その上で持ち寄った成果物をマージする事で進めていきました。

その次に取り組んだのは、アセットの整理です。

私たちが目指すべきは、「素材を整備し、メディア個有の情報を付加して出稿すること」でしたが、現状では素材の整備がおろそかになっていました。

本来は、共通情報7割:固有情報3割で対応するのが適切であるにも関わらず、当時はメディア固有に合わせた対応が10割近くを占めていました。そのため、7割の共通情報を整備しておくと、業務効率は3倍に上がるという仮説を立て、徹底的に素材の整備を行う方針にしました。そうなると、出稿用に整備した素材をインテグレーションするために、共有・連携しやすいツールに置き換える必要が出てきます。

再び、私はふたりに相談するとこのように言ってくれました。

──つい、クオリティを求めがちだけど、自分たちで“構築できるか”が一番大切。

その言葉にヒントをもらい、身近なデータベースとしてGoogleスプレッドシートを活用し、“自分たちで活用できるか・構築できるかを軸にGoogleデータポータルの活用を決定しました。

そのほかにもコミュニケーションの共有力を上げていくためにBacklogやslackを導入してメールに埋没しがちなやりとりをなくしたほか、従来サーバー上で管理していたファイルの管理についても、Gitを導入することで変更履歴を把握し、最新版のファイルの区別ができるようになりました。さらに作業手順の属人化を防ぐため、簡単に綺麗な手順書を残すツールとして、マークダウンを活用しました。

そういったツールたちをバリューチェーンに当てはめてフローさせてみたところ、きちんと機能することが確認できたのです。

ボトルネック排除の重要性と方法、その結果得られたもの

▲アドバイスをくれた佐々木(写真左)と三丸(写真中央)

▲アドバイスをくれた佐々木(写真左)と三丸(写真中央)

業務設計とツールの選定を終えた後に取り組んだのが、「採用メディアに載せる記事のアウトプットのペースを上げること」。

当初は、1カ月に1本のペースでしたが、1週間に1本のペースにしていくことに決めました。その際に、以下の点がボトルネックになっていました。

1.専門的な人がいないと進まない(属人性の排除・再現性の担保)
2.状況の変化に伴う修正(継続的な情報収集)
3.後から修正できないため、慎重になってしまうこと(継続的な掲出)

そこで私たちは、次のような策を講じました。

まずは、「専門的な人がいないと進まない」状況について。

メディアに何かを掲出するに際して必ずと言っていいほど登場するのは写真の撮影と選定です。従来、私たちはプロのカメラマンか、撮影に造詣の深い社員に撮影を依頼していました。

そのため、カメラマンの手配から納品までの時間が掛かってしまうという点がネックでした。そこで、経験がなくても撮影ができるように手順を整備し、マニュアルを作成。マークダウンに書いてある手順通りに撮影し、photoshopなどの専門的なソフトがなくてもスマートデバイスで簡単にレタッチするソフトに置き換えてどんな社員でも撮影ができるようになりました。

次に、「状況変化に伴う修正」について。

たとえば求人票の場合。当社では、プロジェクト概況や求める人物像が1週間単位で変わることがしばしばあります。その変更が求人票に反映されるのは1週間から2週間後というのが従来の姿でした。メディアの出稿用の管理画面を直接修正せずに、一旦スプレッドシートを修正するという業務に変更。必ずスプレッドシートを経由することで常に最新の状態が保たれているようになりました。

最後に「後から修正ができないため、慎重になってしまうこと」について。

メディアによっては入稿後になかなか修正できないということがあります。やり直しができない場合は、慎重にならざるを得ません。しかし、不完全な状態でも修正が可能であれば、慎重になりすぎず、スピード感を持ってリリースできます。リリースできるというのは何も生み<出していない状態と比べて何かしらユーザが得られるものがあります。そこで、私たちはリリースを優先しました。

また、修正ができないメディアの多くは得てしてメディア側の検閲や手続きなどで待ち時間が長いものです。できればメディア側ともスピード感を共有したい。なので、修正ができない、待ち時間の長いメディアとは今後契約しないことにしました。

その結果、何らか記事の基本骨子を固めるまでは3時間程度、リリースまで1~2週間と、以前の半分以下のスピードでアウトプットができるようになりました。加えて、情報の鮮度があがったためプロジェクトからの要望が反映されやすくなりました。このサイクルを回していくうちに、今まで作業に追われて後手になっていた、翌月や翌々月の企画にまで目を向けられるようになりました。

そうすると次は、実際に効果が出ているのかを知るためにKPIをリアルタイムで把握したくなりました。そこで、各メディアの反響や採用面談の進捗をGoogleスプレッドシートとGoogleアナリティクスに集約し、それをGoogleデータポータルで可視化するということを試行。その結果、現在の活動状況が一目で分かるようになり経営層への報告が簡単になった上、過去から現在までの推移が分かるようになり、状況を視覚的に判断できるようになりました。

ツールの有用性を確認した私たちが次に目指していること

▲これからも仲間と共に改善を進めていく

▲これからも仲間と共に改善を進めていく

こうしたさまざまな改革によって、周囲からは次のような声が寄せられました。

──Google スプレッドシートは自由度が高いのがいい。フォーマットに縛られないから、テーブル設計をしないでGoogleデータポータル向けのデータベースがつくれる。

──GoogleアナリティクスとGooleスプレッドシートを連携させるだけで簡単にBIがつくれるのはとても便利。グラフや報告用の一覧をつくるのも簡単になった。

私自身の実感としては、デジタルツールの活用によるアウトプットのスピードアップに驚いています。一度リリースしたものでも、改善・再アウトプットが簡単に行えるため、DevOpsにピッタリだと感じています。また、最大の特徴は、普段プロジェクトワークで使っているオフィスツールの組み合わせだけでできてしまうこと。そのため、少しの工夫ですぐに取り入れることができるのです。

さらに、ビズリーチでの採用活動においても成果が出始めています。アウトプットのスピードが上がり、さまざまな記事を発信したことで、応募者のマッチ度が上がってきました。応募者も、倍以上に増え、採用担当者は面談に大忙しです(笑)。

とはいえ、まだまだ自動化できる部分は残っています。

今回は、PRとHRという領域の改革でしたが、実はバリューチェーン上、「営業」とも密接な関係があります。なぜかというと、インバウンドで商談を発生させるには活発なPRが必要だからです。また、フィールドで営業マンが説明する資料や説明の仕方などの品質は、素材整備ができれば皆が同じクオリティでクライアントに届けられるからです。

実は営業サイドの業務改革の命も、西田からすでに降りてきています。

こちらの成果についてまたお話できるよう、私自身も歩みを止めず、改革を進めていきたいと思います。

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